小西良太郎のカラオケ談義

2014年3月30日更新


内藤綾子の着想と粘着力に拍手する!

殻を打ち破れ143回  演歌の"決め手"は歌いだしの歌詞の2行分、そこですべてが決まる! この原則は大ベテランの藤田まさと、師匠の星野哲郎、親交のあった吉岡治らの仕事から、骨身にしみるほど学んだ。「歌詞」を「歌の文句」と呼んだ昔々から、大勢の詩人たちもそこに知恵をしぼった。いい文句には必・・・

平成の競作だ『孫が来る!』だ

殻を打ち破れ142回  「いいか、平成初の大競作だぞ!」  「ココロは"おじさんたちの反撃"だ!」  「いい作品、みんなで歌えば怖くないってか!」  去年の夏ごろから、ずっとそんなことを口走って来た。池田充男作詞、岡千秋作曲の『孫が来る!』という歌を、まず岡千秋が歌い、中村光春、船橋浩二・・・

君は"職業歌手"奥山えいじの 歌を聞いたか?

殻を打ち破れ141回  渋谷界わいでの仕事帰り、時おりガード下の居酒屋へ寄る。芋煮とせいさい漬けがそこにあるせいだ。本場は山形。晩秋に天童へ通って10年、すっかりそのトリコになっている。  食い物と土地の酒にひかれてばかりでは、関係者に失礼に当たろう。年に一度、佐藤千夜子杯歌謡祭という催・・・

いい歌、遠方より来たる!

殻を打ち破れ140回  「10月はじめに送ったのが戻って来た。住所を調べ直してまた送る。ごぶさたしていて申し訳ない」  旧知の人から、そんな手紙つきのCDが届く。扇ひろ子の歌手生活50周年記念盤『酔いどれほたる』である。 ふっと胸に、温かい風が吹いた。扇とはデビュー当時からの知り合い。郵・・・

さくらちさとがいい仕事をした

殻を打ち破れ139回  「あら...」  と小声で驚きを表わし、会釈して隣りの席に腰をおろした。ピンク系のスーツのさくらちさと。亡くなった星野哲郎の弟子の作詞家だ。  「よお!」  一足先についた席から、気安いあいさつの僕。星野には新聞記者時代から長く私淑したから、彼女には兄貴分だ。10・・・

炎夏、真唯林の見果てぬ夢を見送った

殻を打ち破れ138回  棺を閉じる直前、突然、聞き慣れぬ言葉が悲鳴のようにあがった。それに重なる激しい泣き声。質素な喪服の女性が3、4人、故人の身内のようで、とめどない別れの訴えかけは、北京語と知れた。8月10日午後、横浜のメモワールホール瀬谷で営まれた、歌手真唯林(まゆりん)の葬儀だ。・・・

君はMIZMOの「3D ENKA」を聞いたか?

殻を打ち破れ137回  ≪星野哲郎もびっくりするだろう。市川昭介は"やるもんですねぇ"と笑うかも知れない≫  異様に暑い夏の一日、亡くなってずいぶんの月日が経つ巨匠2人の顔を突然思い浮かべた。MIZMOと名乗る娘たちのアルバムで『アンコ椿は恋の花』を聞いてのこと。若々しいコーラス仕立てで・・・

夏の再会、阿久悠もう7回忌

殻を打ち破れ136回 ≪やっぱりこの人には、六本木界わいが似合いなのかも知れない≫  7月6日の昼、西麻布、長谷寺の阿久悠の墓前で、ふっとそんなことを思った。長い作詞家生活のほとんどを、彼は六本木の事務所や仕事部屋で過ごした。そのせいだろう、彼と僕の食事や酒、それではずみをつけての打ち合・・・

吉岡・岡林作品が照射するもの

殻を打ち破れ135回  ≪友あり、遠方より来たる!≫ の感があって、ワクワクした。岡林信康から新しいアルバム『アナザー・サイド・オブ・オカバヤシ』が届いてのこと。収められた13曲が全部吉岡治の作詞で、ちょうど5月17日が、彼の3回めの命日だった時期にも重なった。僕はフォーク全盛の1970・・・

杉本眞人とすぎもとまさとの 間で、何が起きているのか?

殻を打ち破れ134回  「おや?」  と、聞き耳を立てる。すぎもとまさとのシングル『アパートの鍵』について。3月のあたま、場所は台湾のホテル華泰王子飯店の一室。小西会という仲間うちのゴルフ・ツアー!?の途中だが、やり残した仕事を持ち込んでいた。そこで、すぎもとの歌の表現が、微妙にこまやか・・・