小西良太郎のカラオケ談義

2013年4月13日更新


君は船橋浩二の『雪国の女』を聞いたか?

殻を打ち破れ133回 居酒屋「けい」で飲んだ。名古屋城近く、又穂町という住宅街にポツンとある店。逆L字型のカウンターに、テーブル席が三つほどの規模だが、地元の常連客で賑っていた。美人ママの愛想と、おいしい酒の肴のあれこれが人気なのか。僕らに乞われて歌いはじめるのは船橋浩二という歌手で、マ・・・

新人川上大輔をヨイショする!

殻を打ち破れ132回  歌い手最大の武器は「声」だと思っている。一度聞いたら忘れられない声、二度目には「あいつだ!」と判る声。それが楽曲で淀みなく生かされ、ほど良い感情移入が出来たら鬼に金棒だ。しかし、そんな声の持ち主は滅多に居ない。歌手を目指す若者の、何千人に一人か何万人に一人か――。・・・

北の温泉町で『酒のやど』が沁みた!

殻を打ち破れ131回  親愛の情をこめて「和尚!」と呼びならわす快人物がいる。山形・天童市の名刹の住職・矢吹海慶氏。地元の有力者で「佐藤千夜子杯歌謡祭」を取り仕切るが、博覧強記、酔余の雑談が滅法楽しい。時に「酒と女は2ゴウまで」などと、生ぐささもほどほどの粋人だが、それが、 「今年、生ま・・・

日野美歌は近ごろ、只者ではないぞ!

殻を打ち破れ131回 ≪ほほう、なかなかのボーカリストぶりではないか…≫  日野美歌のコンサート。客席の片すみで僕は、メモの手を止め、しばしその歌声に身をゆだねた。『港が見える丘』や『蘇州夜曲』なんて古い曲から、自作自演の『横浜フォール・イン・ラブ』まで、ジャズ仕立ての10数曲が味わいそ・・・

やるじゃないか!婿どの...

殻を打ち破れ130回  ディディデン…と、前奏のド頭から爪弾きのギターである。  ≪おっ、来た!来た!≫  と、聴いている僕は、即座に“その気”になる。このテの歌には、歌謡少年だった昔からの血が騒ぐのだ。  ♪惚れたおまえの 涙のような 路地の屋台の こぬか雨…  思った通りの歌い出しの・・・

原文彦は、ただ者ではないぞ!

殻を打ち破れ129回  ♪あんた死ぬまで 一緒がいいと こおろぎみたいに おんなは泣いた… と来た。僕はガツンとショックを受ける。こおろぎ? その鳴き声って一体? などと、理屈をこねる必要はない。胸を衝かれた表現と酔い心地なら、素直にそのまま受け止めればいい。 美川憲一の新曲『金の月』で・・・

『うたびと』池田充男の手練の仕事

殻を打ち破れ128回  ♪笑顔があれば しあわせになれる 信じながら 迷いながら 虹のふもと尋ねるような それが人生…  と、これは聞く人全部に訴える人生観フレーズ。それが大勢の胸にスーッと入って来るのは、詞の目線が率直に平らで、説法臭を持たないせいだろう。  ≪うまいなぁ…≫  と僕が・・・

喜多條忠も、ようやるよ!

殻を打ち破れ127回  献立表の裏に、作詞家喜多條忠がちょこまかと、何か書きつけている。隣りの席からのぞくと、どうやら歌の文句らしい。  ≪鉄は熱いうちに打てということか。それにしても…≫  と、僕は周囲を見回す。島根県大田市から小高い山へ登った三瓶荘、その広間で開かれていたのは竹腰創一・・・

吉岡治の顕彰碑が小豆島に建ったぞ

殻を打ち破れ126回  作曲家の岡千秋が、石川さゆりの歌を聞いて泣いた。6月9日夜、場所は瀬戸内海の小豆島である。この日、島の土庄港の船着き場に、作詞家吉岡治の顕彰碑が建立され、除幕式が行われた。その祝賀の宴で、さゆりが歌ったのは『波止場しぐれ』で、詞が吉岡、曲が岡の作品だった。  この・・・

「すっぴんの歌ごころ」かねェ

殻を打ち破れ125回  作詞家の田久保真見とは、一度だけ飲んだことがある。確かキム・ヨンジャの新曲発表会のあとで、田久保の詞に曲をつけた田尾将実が一緒だった。僕は彼女のあどけないくらいハイトーンの話し声と、グイグイいく飲みっぷりの良さに「いいぞ、いいぞ…」になって、少々深酒をした。  場・・・