まるで音の〝南郷達也展覧会〟だ!
何が驚いたと言って、南郷達也。 MCの編集部から届いた音資料を、聴いても聴いても南郷の編曲。何と十曲中八曲が彼の音で飾られていた。このニュースを担当して何年になるか、もう忘れたくらいの年月が経つが、こんなのは初めてだ。
裏町演歌から女心艶歌、勇壮な男唄があれば祭り唄もあって、その仕事ぶりは多岐にわたってなかなかの手際。器用だ...と思う向きもあろうが、これくらいの幅と感性を持たなければ、人気アレンジャーは務まらない証だ。
2013年9月のマンスリーニュース
2013年12月27日更新まるで音の〝南郷達也展覧会〟だ!
何が驚いたと言って、南郷達也。 MCの編集部から届いた音資料を、聴いても聴いても南郷の編曲。何と十曲中八曲が彼の音で飾られていた。このニュースを担当して何年になるか、もう忘れたくらいの年月が経つが、こんなのは初めてだ。
裏町演歌から女心艶歌、勇壮な男唄があれば祭り唄もあって、その仕事ぶりは多岐にわたってなかなかの手際。器用だ...と思う向きもあろうが、これくらいの幅と感性を持たなければ、人気アレンジャーは務まらない証だ。
男の酒場
作詞:万城たかし イントロから、ギターが泣き加減の路地裏演歌。昔々、飲み屋横町の赤提灯を伝い歩いた、ギター流しが得意としたタイプだ。
西方の歌も委細承知のノリ。馬鹿な奴だ...と自嘲気味の男心を、まっすぐ声高に吐露する。サビの歌詞一行など、この人には珍しくめいっぱいに声を張った。それだけでは能がないかと、歌い納めの二行分は、ふっと我に返った優しさの息づかいで、味を深める。
作詞・万城たかし、作曲・岩上峰山はなじみのない名だが、昭和演歌の定石を踏む仕事ぶり。しかし、このタッチとノリは平成のものだ。
女の倖せ
作詞:たかたかし 古いと言われようが、ナンセンスとそしられようが、歌書きたちは素知らぬ顔でステレオタイプの女心ソングを書く。たとえ少数派にしろ、そういう歌を欲しがるカラオケ熟女がおり、それをあて込む制作者がいるせいか。
たかたかしの詞、岡千秋の曲のこの作品もそんな流れの中の一曲。それを北野が、感情移入少し控えめに、オトナの女の歌に仕上げた。
よく聴けば、詞、曲ともにさりげなく、脱・定石の試みを埋め込む。主人公の酒と涙の日々に、ほっと一筆春の日射しを予感させる程度に...。
白夜の狼
作詞:つじ伸一風の音にトランペット。南郷の編曲は前奏から、原譲二の曲を飾って勇壮だ。やりようでは大仰な張り歌にもなるタイプだが、北山は高音処理ほどほどに、むしろ中・低音を響かせる男唄にした。彼の身丈に合わせた仕立て方で、一〇周年記念曲〝らしさ〟を作った。
おもいでの宿
作詞:池田充男 市川昭介の遺作。
『さざんかの宿』の前後のものかと思われる。それにうまいこと池田充男が詞をはめて、湯布院、蛍観橋あたりの歌にする。女の未練心を、美律子がていねいに歌って、情を濃いめにした。艶歌の本道を行きたい意欲の現われだろうか?
こぼれ酒
作詞:いではく涙がポロポロ、夢でもポロポロ...が決めフレーズの女心ソング。酒場すずめの嘆きを、明るめに藤原が歌う。聞かせる歌より歌わせる歌を書きたい作曲・叶弦大に、詞・いではくが呼応した。ドラ声張り上げても歌える〝あんちゃん節〟を、藤原の美声が生かした。
男の火祭り
作詞:たかたかし 本格演歌が五年ぶり!と惹句が力む。この種の作品につきものの太鼓は、鼓童をフィーチャーした。「あっぱれ、あっぱれ...」と男声コーラスが盛り上げて、冬美を歌の神輿に乗せる。昔からそうだがこの人、何を歌ってもちゃんと
〝冬美節〟になるのが強みだ。
男っちゅうもんは
作詞:吉 幾三 吉は己の心情を、
酒や旅や故郷に託して歌にして来た。それが今年四十年、どうやら正面からまっすぐに、歌でメッセージする気になったらしい。さだまさしか?と意表を衝かれた歌い出しだが、男の生き様を語りかける口調がやさしげで、確かに吉流だった。
港みれん
作詞:下地亜記子 詞の下地亜記子、
曲の徳久広司、編曲の南郷達也と三人揃ってオーソドックスな仕事ぶりの港みれん歌。哀愁の味ひたひた...の企画だが、谷本の歌はその狙いにのめり込んだりしない。感情移入の波が、歌い伸ばす語尾で、ふっと醒め加減になるのがこの人の個性か。
ないものねだり
作詞:田久保真見古巣テイチクに戻ったのが、四二年ぶりだと言う。レコ大の新人賞騒ぎから、もうそんな年月が経ったのか。田久保真見・田尾将実コンビのこじゃれたラブソングを、気分よさそうに乗って湯原が歌う。ロカビリーからGSを通過した男のポップス、確かに円熟だわ。