春4月、それぞれの踏ん張り方
作品とのめぐり合わせか、歌手としての潮の満ち方か、いずれにしろ気合いの入った歌というのは、快いものだ。これが運とかツキとかいう代物、つまり時代とも出会えたら、手応えのあるヒットにつながるだろう。
小金沢昇司の歌には、作品に乗った意気込みを感じたし、五木ひろしの歌からは、彼流を極めようとする気合いが聞こえた。大ヒットの余勢が福田こうへいを生き生きとさせ、戸川よし乃のすずめシリーズ3作を書いた岡千秋は、違うもので行こうとする熱意が強い。
2014年3月のマンスリーニュース
2014年6月21日更新春4月、それぞれの踏ん張り方
作品とのめぐり合わせか、歌手としての潮の満ち方か、いずれにしろ気合いの入った歌というのは、快いものだ。これが運とかツキとかいう代物、つまり時代とも出会えたら、手応えのあるヒットにつながるだろう。
小金沢昇司の歌には、作品に乗った意気込みを感じたし、五木ひろしの歌からは、彼流を極めようとする気合いが聞こえた。大ヒットの余勢が福田こうへいを生き生きとさせ、戸川よし乃のすずめシリーズ3作を書いた岡千秋は、違うもので行こうとする熱意が強い。
昭和の花
作詞:田久保真見 〽おれの心の ほとりに咲いた 女 いちりん 昭和の花よ...と来た。昭和ねぇ、これまた大きく出たもんだ...と思うのは、昔のひとをしのぶ歌だと思うせいだ。そんな1番の感想をニヤリと見すかすように、2番の主語が「酒」になり3番のそれが「友」になる。
尻あがりに展開する田久保真見の詞は、昭和に青春期を過ごした男の生きざまソング。団塊の世代が「う~む」と唸るかも知れない。
いろいろあったそんな時代に、徳久広司の曲、小金沢の歌が共感したか。サビあたり、めいっぱいの声と心が、きりっとした。
江ノ島ひとり
作詞:志賀大介 意表を衝くのが小金沢作品なら、こちらは定番の世界に徹しようとする。鎌倉に住む男へ、江ノ島の女が一途な思いを訴える、小道具は七里ケ浜、腰越、切り通し、弁天さまなど。
そう来るだろうな...と待ち構えるところへ、その通りの詞と曲(志賀大介、伊藤雪彦)が来るが、きちんと盛り上がって破綻がない、両ベテランのいかにもいかにも...の仕事ぶり。
三代の歌も、ブンチャブンチャのリズムに乗って、それらしい仕上げ方。泣き節だが声味があたたかで、人柄まで聞こえる気がした。
桜貝
作詞:水木れいじ 1997年というから、17年前のアルバムに入れた曲を、歌い直して3度目、50周年記念曲にした。お気に入りの作品を、今ならこう歌えるという自負と、詞にある「ありがとう」の思いが、昨今の心情に重なってのこと。精緻な歌唱と詞、曲の情のこまやかさが聞きどころだが、自作までとことん聞き直し、再発掘するのが、五木のプロデューサー感覚か。
峠越え
作詞:久仁京介 大ヒットのあとの作品、久仁京介の詞、四方章人の曲、福田の歌と、力こぶが三人三様に揃った。いきなりガツンと高音から出るメロディーに、福田の民謡の節が生きる。高音からスタートすると、曲はサビと歌い尻にまた高音が来るから、作品のインパクトも強め。若さと覇気のある福田の歌の向こうには、はるかな山並みが見える心地がした。
宿なしすずめ
作詞:円 香乃 伊戸のりお編曲のイントロのあたまが、シャンソン風味。語り歌が始まる予感がある。歌い出しの歌詞2行分あたりは、三木たかしか?と思わせるメロディーで、これが岡千秋だからニヤリとした。「かざす傘も人もない」「帰る部屋も胸もない」「眠る子守唄も膝もない」...と、ないないづくしの円香乃の詞を、歌い切った戸川が、何だかいじらしく思えた。
島根恋旅
作詞:仁井谷俊也 ご当地ソングの女王の旅は、今度は島根。相変わらず失意の女が主人公だが、「出逢いふれ逢いめぐり逢い、縁は一生、、笑顔、笑顔、笑顔が嬉しい」...と、3番を歌い納めて明るさを残す。その歌い尻にきれいなファルセットを使ったのは、作曲弦哲也の作戦、長く続くシリーズに新味を盛ろうと、作家たちはあれこれ知恵をしぼるようだ。