ま、少々安直な気がするが...
「越前」「越佐海峡」「忍野八海」「木次線」「濃尾」...。失意の女主人公が今居る場所である。今回の10曲のうち5曲までが、そんな地方色探しの産物になった。女ひとり旅の心情は、相場が決まっていて、さしたる変化は作れない。耐えてしのんで振り切って、あるいは振り切れぬまま、明日に向かう。その目先を変える小道具が地名なのだ。作詞家はあれこれ資料をあさるのだろう。そんな歌を聞きながら、こまめに日本の地図を辿れば、歌好きたちはちょいとした旅上手になろうか!?
2014年4月のマンスリーニュース
2014年7月20日更新ま、少々安直な気がするが...
「越前」「越佐海峡」「忍野八海」「木次線」「濃尾」...。失意の女主人公が今居る場所である。今回の10曲のうち5曲までが、そんな地方色探しの産物になった。女ひとり旅の心情は、相場が決まっていて、さしたる変化は作れない。耐えてしのんで振り切って、あるいは振り切れぬまま、明日に向かう。その目先を変える小道具が地名なのだ。作詞家はあれこれ資料をあさるのだろう。そんな歌を聞きながら、こまめに日本の地図を辿れば、歌好きたちはちょいとした旅上手になろうか!?
ひとり越前~明日への旅~
作詞:喜多篠 忠 作曲家協会のソングコンテスト、昨年のグランプリ曲と言う。作詞が喜多條忠、編曲が丸山雅仁、歌が大月みやことちょいとした顔ぶれだから、作曲した晃正げんぺいの喜びは大きかったはず。
すっきりときれいに、破綻がない曲だ。サブタイトルの「明日への旅」のニュアンスも生きて少々明るめ。応分の説得力を持つのはあれこれ熟慮した成果だろう。
流行歌の流れに、新風を吹き込むよりは、順風に添おうとした作品。大月の歌は歌い回さず、小さく生んで大きく育てる気配があって、気さくだ。
有明海
作詞:田久保真見 弦哲也が一念発起、作曲に打ち込んだ陰に、北島三郎の助言があったと聞いたことがある。大成してもその後、北島の曲を書く機会には恵まれないと彼は苦笑したものだ。
その弦が北島家の婿どの、北山に書いた曲を聞いて、その話を思い出した。この作品、北島が歌い回したら、妙に晴れ晴れざっくりと、とても似合いそう。
北山はそれを、八分目くらいの声の出し方で、少しこぶりに彼流の歌にした。派手さよりも誠実を自分の色と心得てのことか。田久保真見は最後の行、言い切らぬ辺りがヘンかな。
長持祝い唄
作詞:横内 淳 1番が嫁ぐ娘、2番がその父親を主人公に、3番はどうやら婿と娘への助言...といった内容。地方色たっぷりめの祝い唄を、千が淡々と歌う。横内淳という人の作詞、作曲。割と素直でケレン味がないせいか、千の歌は身上のアクが抜けて、やや薄味に聞こえる。
越佐海峡~恋情話
作詞:下地亜記子 "添えぬ人なら逢うのもつらい、逢えずに暮らせば尚つらい...と、下地亜記子が書いた女のこがれ唄。弦哲也がそれに、芸道もの、道中ものの匂いの曲をつけた。のびのびたっぷりめ、泣かない歌にしたのは真木で、この人の何でもアリ!の融通無碍ぶりが面白い一曲。
忍野八海 わかれ旅
作詞:まつだあつこ 歌い出しの歌詞、一区切りごとに音が尻上がりになるなど、2行分で「ほほう!」の答えが出た。わかれ歌だが明るめに、カラオケ熟女に好まれそうな作品。西方も得たりや応!と感情移入は薄めに、メロディー軸足の歌で技と声味を聞かせている。
雨の木次線
作詞:佐藤史朗 水の流れに浮く枯葉が、どこか似ているひとり旅...の女唄。佐藤史朗という人の簡潔な詞を弾みかげんの曲に乗せたのは、これも弦哲也。永井の幼な声の味を生かした清純派ソング仕立てで、ブンチャブンチャの気分の良さも、どこか懐かしいタイプだ。
濃尾恋歌
作詞:冬弓ちひろ 詞が先か曲が先か。女ひとりの恋歌が不思議なスケールを示した。定石どおりには決して行かない吉幾三のメロディーが、彼流で独自なせいか。久しく見ないがこの人のコメディーは、作っては壊し...の連続だった。歌づくりにもそんな才覚が働いているのかしら?
砂の橋
作詞:仁井谷俊也 膝をつき合わせて聞いているような、そんな気分にさせる歌声だ。息まじりの発声、ひたひたと寄せて来るフィーリング。それが体温こみでしっくりと、身近な感触を作るのか。徳久広司の曲に誘われて、山本は独自な世界を作りはじめている。
あいつ~男の友情~
作詞:仁井谷俊也てんから、死んじまった友人を偲ぶ歌。歌の中の死は時おり特異な切実感を作るが、ここまで徹底したのは珍しい。仁井谷俊也の詞、影山時則の曲のギター流し歌仕立て。秋岡の思い入れの濃さと技は、3番の最後「あいつ」の「つ」の歌い伸ばしに歴然である。