二番の歌詞は無用の長物か?
演歌、歌謡曲は3コーラスで一つ。それがテレビは2コーラスが当たり前になって、歌手も歌書きも疑わなくなった。あれは短時間に情報を多く詰め込むテレビの身勝手なのに。
今月作品を聞く。池田充男、志賀大介ら古手は二番もきちんと書いているが、中にはそこを手抜きというケースも見受ける。歌は入口、手口、出口で、それの展開と奥行きが欲しい。ステージでも一番三番の歌手なんて、作品に対して無礼です。素人のカラオケだけがフルコーラス、本当にこれでいいのかね。
2014年9月のマンスリーニュース
2014年9月1日更新二番の歌詞は無用の長物か?
演歌、歌謡曲は3コーラスで一つ。それがテレビは2コーラスが当たり前になって、歌手も歌書きも疑わなくなった。あれは短時間に情報を多く詰め込むテレビの身勝手なのに。
今月作品を聞く。池田充男、志賀大介ら古手は二番もきちんと書いているが、中にはそこを手抜きというケースも見受ける。歌は入口、手口、出口で、それの展開と奥行きが欲しい。ステージでも一番三番の歌手なんて、作品に対して無礼です。素人のカラオケだけがフルコーラス、本当にこれでいいのかね。
霧笛の宿
作詞:池田充男
作曲:船村徹
唄:大月みやこ
歌い出しの歌詞1行分につけたメロディーだけで、作曲者は船村徹と判る。小さな譜割りの緩急、ゆすり方が独特なのだ。
池田充男の詞は一見さりげなく、特段の技を示さない。こちらもそこが曲者で、平易な表現が婉曲。含みを持たせ、意味あいを掛けて、情のゆらめきを残す。
八十才を越えた二人の、若々しい名勝負の一端を聞く。池田はあくまで控えめに、先輩船村を立てながらの仕事だが、胸中、期するところはあるのだろう。それを感じ取ってか、大月の歌がもう〝その気〟になっている。
花嫁峠
作詞:関口義明 昔々、佐々木は三橋美智也二世と目された歌手だ。それを面と向かって言い募り、三橋を怒らせてしまった体験を僕は持つ。
そのころと較べたら、佐々木の歌声は太めになり、それなりの年輪を刻んでいるが、歌にある野趣は相変わらず得難い。
作詞の関口義明は「あゝ上野駅」のヒットで知られるが故人。旧作の掘り起こしだろうが、掛け言葉、重ね言葉の妙は、やはり手練の術。ひなびたお話をのどかに仕立てた世界を、宮下健治の曲が生かしている。佐々木にはうってつけの作品で、ベテラン健在の感が強い。
人生一勝二敗
作詞:志賀大介古い良さを生かすのが演歌なら、作詞志賀大介もベテランの腕の見せどころ。「人生一勝二敗」と題名から言い切って、それで丁度いいのだ...と、共感を求める。岡千秋も浪曲のツボを盛り込んで呼応、三門の歌は妙な表現で恐縮だが、ねっとりと歯切れがいい。
矢車草~やぐるまそう~
作詞:仁井谷俊也徳久広司もうまいもんだ...と感じ入る。快い乗りと起伏のメロディーで、歌い手も聞き手もその気にさせる。ことにサビの歌詞2行分あたりがそうか。ブンチャブンチャのテンポを少しゆっくりめにして、伍代の歌にシナを作らせ、思い入れの個所も残した。
雨の港町
作詞:久仁京介徳さんもうまいなァの第2弾。久仁京介の長崎、函館、横浜をつないだ港町ものの詞を、なつかしのムード歌謡ふうに仕立てた。ヨンジャのソロなのに後ろから「ワワワワーッ」なんてコーラスも聞えそうな気分。ヨンジャも声を抑えた〝わさび味〟でこなした。
ちょいときまぐれ渡り鳥
作詞:仁井谷俊也仁井谷俊也の詞に曲が宮下健治に変わった股旅もの。「おっとどっこい いけねえよ」を繰り返して、ファンとの掛け合いではやらせたい狙い。題名からも判る軽めの歌だから、氷川の歌もおどけた口調に、歌い尻は大きめのビブラート。技を聞かせる気らしい。
艶歌船(えんかぶね)
作詞:松井由利夫声を張るところはめいっぱい。突くところは突き、ゆするところはゆする。細川のお得意唱法のいいところを総動員した派手めの作品。半音あげたカラオケつきで、カラオケ巧者にやれるもんならやってみな!と突きつけた企画。芸道40年記念の痛快〝どやソング〟か。
冬子のブルース
作詞:池田充男また池田充男の詞をヨイショしたくなる。「ほんとの名前は知らないが俺が愛した二百日」なんて、あり得そうもない話をすうっと艶っぽく聞かせる。弦哲也は「北の旅人」まで思い出させるムード派ぶりがいい感じ。増位山にぴったり〝はまり〟の曲になった。
くちなし悲歌
作詞:小谷 夏作詞の小谷夏は演出家久世光彦のペンネーム。ずいぶん前に亡くなっていて、作曲の三木たかしもそうだから、17年ぶりに甦ったいい作品。女の恋心と年月の中の変化を、くちなしの花に託した含蓄の深さは、短編小説の幅と奥行きと美を持つ。観賞用歌謡曲だ。
合掌街道
作詞:喜多條 忠歌い出しから松原の歌は、張りつめている。細めに絞った声が、しっかり芯を作っていい。そんな緊張感を彼女に強いたのは、喜多條忠の詞と小田純平の曲のたたみ込み方。松原の歌は歌詞の最後の一言で、やっと演歌っぽく泣けた。いい作品に恵まれたのだ。
男の駅舎
作詞:荒木とよひさ4曲入りシングルということは1枚で4度おいしい勘定か。荒木とよひさと弦哲也の連作で「男の駅舎」はその冒頭曲。おとなの男の苦渋を、里見がしみじみ歌う。身上の折り目正しい歌唱が、時に激する個所もあって、僕と同い年だが、いや、若々しいねぇ。