演歌勢の"やる気"が聞える!
自分自身の来し方行く末と感慨を、思いを込めて歌った。弦哲也の記念曲は相当な完成度を持ち、流行歌としてもきちんと説得力を持つ。北島三郎は自分の気概と曲づくりの技を重ねて、彼ならではの世界を作りあげた。絵空事のはやり歌の芯に、それぞれがしっかり真実を埋め込んだ手応えがある。天童よしみ、中村美律子は、これが身上!の味と巧みさを聞かせた。その他にも制作サイドの意欲がうかがえる歌があり、窮地だからこそか、演歌、なかなかの賑いである。
2015年2月のマンスリーニュース
2015年2月1日更新演歌勢の"やる気"が聞える!
自分自身の来し方行く末と感慨を、思いを込めて歌った。弦哲也の記念曲は相当な完成度を持ち、流行歌としてもきちんと説得力を持つ。北島三郎は自分の気概と曲づくりの技を重ねて、彼ならではの世界を作りあげた。絵空事のはやり歌の芯に、それぞれがしっかり真実を埋め込んだ手応えがある。天童よしみ、中村美律子は、これが身上!の味と巧みさを聞かせた。その他にも制作サイドの意欲がうかがえる歌があり、窮地だからこそか、演歌、なかなかの賑いである。
いのちの春
作詞:水木れいじ
「恋はいのちの いのちの春だから...」というフレーズが、各コーラスの歌い納めにある。高音でせり上がるメロディーがついているそこで、天童はのびのびと声を張る。舞台から大向うへ、両手を開くような姿が目に見えるようだ。
この人はやっぱり、歌を"語る"よりは"歌い上げる"魅力の歌手だと合点がいく。歌の情感を大づかみに、何とも気分よさげな仕上げ方。それを生かしたのは、浪曲テイスト少々の四方章人のメロディーで、彼の曲としては起伏が大きめ。テンポもなかなか快適だ。
犬吠埼~おれの故郷~
作詞:弦哲也 音楽生活50周年を記念、弦哲也が詞を書き、五木ひろしが曲をつけ、川中美幸がタイトルの文字を書いたのが話題。
犬吠埼は、弦が14歳で離れた故郷千葉を象徴する。そこを出て、そこを振り返り、そこで明日をのぞむ男唄。弦の心の原風景に、彼の半生の感慨が託されている。いってみれば彼の自叙伝ソング。五木の曲も彼らしいフレージングで、それを生かした。
歌手田村進二として18歳でデビュー、不発に終わった青春の、その後の進化が極まる快唱。本人の苦渋と達成感が力強い。
大漁船
作詞:大屋詩起作曲者原譲二の技と、歌手北島三郎の気概が混然一体。それが歌い出しの歌詞1行分でくっきりとする。声を張ってスタートした歌が、語りに転じる妙。ヨイショヨイショの男声コーラスを従えて、彼の身上の海の男歌。78歳でこの覇気とヤマっ気。やっぱり相当なもんだ。
お岩木山
作詞:千葉幸雄どちらかと言えば、情緒てんめん、情の細やかさが売りの三山が、岩木山と向き合って歌う男の心情ソング。ともすればラフな男くささを狙う企画を、のびのび淀みなく、すんなり仕上げるのが三山流か。師匠中村典正のツボを心得た曲で、歌の目線も山へ向かった。
いのちの人
作詞:水木れいじ前出『いのちの春』と同時発売という二枚目のシングル。曲が徳久広司に代わって、こちらはムード歌謡仕立てだ。ガツンと歌い出して歌詞2行分、気分揺すって次の2行分、おしまいの2行分を開放的に決めて、ひところのクールファイブに似た快さがあった。
女の舟唄
作詞:石原信一作曲家幸耕平の仕事は、メロディーがポップス寄りの歌謡曲で、強調されるリズムが快い。それが演歌系の曲を書き、田川が歌で揺すぶろうとした。リズムを先に行かせて、心情本位に歌うあたりが面白く、田川は情感の押し引きに、年季の呼吸を聞かせた。
潮騒(しおさい)
作詞:久仁京介ギターの爪弾きの前奏は南郷達也、歌い出し2行分で決める気の5行詞は久仁京介、ゆったりめの哀愁メロディーは徳久広司だ。それを声と節をあやつって、中村美律子が力量を示す。月の岬の灯台、恋の闇路...とこの歌「みだれ髪」のオマージュにも聞えた。
雪國ひとり
作詞:万城たかしそうか15周年か!と、デビューから10年ほど、歌づくりを手伝った僕も感慨が深い。雪国の列車が舞台の女心ソング、心なしか細めの歌声が、"元気な裕子"を超えたおとなの女ぶり。前のめりの、やんちゃな勢いが影をひそめて、歌心が体の芯に据わった気配がある。
銀座小路
作詞:もず唱平ほほう、銀座・金春小路ねえ...と、作詞もず唱平の顔を思い浮かべる。大阪在住、なにわの大将が書いた越境ソング!?だ。スローなメロ、とんとんとんのリズム、三味線の音色がからんで、松前の歌が楽しそう。これが近ごろの日本調の進化型だろうか?
氷雪挽歌
作詞:円香乃どうやら岡千秋は、戸川のレパートリーづくりで、彼自身も新境地開拓を狙っていそうだ。起伏大きめなポップス系の曲で、伊戸のりおのアレンジもドラマチック。戸川にすれば、かなりハードル高めの作品を、一生懸命歌っていっぱいいっぱい。けなげである。