2015年5月のマンスリーニュース

2015年5月1日更新


昭和テイストの魅力と意味

 今月の歌を聞いて、強く感じたのはメロディーの昭和テイストへの回帰。演歌の味っけも歌謡曲寄りだ。もともと流行歌は、GS、フォーク、ポップスの台頭までは、歌謡曲と呼ばれていて、新勢力の対極として「演歌」にせばめられた経緯がある。
 昭和の歌の魅力は、芯が明るくおおらかな楽しさ。昨今それが戻った背景は、演歌の類型化と、世相のあてどなさ、ただならなさで、重苦しさが嫌われてのことか。やはり歌は、世につれていくものなのだろう。

今治みれん雨

今治みれん雨

作詞:麻こよみ
作曲:徳久広司
唄:
北野まち子
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 こんなタイプの曲、今までにあったかな?と思い返すが、記憶の中から出て来ない。それほど特異なメロディーかと言うと、そうでもない。つまりは、ありそでなかった面白さを、徳久広司が書いた。彼なりの工夫だろう。
 麻こよみの詞に、特段の変わり方はない。瀬戸内の今治を舞台にした、女の未練歌。それをゆったりめのテンポと、とんとんとんと軽めの弾み方で聴かせる。語るでもなく歌うでもなく、情感が飛び石づたいみたいだ。歌う北野まち子は、コツコツ頑張って来たベテラン。徳久のそんな世界に、上手に対応した。

の桟橋

男の桟橋

作詞:たきのえいじ
作曲:筑紫竜平
唄:大川栄策
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 たきのえいじが彼にしては珍しく、演歌の歯切れのよさを狙った詞を書く。それに曲をつけたのは、筑紫竜平のペンネームで大川栄策本人。さぞやねっとりと、彼流の歌に仕上がったろうと思って聴いたら、そうではなかった。
 いきなりメロディーが高音から出るが、彼は歌い回さない。すたすたと語る気配の処理でスタート、おしまいのフレーズ「男の桟橋...」で決める歌の導入部にした。別れて2年、去った女をしのぶ屋台酒、ラジオからもれる流行歌などを小道具に、明るく軽快な歌にまとめている。無意識のうちに表われた大川の時代感覚だろうか?

女の岬

女の岬

作詞:さいとう大三
作曲:四方章人
唄:若山かずさ
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 作曲した四方章人は、委細かまわず自分流、書きたい歌を書く。ゆっくりずっしりの、泣き歌である。さいとう大三の詞が各コーラスまん中の2行、重ね言葉でたたみ込んでも、意に介さない。古風なタイプの女の嘆きを、若山かずさは声ふるわせて歌った。

さすらい慕情

さすらい慕情

作詞:仁井谷俊也
作曲:宮下健治
唄:氷川きよし
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 氷川の20周年に向けた第一作で、書いたのは仁井谷俊也・宮下健治のコンビ。博多、長崎、鹿児島と舞台が変わる恋人たずね歌だ。「逢いたいよ、恋しいよ」が各コーラスにあって、どうやらファンの呼応部分。何だか昔の佐々木新一や新川二朗を聴く気分になった。

不知火恋歌

不知火恋歌

作詞:仁井谷俊也
作曲:君塚昭次
唄:真咲よう子
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 「逢いたかねぇ」「好いちょるばい」と、九州言葉を書き込んだのが、作詞仁井谷俊也のミソ。愛にすがる女の恋歌のトゥーハーフだ。それを君塚昭次という作曲家が、大作ふう絶唱メロに仕立てた。歌う真咲よう子もベテラン、昔気質の唱法がひたひた...である。

恋の花

恋の花

作詞:たかたかし
作曲:幸耕平
唄:瀬口侑希
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 歌い出しの歌詞4行分、事もなげに語らせておいて、サビのメロ、いきなりガッと来るのはいかにも幸耕平らしい手口。そのサビに「わたし夜咲く酔芙蓉」なんてフレーズを書いたのはたかたかしの手際。瀬口侑希は相変わらず一生懸命に、それを歌って形にした。

あき子慕情

あき子慕情

作詞:池田充男
作曲:徳久広司
唄:増位山太志郎
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 前奏や間奏、それに歌の中まで、あちこちで女性コーラスがからんだり、追いかけたりする。ムード歌謡はこの手でしょと言わんばかりの、池田充男・徳久広司・竜崎孝路の歌づくり。それをのったりと増位山が歌って、手なれたチームの仕事ぶりとした。

女の残り火

女の残り火

作詞:麻こよみ
作曲:四方章人
唄:山口ひろみ
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 こちらは麻こよみ・四方章人・南郷達也のトリオが頑張る。いつもながらの女の嘆き歌で、主人公は雨の中で泣いてばかり。聴く側へじゅんじゅんと、哀訴するタイプのメロディーを、山口ひろみが抑え気味の歌い方で辿った。だからこちらも粛々と聴いた。

鶯~うぐいす~

鶯~うぐいす~

作詞:仁井谷俊也
作曲:宮下健治
唄:島津悦子
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 浮気な男鳥が止まった枝は、桜や梅や桃に例える女のところ。それにじれてる女心ソングは、昔なら五月みどりに似合いそうなホーホケキョだ。仁井谷俊也の都々逸まがいの詞に、宮下健治の曲はどこか股旅調。面白がった島津悦子の歌が"その気"になっている。

おさけ川

おさけ川

作詞:関口義明
作曲:水森英夫
唄:長保有紀
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 長保有紀のキャラと、彼女の声味、節回しに、うまく似合った歌が出来た。関口義明の「めったやたらに逢いたくて」という詞は、遺作だろうか?曲をつけたのは水森英夫で、各節の最後「おさけ川」の「川ぁ~あ~あ~」の歌い伸ばしに、長保の色が濃い。

黄昏ララバイ

黄昏ララバイ

作詞:冬弓ちひろ
作曲:近江たかひこ
唄:小金沢昇司
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 冬弓ちひろの詞、二番の「くわえ煙草で抱き寄せる」も今ふうではないが、懐かしげにリズム快適なムード歌謡。このタイプをレーモンド松屋専売にする手はないと考えたか、作曲は近江たかひこだ。歌いこなした小金沢昇司は器用な人で、レパートリーが多岐にわたる。

ふるさと忍冬

ふるさと忍冬

作詞:下地亜記子
作曲:岩上峰山
唄:真木ことみ
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 下地亜記子の詞の小道具は花ことば。「忍冬」は「愛の絆」なのだそうな。その愛をつなぐ相手は「ふるさと」と「母」というお膳立て。それをべたつかず、醒めた詠嘆の歌にしたのは、岩上峰山の曲と真木ことみの声味。どう感じるかは、聴き手にあずけられた。

居酒屋「みなと」

居酒屋「みなと」

作詞:原文彦
作曲:叶弦大
唄:竹川美子
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 序破急手なれた叶弦大の曲、カモメが鳴く蔦将包の編曲。居酒屋「みなと」の女主人公を描く原文彦の詞は「酔って候」と一ヵ所だけ候文になる。「初(うぶ)な恋」だと原は書くが、竹川美子はうぶとも思えぬ歌い回し。こういう作品も歌えるようになったのだ。

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