時に相方の変更も悪くないか!
作家と歌手の関係には、おなじみの組合わせが長く続くケースがある。双方・あうん・の呼吸の歌づくりだが、時にその相方が変わることもある。
今月の新曲では、成世昌平の詞がもず唱平から久仁京介、秋元順子の曲が花岡優平から杉本眞人、夏木綾子の詞が瀬戸内かおるから柳沼悦子に変わっている。制作サイドの意向や、背後の思惑は判らないが、才能の問題などでは決してなく、センスの交替だろうが、作品の色が変わるから、面白いものだ。
2016年6月のマンスリーニュース
2016年7月27日更新時に相方の変更も悪くないか!
作家と歌手の関係には、おなじみの組合わせが長く続くケースがある。双方・あうん・の呼吸の歌づくりだが、時にその相方が変わることもある。
今月の新曲では、成世昌平の詞がもず唱平から久仁京介、秋元順子の曲が花岡優平から杉本眞人、夏木綾子の詞が瀬戸内かおるから柳沼悦子に変わっている。制作サイドの意向や、背後の思惑は判らないが、才能の問題などでは決してなく、センスの交替だろうが、作品の色が変わるから、面白いものだ。
おんなの暦
作詞:たきのえいじ 女心のありようを、季節や月の呼び名で追ったのは、たきのえいじのレトリック中心の詞。睦月、如月の弥生から、皐月、水無月、文月の夏を過ぎ、神無月、霜月の師走にいたる趣向で、文芸ものか?と思う凝り方だ。
おそらく詞先、それを受けて「さて!」と曲の若草恵は考えたか。奇をてらっても仕方なさそうで、ソツなく定石どおりの演歌に仕立てて、破たんはない。
それを松原のぶえが、けれん味なしの歌唱でじっとりと型にした。類型化を打破したいアイデアものと受け止めておこうか。
男の勝負
作詞:原譲二 紅白を卒業、長期公演もやめた北島三郎は、このところ歌づくりに熱中している気配。折から芸道55年の節目で、メーカー各社の看板歌手たちと、超法規的デュエット作品を並べたりしている。
今作は原譲二の筆名で、詞曲とも本人の男の生きざまソング。冒頭の「先も見えない今の世に、迷うばかりと人は言う」なんて歌詞に、彼の時代感覚もチラリとする。
80歳、その年輪と感慨を重ねた歌と聴いても無理はない一曲。数多いヒット曲で訴え続けた思いが、彼の処世訓になっていそうだ。
九頭竜川
作詞:下地亜記子起承転結のなだらかさよりは、序破急の熱さが五木ひろしの曲にある。6行の歌詞(下地亜記子)を2行ずつ高音部を多用して、緊迫感のあるフレーズで積み上げた。そのうえ彼一流の歌唱でひたひた...だから、作品自体の訴求力がなかなかのものになった。
片隅の愛
作詞:森田圭悟昔は、こういうタイプがたくさんあったなァと、懐かしくなる都会的はやり歌。詞も曲も気分よく弾んで、聴く側も乗せられそうだ。歌詞の中盤にある「シュビシュビシュバー」なんて繰り返しに青江三奈を思い出すが、立樹みかの歌はこざっぱりしている。
宇奈月の雨
作詞:仁井谷俊也歌詞ひと区切りごとの、語尾の歌いざまに鏡五郎の芸を聴く思いがする。歌の情感に合わせて、すっと「置く」思いを「こめる」「ゆする」あるいは「しぼる」次の詞の頭へ「つなぐ」という具合。おまけに6行詞3節の歌を、三幕ものの芝居みたいに仕立てている。
南部風鈴
作詞:久仁京介久仁京介・四方章人コンビが『南部蝉しぐれ』『峠越え』の世界を成世昌平に託した。双方、特に民謡調を意識した様子はない仕事ぶりだが、成世が歌うとちゃんと民謡調になる。歌手の語り口を生かす"ほどの良さ"が、聴き手の気分のよさにつながるから妙だ。
由布院霧の宿
作詞:柳沼悦子「朝霧」「湯の香」「桜の花」「せせらぎ」「濡れ紅葉」などをキーワードふうにちりばめた湯の宿女心ソング。詞、曲、歌で長く続いたトリオの詞が、柳沼悦子に代わっている。一体どうしたの? 瀬戸内かおるは体調でも崩したの?と、ちょっと気がかりになった。
修善寺夜雨
作詞:仁井谷俊也ギターの爪弾きイントロで始まる懐かしいタイプの演歌。昔よりは曲の手口の細やかさが訴求力を強める。それを三門忠司が例によってのったりと、歌の押し引き、粘着力で聴かせる。歌詞の切なさ辛さにはこだわらず、もっぱら歌い心地中心で行く歌手と合点する。
古希祝い
作詞:いではく門松重ねて70年...の節目を、いではくがそれらしい詞にし、千昌夫が作曲もして歌う。芸道ものや股旅ものの匂いもする曲で、さして浮かれる気配もない。歌詞にある「還暦古希はまだ若い」に千が同感したのか、祝い歌らしくない節目ソングになった。