新歩道橋

2018年8月19日更新


新歩道橋1025回

 連日、史上初の暑さが更新され熱中症で搬送された人数が放送される。お年寄りが亡くなるケースも。  《その仲間入りだけはご免だな...》  ぶつぶつ言いながら、僕は次の公演のけいこに出かける。酷暑とも炎暑とも言う多難な気候。この夏は僕の場合、7月23日から始まった。その前日の22日までは明・・・

新歩道橋1024回

 「彼女はひとつ、抜けたな。持ち前の明るさの芯に陰りがなくなった。演技にもそれが出て、今や全開放と言うところか」  明治座で奮闘中の川中美幸を観て、演出家の大森青児が言い切った。ここ2・3年、川中の持ち前の明るさにも、いまひとつ吹っ切れなさを感じていたらしい。演出家の眼というのは恐ろしい・・・

新歩道橋1023回

 ベテラン俳優・田村亮扮する新聞記者は「軽妙」にして「酒脱」ひょうひょうたる言動で存在感を示す。品がいいのはご存知の通り。松竹新喜劇の売れっ子・曽我廼家寛太郎は「爆笑」と「お涙」の両極を演じる板前役。芝居全体を俯瞰する視線が、能ある鷹...で微笑の陰にある。元フォーリーブスのおりも政夫は・・・

新歩道橋1022回

 江東区森下に「SUN」という軽食と喫茶の店がある。ぶらっと入ったら作詞家たかたかしの色紙が目を引く。それも落款つきだから、店へ来た時に書いたものではなさそう。  「どういう関係なのよ」  と聞いたら、ママの口からいろんな名前が出て来た。作曲家市川昭介だの、作詞の川内康範だの。この人マッ・・・

新歩道橋1021回

 6月12日は亡くなった作曲家船村徹の86回目の誕生日。いつもなら彼が「歌供養」を催し、夭折した作詞家高野公男や戦死した実兄福田健一氏の霊を弔い、その年度に亡くなった歌社会のお仲間に合掌、あわせて陽の目を見なかった歌たちを供養した日だ。今年はその当日、鳥羽一郎が筆頭の内弟子5人の会の面々・・・

新歩道橋1020回

 「枚方」と書いて「ひらかた」と読む。「枚」がなぜ「ひら」なのか、見当もつかぬままの丸暗記で、6月5日、そこへ向かった。偶然というのは恐ろしいもので、早朝の新幹線、車内の電光ニュースにその件が出て来た。市がアンケートを取ったが、その結果を、  「難読を逆手に取り、前代未聞、捨て身でいく」・・・

新歩道橋1019回

 「歌謡ロック」という熟語が、妙にストンと胸に収まった。亡くなった歌手西城秀樹が創り上げた世界についての呼称だ。歌謡曲は藤山一郎、岡晴夫の昔から「声を整え」「節を工夫して」「歌う」ことで、歌手たちが魅力を競って来た。いわゆる〝ご三家〟の橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の歌唱もその延長線上に居た・・・

新歩道橋1018回

 午後4時過ぎ、ふらりと新橋駅地下の店へ寄る。まず生ビールをグラスで、これはうがいみたいなもの。小皿料理を2品とり、あとは紹興酒のオンザロック。カウンターの隅に陣取って一服する。IQOSにして2年近くなるが、これでも煙草は煙草、今どき店内で吸えるところなど滅多にないから、ここがお気に入り・・・

新歩道橋1017回

 《さてと...》  とりあえず居間のソファから腰をあげる。ゴールデンウィークも終わり、珍しく東京へ出ないウィークデイ。眼前の葉山の海とうんざりする政治状況をテレビでぼんやり見比べていた午後だ。チャイムが鳴り、愛猫2匹のうち若い方のパフが緊張する。人嫌いなこいつが及び腰なのへ、  「郵便・・・

新歩道橋1016回

 快晴の箱根もいいものだった。静かな芦ノ湖の向こう側、山並みや富士山があって、どこからか小鳥の鳴き声も聞こえる。そんな眺めを見回しながら、しばし忘我の僕が与えられた部屋が凄かった。次の間の手前にまた次の間...の広さで、さてトイレは? 風呂場は? と、探検を強いられる間取り。箱根プリンス・・・