新歩道橋

2017年6月18日更新


新歩道橋985回

 北海道・鹿部に居る。6月6日などびっくりするくらいの晴天。鹿部カントリークラブから噴火湾をはさんで、対岸の室蘭や有珠山を含む山並みがしっかりと見えた。  「たらこの親父の喜寿の祝いだもの。天気だってその気になるさ」  東京から出かけた作曲家岡千秋と作詞家里村龍一はまず乾杯、すっかり〝そ・・・

新歩道橋984回

 午前10時過ぎ、作曲家徳久広司が「北へ帰ろう」を歌いはじめる。5月29日のお台場、フジテレビのスタジオ。  「徳さん、こんな早くから、声出るか?」  「ま、なんとかなるでしょ」  なんて会話をしてのこと。ギターの弾き語りだが、別に気負う気配もなく、彼はいつもながらの居ずまいと物腰だ。 ・・・

新歩道橋983回

 「和顔院釋感謝居士」が戒名。こんなに判りやすいタイプに初めて出っくわした。その字面通りに、穏やかな笑みを浮かべた遺影がカラーで大きめ。亡くなった友人、音楽プロデューサー山田廣作の密葬の祭壇である。5月15日が通夜、16日が葬儀で、場所は東京・高輪の浄土真宗・正満寺本堂。金色を主にした寺・・・

新歩道橋982回

 昔、かまやつひろしから、ミカンが一箱、自宅に届いたことがある。年の瀬近いころだが、彼からお歳暮がくるとは思えない。それから半月くらい後、当時溜池にあった東芝のスタジオへぶらりと訪ねたら、吉田拓郎も一緒に居た。「わが良き友よ」のレコーディングをしていて、ミカンの理由を聞いたら、  「プロ・・・

新歩道橋981回

 「まだ、ちゃんと泣けてないのよ」  亡くなった作曲家船村徹の夫人福田佳子さんが、ポツンと言った。彼が逝ったのは2月16日で84才。体調を崩してはいたが、突然の死だったから、衝撃の方が強かったろう。それから大掛かりな通夜、葬式。四十九日法要を営んで納骨したのが3月31日だ。佳子さんは船村・・・

新歩道橋980回

 「下手ウマ」という魅力がある。表現は決して上手ではないのだが、得も言われぬ味わいがあるケース。歌でも芝居でも時おり、そういう持ち主に出会うことがある。軸になるのは本人の個性とは思うが、長めの年月の中でいい感じに発酵して、独特の風味を作る。ジャンルを問わず、にじみ出るのは人間味であること・・・

新歩道橋979回

 作曲家船村徹の墓は、神奈川の藤沢・片瀬の高台にある。眼下の相模湾越しは正面に富士山、左手に江ノ島を望み、右手手前には小学校。ウィークデイには子供たちの声がにぎやかだろう。  《鳳楽院酣絃徹謠大居士には、似合いの場所ということか...》  高台と聞いて坂を上る覚悟をしたら、少し回り道をす・・・

新歩道橋978回

 肩を叩かれて振り向いたら、堀内孝雄の笑顔があった。久しぶりだから「やあやあ!」「どうもどうも...」になる。パーティーの一隅での立ち話。  「みんな逝っちまうからさ。頑張っていてよ。ま、あんた、あんまり変わらないから、安心するけどさ」  励まされるのは僕の方で、  「ん、まあな...」・・・

新歩道橋977回

 人間国宝の娘という良血がいる。父が文楽の人形遣いで二世桐竹勘十郎。子供のころから役者になり、今は本格派女優で大学教授、大阪府の教育委員ほかを歴任する。三林京子の略歴だ。そうかと思えば九州大牟田の、芝居小屋の奈落で生まれたと言う男もいる。美貌が「生きる博多人形」の異名を持つ大衆演劇一方の・・・

新歩道橋976回

 川中美幸〝笑劇場〟は健在である。3月の大阪・新歌舞伎座公演、客席も舞台裏も笑い声が絶えない。芝居も楽しさに的を絞って、川口松太郎作、金子良次潤色・演出の「めおと喧嘩ラプソディー」の1幕3場。70分の小品だが、2組の夫婦の痴話喧嘩の実態!? が関西弁でポンポンポンポン、スピード感で観客を・・・