新歩道橋

2015年6月24日更新


新歩道橋915回

 「昔々、地球の生き物が二手に分かれた。陸で生きることにした面々が人間になり、海で生きる気になったのがイルカになったんだ」  作詞家星野哲郎が酔余、そんな話をしたことがある。温顔を笑いでしわしわさせながら、続きがあって、  「ところがさ、海で生きるつもりだったのに、間違えて陸に上がっちま・・・

新歩道橋914回

 鍵の手にカウンターがある。足許は掘り炬燵ふう。そこへ暖簾の向こう側からふらりと僕。紺の浴衣で手拭いなど肩に、湯あがりのテイだ。  「やあ、やあ」「どうも、どうも...」  と出迎えるのは作詞家荒木とよひさと、常連の「スーさん」こと岐阜新聞と岐阜放送の会長杉山幹夫氏。聞けば90才を越した・・・

新歩道橋913回

 《コンサートもこうなると、相当な力仕事だ》  5月20日夜、渋谷公会堂で中村美律子を観て、つくづくそう思った。一部が歌謡浪曲の3本立てで「壺坂情話」が16分「浪花しぐれ」が14分「瞼の母」が19分である。浪曲はふつう演壇に立っての一人語りだが、この夜の中村は複数の登場人物になるから、セ・・・

新歩道橋912回

 東日本大震災から4年2カ月余、仮設住宅を出て新天地を求めた家族は、まだ全体の4割前後。仙台の仮住まいに残るのは、東北各地で被災した人々だが、あの日、どこに居て、どんなことを体験し、何を失ったかなどを、このごろ少しずつ話せるようになったと言う。抱いている心の傷はなかなか口に出せず、お互い・・・

新歩道橋911回

 山あいに名残りのサクラの花が白く、田園風景のあちこちには、ヤシオツツジの赤やピンクが咲き始めた。野原には、だいこんの花の紫が群れ、家々の庭には草花が色とりどりで、街道には樹齢300余年の杉並木...。栃木・日光市今市は春らんまんの季節で、4月27日は気温28度、真夏日の陽差しが降り注い・・・

新歩道橋910回

〽こんな名もない三流歌手の、何がおまえを熱くする...  そんな歌い出しの「友情」と言う歌が好きだった。歌っているのが無名の歌手だから、ことさらにグサッと来た。新田晃也という奴の自作自演。15才で故郷を離れた男の、歌だけが土産の里帰り、それを迎えた幼な友だちの、変わらぬ眼差しと温かい握手・・・

新歩道橋909回

 神田のビジネスホテルに泊まっている。4月8日から19日チェックアウトの11泊12日、ここから日本橋の三越劇場へ通う。東京メトロ銀座線で一駅、面倒を見てくれているアーティストジャパンの佐野君は、  「歩いても10分ちょっと...」  と、事もなげに言うが、その手には乗らない。今や元新聞記・・・

新歩道橋907回

 「子宝に恵まれなかったから、残り少ない毎日を、夫婦で楽しく暮らそう。そう誓い合って店をたたんだ矢先に、連れ合いを亡くして...」  と、世をはかなんでいる老人を演じることになった。4月9日から10日間、三越劇場の15公演、時代劇「居酒屋お夏」(原作、脚本、演出岡本さとる)で、主演は名取・・・

新歩道橋906回

 《15周年か、おとなになったな、あいつも...》  いわば記念曲の「雪國ひとり」を聞いてから、永井裕子に会いに行った。3月2日の浅草公会堂。「コンサート」ではなく「リサイタル」と銘打っているから、本人にそれなりの覚悟もあろう。新曲はちゃんと〝おとなの女〟の恋唄になっている。万城たかしの・・・

新歩道橋905回

 天国にはどうやら〝73会〟というのがあるらしい。メンバーは伝説のプロデューサー馬渕玄三氏と往年のヒットメーカー市川昭介。それにこのたび三島大輔が加わった。共通点は享年の73。三島は2月22日、がんとの長い闘病の末に亡くなった。その通夜が営まれたのが24日、横浜・瀬谷のメモワールホール瀬・・・