新歩道橋

2020年8月8日更新


新歩道橋1085回

 「マザコンだからねえ」  とほめたつもりなのに「吾亦紅」を歌った直後の歌手すぎもとまさとは、作曲家杉本眞人の顔になって肩をすくめた。この曲を彼はもう何万回歌ったことだろう。ほとんど無心で歌える境地だろうが、サビの、  〽あなたに、あなたに謝りたくて...  の個所だけはいつも意識すると・・・

新歩道橋1084回

 友人の境弘邦にさっそく電話をした。  「届いたよ、読み返してるけど面白い。各章各節ごとに頭のツカミがしっかりしてエピソード仕立てだ。これじゃ俺の商売あがったりだよ」  と言ったら、声まで笑顔のリアクションは、  「あっちこちから電話がかかりっぱなしで、応対にいとまなしって感じでさ...・・・

新歩道橋1083回

 会場の座席番号と姓名、連絡先を渡して来た。6月28日のことで、この原稿を書いているのが7月8日だから、あれから10日経つ。まだ何の連絡もないから、とりあえず無事か。同じような感想を持つ人々も多かろうが、いやいや...とまだ警戒心を維持するのは、歌手加藤登紀子とそのスタッフ、関係者だろう・・・

新歩道橋1082回

 テーブルの上を透明のアクリル板が横切っている。その向こう側にいる女性は、フェース・シールドにマスク、おまけに眼鏡までかけているから、誰なのか判然としない。と言っても、僕は居酒屋に居るわけではない。僕もマスクをつけたままだし、向き合う女性の右側に居る青年もマスクが大きめである。新型ウイル・・・

新歩道橋1081回

 作詞家星野哲郎は今年、没後10年になる。あのしわしわ笑顔に会えなくなって、もうそんな年月が経ったのか! と、ふと立ち止まる感慨がある。その星野の未発表作品が出て来た。徳久広司が曲をつけ西方裕之が歌った「出世灘」と「有明の宿」のカップリング。2作とも温存されて、何と33年になると言う。 ・・・

新歩道橋1080回

 「やっぱり中止か。俺はそのイベントを、コロナ明け、仕事再開のきっかけにしようと思ってたんだけどな...」  「ええ、状況が状況ですから、慎重が第一だろうということになって...」  作曲家弦哲也のマネジャー赤星尚也とのやりとりである。今年は弦の音楽生活が55周年の節目の年。4月に自作自・・・

新歩道橋1079回

 BSテレビで平成の流行歌がよく流れる。新型コロナウイルスの影響が激甚で、番組制作が出来ぬための再放送。当方は巣ごもりのながら視聴で、時に胸を衝かれる。川中美幸の「二輪草」成世昌平の「はぐれコキリコ」水森かおりの「東尋坊」以降ご当地シリーズの全曲、神野美伽の「浮雲ふたり」をはじめ、亡くな・・・

新歩道橋1078回

 「家を出たところで、コンサートも何もやってない。人には会うなというから、散歩してるよ。家からちょっと行くと海があってな...」  しばらく会っていない松枝忠信氏に電話をしたら、相変わらず元気な声だった。もう昔話だが、彼が大阪、僕が東京のスポーツニッポン新聞社で同じ釜のめし。音楽担当記者・・・

新歩道橋1077回

 「続いてます? ずっと」  「うん、もう3カ月になる、そっちは?」  「まだ1カ月、めしの後なんかが辛い...」  作詞家喜多條忠とのそんなやり取りは、禁煙についてだ。僕が始めたのは今年の元旦。その後一緒に飲んだ時に喜多條は、  「何でまた?」  などと冷やかし顔だった。それが3月に入・・・

新歩道橋1076回

 「どんなジャンルを歌いたいの?」  とよく聞かれて、それが悩みのタネだったと言う。テイチクから「私の花」(紙中礼子作詞、花岡優平作曲)でデビューする「ゆあさみちる」という歌手のことだ。  《へえ、そんな枠決めの仕方をそっち側がするんだ、このごろは...》  と、僕はニヤニヤする。  昔・・・