新歩道橋

2020年3月8日更新


新歩道橋1075回

 「やあ、やあ...」  と、久しぶりのあいさつの響きには、気取りも嘘もなかった。しかし、握手に差し出した手に、一瞬の迷いがある。例の新型コロナウイルス感染を、相手はどう考えているか? ところが、  「僕、手がつめたいんですよ」  と人なつっこい笑顔で、夏木ゆたかはこちらの手を握った。2・・・

新歩道橋1074回

 第一景は公園、その群衆の中の一人に僕は居る。占い師としての装束は、お衣装さんの女性が着せてくれた。小道具もそれなりで板着き、音楽が始まり、緞帳が上がる。緊張の一瞬である。ところが―、  客席がまっ白なのだ。ン? と、一瞬こちらの気持ちがたたらを踏む。目を凝らせばそこに出現しているのは、・・・

新歩道橋1073回

 けいこ場に笑いが絶えない。場面ごとに芝居を固める時はもちろん、休憩時間もあちこちで、同時多発的に笑いのかたまりが生まれる。1月下旬の江東区明治座森下スタジオ。2月4日初日の川中美幸特別公演のけいこは、笑い合いながらその割にてきぱきと、事は進んでいる。  笑いの震源地!? は、演出家の池・・・

新歩道橋1072回

 舞台に巨大な将棋の駒が11個も並ぶ。それを背景に2人の男が対峙している。おなじみ、阪田三吉と関根金次郎の因縁の対局シーンだ。駒の間から男たちが現れる。舞台上手の数人が関根側、下手が阪田サイドで、彼らが、盤上の戦いを中継、解説、応援、言い争う。それぞれ口調が激しい。  《そうか、そういう・・・

新歩道橋1071回

 演歌をジャズ・アレンジで歌う。バックはピアノ、ギター、ベースのトリオ。曲目は「ちょうちんの花」「遣らずの雨」「豊後水道」で、川中美幸はまっ赤なドレスに思い切り長めのパーマネント・ヘア。遊び心たっぷりの演出に、ディナーショーの客はノリノリになる。12月8日のホテルオークラ。少し早めの忘年・・・

新歩道橋1070回

『午前3時の御祓い』  これはもう〝哲の会〟の伝説のイベントになっている。20年以上前の話だが、そんな深夜にむくつけき男たちが神前の板の間に正座して、御祓いを受けた。場所は山口県周防大島の筏神社。地名が出ただけで、もしや...と思われる向きもあろう。そう、作詞家星野哲郎の故郷で、宮司は星・・・

新歩道橋1069回

 心に沁みる〝いい弔辞〟を二つ聴いた。11月11日、東京・青山葬儀所で営まれたJCM 茂木高一名誉会長のお別れの会。遺影の前に立ったのは作曲家の弦哲也と作詞家の喜多條忠で、それぞれ作曲家協会と作詩家協会の、会長としての立場だ。  最初の弦は、茂木氏を「関守」に例えた。これはいかめしいタイ・・・

新歩道橋1068回

《北島三郎は元気だ!》  そう書くっきゃないな、これは...と思った。10月27日昼、東京プリンスホテルで開かれた作曲家中村典正のお別れの会でのこと。弔辞で彼は中村との交遊を語り尽くそうとした。弔辞は大てい書いたものを読み、故人の人柄や業績をたたえて型通りになるものだ。それを北島は遺影に・・・

新歩道橋1067回

 男の客がやたらに多い。それも多くは熟年である。女性客が居ても、ほとんどは彼らの連れ。ロビーのグッツ売り場に群がるのもほとんどが男。買い求め方が荒っぽくて、迫力まで感じる。作曲家杉本眞人、歌手名すぎもとまさとが集めた群衆だ。10月10日、用事がすんだ西麻布のスタジオから、プロデューサー佐・・・

新歩道橋1066回

 また家出をした。9月の門前仲町に続いて、今度は国道246に面した大橋のオリンピック・イン渋谷というホテル。10月2日に入って6日まで、ここから中目黒のキンケロ・シアターに通う。ここ5年ほど、レギュラーで出して貰っている路地裏ナキムシ楽団公演。このグループが今回はめでたく10回記念、これ・・・