トップページ> > 月1マンスリーニュース> 2010年7月のマンスリーニュース

2010年7月のマンスリーニュース

2010年09月28日更新

"金太郎アメ"を再考したい

 「歌がみんな金太郎アメになってしまう」と、吉岡治は生前、ずいぶん口惜しがった。カラオケ族用の"覚えやすく、歌いやすい"類似企画の蔓延、それが20余年も続いた。だから、業界20年選手にはもはや、それが当たり前のことになっている気配さえある。
 需要があれば応じるのが、流行もの商売である。しかし、おなじみのオハナシを常套句つなぎ合わせてまとめあげ、結果、誰が書いても同じ...というのは少々情けない。せめて、書いた人の色なり匂いくらいは、感じさせてほしいと思うのだが...。

http://to-ryo.com/menu/photo/img20100825.gif

新宿たずね人

作詞:石原信一
作曲:徳久広司
唄:多岐川舞子

 歌の舞台を仮に、新宿ゴールデン街とすると、時計が止まったままの歳月は40年近いかも知れない。若者世界が騒然としていた1970年前後を指すが、往時を思い返す感傷が、詞のところどころに匂う。作詞者・石原信一は、そんな団塊の世代の一人だ。
 ふと、そういう裏読みがしたくなるギター流し歌仕立て。昔からよくあるネオン街女心ソングだが、徳久広司の曲は多岐川の歌を、声も思いのたけも細めにすぼめさせた。結果生まれたのは人肌のぬくもりで、多岐川はあのころ風の、ちょいといい女になった。

http://to-ryo.com/menu/photo/img220100825.gif

片恋しぐれ

作詞:久仁京介
作曲:山崎剛昭
唄:鏡 五郎

   殿さまキングス時代の宮路オサムや、ぴんからトリオの宮史郎なんかを連想した。両手を広げて大向こう受けを決めるド演歌の一節。感情移入オーバーめで、歌う語尾がかなりクサイ。昔はあっけらかんと、こういう泥臭さが喝采を浴びたものだ。
 鏡が「こんなもんでどうかな?」と、演じてみせた一曲。ビブラートも、まき舌もそれ風に、彼なりの口跡を作った。器用なものだ...と感じ入りながら、これも昨今の歌状況を突破したい一心の、手だての一つかと合点する。しかし、よくやるねェあんたも。

http://to-ryo.com/menu/photo/img320100825.jpg

哀愁運河

作詞:かず 翼
作曲:弦 哲也
唄:山本譲二

 昔々、山本の弾き語りを、高樹町のスナックで聞いたことがある。無名だった当時みたいに、淡々とこの人らしいタッチのムード歌謡。妙にねばるよりはさらっと男らしく...の演出もあろうが、小樽、ガス灯、哀愁運河...、弦哲也の曲との相性のよさが生まれた。

http://to-ryo.com/menu/photo/img420100825.gif

やすらぎの酒場

作詞:麻 こよみ
作曲:叶 弦大
唄:岩出和也

 ところどころでクラリネットが鳴ってこれもネオン街ムード歌謡。麻こよみの詞が「今夜はなぜか帰りたくない。冷たい部屋に」と主人公の男を女々しくしたが、叶弦大の曲は委細かまわず大きめのツーハーフ。岩出の歌を〝その気〟にさせた。

http://to-ryo.com/menu/photo/img520100825.gif

ふたり宿

作詞:仁井谷俊也
作曲:水森英夫
唄:水沢明美

 老妻からだんなへ、しみじみとした語りかけが仁井谷俊也の詞。娘を嫁に出してホッとひと息の温泉宿ものだ。それを水森が、山あいへ「オ~イ!」みたいな曲にした。感情移入切々の水沢の歌が、語尾で妙にのびのびするのは、それとの兼ね合いのせいだ。

http://to-ryo.com/menu/photo/img620100825.jpg

こころ川

作詞:仁井谷俊也
作曲:中村典正
唄:小桜舞子

 声の響きを大切に、歌唱は生真面目に譜面通り。歌表現も実に素直に定石通りだが、この「素直に」が案外くせ者である。中村典正の曲の歌い納め「あなたと生きていいですか...」で声を張れば、前面にいじらしさが強めに出る。これにファンはグッと来るのだろう。

http://to-ryo.com/menu/photo/img720100825.gif

みちのく鯉次郎

作詞:仁井谷俊也
作曲:叶 弦大
唄:香田 晋

 磐梯山、猪苗代湖、喜多方、新相馬、月山、鳴子、最上川と、よくもまあのディテールごっこである。それを歌い込んだ股旅ものを、香田が男くさく歌う。船村徹門下で何でも来い!の広角歌手。キイが低めに思えるが、これはカラオケファン対策だろうか?

http://to-ryo.com/menu/photo/img820100825.gif

おんなの浮世絵

作詞:水木れいじ
作曲:徳久広司
唄:野中彩央里

 浮世絵の魅惑を言葉にすると、水木れいじの場合はこうなるのだろう。艶やかイメージの言葉を並べて満艦飾。いわば言葉のパッチワークだ。それに徳久広司が曲をつけ、野中が歌った。惹句がどうしたって〝情熱的〟とか〝円熟味〟とかになるはずである。

http://to-ryo.com/menu/photo/img920100825.gif

波止場雨情

作詞:たきのえいじ
作曲:なかむら洋平
唄:西村亜希子

 風の中を行く船、桟橋で身をもむ女、波止場はしぐれて、待合室には人影も絶えた。定石通りの船ものだが、このテの作品はこれまでに一体、何百曲出ているだろう? それでもおめず臆せず作り続けるのがこの世界。西村の歌は情感いっぱいいっぱい...を聞かせる。

http://to-ryo.com/menu/photo/img1020100825.gif

ひぐらしの坂

作詞:松井五郎
作曲:都志見 隆
唄:オルリコ

 2行ずつ5ブロック10行分、母への思いを語る松井五郎の詞が、続く4行のサビで母子の絆を訴える。作・編曲は都志見隆、ポップス側からの歌謡曲へのトライ。ドラマチックさを珍重しよう。オルリコの歌声はテレサテン似だが、それよりもきれいでピュアだ。

http://to-ryo.com/menu/photo/cre_m20100825.gif