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2011年7月のマンスリーニュース

2011年08月31日更新

徳久広司がいい仕事をしている

 近ごろの徳久広司は、ちょいとしたパルチザンである。めっきり多作でしかも作風が多様、ここかと思えばまたあちらの歌づくりで、実に遊撃隊ふうな仕事ぶりだ。そのうえなかなかに、完成度のアベレージが高い。
 今回も、西方裕之に演歌、チャン・ウンスクにムード歌謡を書き、瀬口侑希には妖しの世界を作っている。6月20日、美空ひばりの23回忌法要でばったり会い「いいねえ、ここんとこ」と声を掛けたら「いやあ、とてもとても...」と、手をひらひらさせて消えて行った。

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雨の奥飛騨路

作詞:たかたかし
作曲:徳久広司
唄:西方裕之

 歌い出しの歌詞2行分、ゆったりめのメロディーが、歌の主人公の感傷と周囲の風景を見せる。オーソドックスな演歌の「序」の部分だ。次の2行の頭で、曲は意表を衝く激しさの「破」に展開、最後の2行は「いかないで、いかないで」とゆすっておいて、タイトルと同じフレーズで高揚する。いわば「急」にあたるパートか。
 徳久広司は「序破急」の感情的起伏をよどみなく書いて西方をのせ、西方も息づかいたっぷりめの歌で、情を濃くした。
 師弟の二人、お互いをよく知っていて、徳久がそれを生かした。

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泣きむし橋

作詞:喜多條忠
作曲:四方章人
唄:岩本公水

 許されぬ恋でも一途な、女心ソング。詞の喜多條忠、曲の四方章人ともに、手なれた仕事をしている。タイトル通りに、喜多條の詞は主人公の苦悩にまでは踏み込まず、四方の曲は例によって、お人柄ふうに穏やか...。
 それを、どう彼女〝らしい〟歌に仕立てるかが、岩本に課せられたテーマになった。泣き節だが泣かずに歌って、歌の芯を明るめに、心を開いていこうとする気配を作る。各コーラスの歌詞4行めの、話し言葉がそのポイントになったろうか。
 岩本はそういうふうに、自分を取り戻したようだ。

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望郷あいや節

作詞:喜多條忠
作曲:榊薫人
唄:花京院しのぶ

 津軽三味線ひき語りの、望郷シリーズ3作め。音域が広く、難易度やや高めの歌づくりが続く。この人のレパートリーは、カラオケ上級者の支持で、歌手名よりも曲名が先行する特異なポジショニング。ひなびたおおらかさと、明るく素直な歌唱が魅力だろう。

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お前を離さない

作詞:仁井谷俊也
作曲:山崎剛昭
唄:鏡 五郎

 主人公の男が、女と向き合った形で、心情を語るみたいに聴こえる。息づかいの細やかさに、いとおしさが匂うのだ。そんな男女の絵を歌で見せて、歌い始めと歌い納めでは、目線をちゃんと聴衆に戻している。鏡五郎演じるところの、人情劇の一幕である。

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西馬音内 盆唄

作詞:喜多條忠
作曲:田尾将実
唄:城之内早苗

 6月に名古屋で会った喜多條は、秋田から来たと言った。この歌がらみの旅だったのかと、今になって合点がいった。思いがけない地名を持ち出した盆唄。5行詞に田尾将実が面白い展開の曲をつけて、それなりの興趣を盛る。城之内の歌が内心とてもうれしそうだ。

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涙の河を渡れない

作詞:田久保真見
作曲:徳久広司
唄:チャン・ウンスク

 「激しく抱かれた心には、夜明けの色したあざがつく...」なんて2行が、2番の頭にある。田久保真見の詞、フレーズ探しの苦心が垣間見えた。曲はムード派気分たっぷりめに徳久広司。チャンのハスキーボイスはとぎれかかる個所までありで、相変わらず濃厚。

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箱根峠

作詞:関口義明
作曲:水森英夫
唄:音羽しのぶ

 「いい曲貰って、いい夏です」と、音羽から便りが届く。「どれどれ」と聞いてみたら女心ソングの道中もの仕立て。「ひらき直って女がひとり、箱根峠で仰ぐ富士...」と、なるほどいい気分そうだ。関口義明のベテランらしい詞に曲は水森英夫。おとなの遊び心の産物か。

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作詞:松井五郎
作曲:五木ひろし
唄:五木ひろし

 子供のころからずっと暮らした町を歌う。四季の移り変わり、風や星や花...。五木が松井五郎の詞を、ごく抑えめな歌唱で、シンプルな作品にした。震災の被災地へも届けたいと言う。声をすぼませて、心しならせて率直に。なるほど、こういう支援もあるか。

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春よ来い

作詞:仁井谷俊也
作曲:水森英夫
唄:真木ことみ

 辛いことばかりの暮らしの中で、それでも女主人公は上を向く。「春よ来い、早く来い。幸せつれて、春よ来い」とくり返すのが、この歌の結び。仁井谷俊也の詞、水森英夫の曲はどこかで、被災者への思いをこめていそう。真木の歌唱を開放的に明るめに変えた。

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千年の恋歌

作詞:田久保真見
作曲:徳久広司
唄:瀬口侑希

 「何も望まぬおんなほど、ほんとは欲が深いのでしょう」なんて、ドキッとする文句も書き込まれた恋歌。歌づくりは、歌手の魅力に合わせる時があれば、作品で歌手を新しい世界へ誘導することもある。この歌はどうやら後者、瀬口が妙に、艶めいて妖しげだ。

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仕事の宿

作詞:原譲二
作曲:原譲二
唄:和田青児

 原譲二作品の骨子は北島節。曲の緩急、歌のゆすり方や決め方に歯切れの良さまでが、随所に顔を出す。和田はその北島に私淑、北島ゆずりの味で育った。それが師匠の作品を貰う。どうしたって似やすくなるが、似たら負けと判っていて、青児は彼の色を探した。

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北陸本線冬の旅

作詞:たかたかし
作曲:四方章人
唄:永井裕子

 やっぱり、なかなかな歌い手だと改めて感じる。強い声味を持ち、歌のすみまで思いをこめる力を持つ。それが「明日から、平凡なくらしを探します」なんて、たかたかしのフレーズを、さっさと歌った。こちらは「平凡...と来るか!」などと、ニヤニヤした。

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