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2012年1月のマンスリーニュース

2012年03月01日更新

「技巧」と「伝わりやすさ」と

 

 芸ごとの重要な要素のひとつに「技」がある。歌の場合、小節がその一例だが、歌手たちは思い思いのやり方で、表現に工夫をこらす。
 五木ひろしがその筆頭。今回の『冬の唄』にも彼流の差す手引く手が随所にちりばめられている。
 この「技」が実は曲者で、やり過ぎたり消化不良だったりすると、歌が嘘っぽくなる。伝えるべきココロより、技巧の方が浮き上がるせいだ。技はさりげなく、気づけば「さすが!」のサジ加減で使いたいが、むずかしいものだ。

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霧笛

作詞:愁木圭子
作曲:鈴木淳
唄:田川寿美

 歌謡曲、演歌のメロディーは大別してM型とW型の二つに分かれる。M型は中、低音からなだらかに始まるタイプで、高音のヤマ場がおおむね二カ所、W型は字の通りに、高音部から歌に入り、真ん中と最後にヤマ場の高音が来る。
 鈴木淳のこの作品は、明らかにW型で、ヤマ場が三つあるからその分インパクトが強い。歌詞は七行、うまく組立てられたメロディーだから、寿美の歌も気合いが入った。
 歌手生活二一年め、プライベートではおめでたもあって、転機を飾る作品になったろう。

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こころの絆

作詞:たかたかし
作曲:弦哲也
唄:山本譲二

 どんな曲を歌っても、譲二は巻き舌になる。作品の色合いによって強弱があるから、本人も意識しているのか? ラ行が全部そうなるが、そうか、しゃべっている時も同じか!
 だからこの人の場合、しあわせ演歌も少し男っぽく聞こえる。♪ごめんよ ごめんよ 泣かせてばかり...なんてあたりも、女々しくならずにすむ。むしろ、主人公の男の生活臭に通じる。適度の不良性キャラの強みも生きる。
 歌い出しの一行分、声に息をからませて、優しげにする演出には、年の功を感じた。

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玄海あばれ太鼓

作詞:仁井谷俊也
作曲:山崎剛昭
唄:鏡 五郎

 ものがものだから、歌声でドスを利かせる必要がある。委細承知の鏡は、声をひらたくつぶし加減、口跡もそれらしく作った。こういう細工をすると、声が少し暗めになることがままあるが、この人の魅力はそこが、晴れ晴れと明るく、三波春夫流になる点か。

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おんなの山河

作詞:水木れいじ
作曲:若草恵
唄:天童よしみ

 「しあわせは...」という歌い出しのフレーズが、きっぱりと高めの音で出る。明らかにW型メロディーの立ち上がり。歌詞二行ずつを三つのパーツに分けて、情感の階段づくりも手堅い。天童との前作でレコ大作曲賞をとって、若草恵の歌づくりも乗って来た。

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黒髪

作詞:荒木とよひさ
作曲:弦哲也
唄:神野美伽

 前田俊明のアレンジが、全体にやや薄め。その分だけ、神野の歌がしゃっきりと立ち、前面に出た。オーケストラを従えて、歌手はセンターマイク前という、昔ながらの音の位置どり。ダンナ荒木とよひさの詞の「もう大丈夫...」なんてあたりが意味深に聞こえた。

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冬の唄

作詞:阿久悠
作曲:五木ひろし
唄:五木ひろし

 火鉢、時計のチクタク、階段のギシギシなどを小道具に、貧しいが情が濃かった〝あのころ〟を振り返る人恋い歌。昭和回想ものに聞こえるが、阿久悠が三〇年も前にこんな詞を書いていたのかと、改めて驚く。作曲もした五木が、持ち前の技巧で、歌の彫りを深くした。

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春暦(はるごよみ)

作詞:麻こよみ
作曲:中村典正
唄:松前ひろ子

 ふと、昔親しくして貰った神楽坂はん子の顔を思い出す。メロディーに日本調がチラリ、三味線がからむお座敷ソング仕立てだ。『ゲイシャ・ワルツ』が口をついて、懐かしい気分になった。昨今は誰もやらないタイプ、制作陣は、よくそこを再発掘する気になった。

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昭和放浪記

作詞:志賀大介
作曲:伊藤雪彦
唄:大川栄策

 こんな時代だからことさらに...の〝あのころ〟回想ソング。いろいろあった昭和と、命つないだ今を重ね合わせる。志賀大介の詞は重ねことば、かけことばを多用、伊藤雪彦の曲の裏側からは、ジンタの響きが聞こえる。大川のひなびた声味がそれに似合った。

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大阪流転

作詞:仁井谷俊也
作曲:宮下健治
唄:三門忠司

 声の芯が明るい。そのくせ歌唱にえも言われぬ粘着力がある。それが歌詞の細部にこだわらず、のうのうと歌い放つのが魅力で、♪どこで人生間違えたのか...と男の流転を歌う。いい歌い手なのだから、歌社会の方も間違えずに行こうよ...と言ってあげたい。

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恋し浜

作詞:なかむら椿
作曲:幸耕平
唄:大沢桃子

 師事した寺内タケシふう踏ん張り方がある。浅香光代ふうな時代色も持つ。それに、演歌のシンガーソングライターを目指す感性もどこかに。今回は自分で詞を書き、曲を幸耕平に委ねた故郷大船渡もの。いろんな要素ごちゃまぜの人の「がんばっぺ!」か。

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