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2012年11月のマンスリーニュース

2012年12月27日更新

ぼちぼち新年 踏ん張ろうよ!

 歌を聞き雑文を書く作業は、僕の場合「いいとこ捜し」である。歌手も作家も制作者やお抱え主も、あらかた顔見知り。皆が一生懸命なのだから、アラ捜しは本意ではないし、生産的じゃない。しかしこのところ、そのいいとこ捜しも、とかく細部に陥るうらみが残る。
 長いこと「アッと言わせる」新聞づくりをした。意表を衝くのだが奇をてらうことは避ける。快い刺激から応分の説得力へ、目指すのは完成度だ。新機軸捜しのそんな僕の了見は、歌社会でこのところずっと刺激飢餓状態にある。

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蓬莱橋

作詞:さわだすずこ
作曲:弦哲也
唄:山本譲二

「誰? これ...」と思うくらいの歌い出しである。傷心の女性のひとりごとを、山本譲二が優しげに語る。いつもの男っぽさや不良性好感度を、すっかり棚に上げている。
 ワンコーラス九行の詞に、歌い込まれているのは「悔恨」「未練」「自省」の思いだ。その静かさが、激情を抑制してのものと、やがて判る。最後の一行にそれが顕著だが、弦哲也の曲はこの辺で、引き絞った矢を放つように、譲二の歌を解放した。  蓬莱橋は静岡にある世界最長897・4メートルの木造歩道橋で、ギネス認定ものだそうな。

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哀しみ桟橋

作詞:麻こよみ
作曲:鈴木淳
唄:椎名佐千子

 情感を維持し、濃いめに育てて行くのに必要な一つは〝歌う語尾〟の処理だと思っている。歌詞でいえば各行のしっぽ。ここにしっかり思いを込めれば、情感は次の行の頭につながって増幅される。歌声が終わった空白にも、思いは込められていたいのが演歌系の仕立て方で、そこが歌い流し気味になるポップスとの相違点ではなかろうか。
 鼻にかかる声でサビあたり、椎名の歌は情感いい感じにせり上がる。大人の歌手になった...とは思うが、歌の語尾にもう一つ押しがあれば、サビの山はもっと高くなったろう。

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雪の宿

作詞:幸田りえ
作曲:幸斉たけし
唄:新沼謙治

 デビューのころ、 この人の歌を阿久悠が「気持良く哀しい」と語ったのを思い出した。その持ち前の味は今も変わらず、今回はそれにムード歌謡ふう発声の艶を加えた。感情移入重めは性に合わぬこの人の、活路の探し方。こざっぱりした肌ざわりで、少し哀しめだ。

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冬の蛍

作詞:伊藤美和
作曲:徳久広司
唄:花咲ゆき美

 都会をひとりさまよう女心を、冬蛍に擬して歌う。そのせいか、花咲は声をかぼそげに抑えて、すうっと歌う。一筆書きの絵みたいで、歌の流れに淀みがない。歌詞のひとつずつにつかまらずに、歌を大局的に捉えたせいか。この人なりの味、なかなかである。

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人生横丁

作詞:仁井谷俊也
作曲:大泉逸郎
唄:大泉逸郎

 惹句に「大泉逸郎が歌う大衆のこころ」とある。裏町横丁の酒場うた、故郷を離れっぱなしの苦渋を、猪口に注いで飲むのが主人公だ。どうやらこの人の〝大衆のこころ〟は昭和三十年代ふう。本人が書いた曲にもそんな匂いが強い。歌も少々、枯れて来たかな。

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風花しぐれ

作詞:石原信一
作曲:弦哲也
唄:青木美保

 石原信一の詞が、 いろんなことを書き込んで各コーラス七行。それを弦哲也がほど良くまとめた曲にした。編曲はいかにもいかにも...の桜庭伸幸。仕掛け多めの作品を、あおられながら青木が歌い、彼女流に着地した。この努力はいつか、報われるだろう。

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恋しずく

作詞:佐野源左衛門一文
作曲:叶弦大
唄:竹川美子

 叶弦大の曲は、笹みどりに書いたころの流れか...と連想する。一途な想いをひたひたという感触で、竹川の幼な声に似合った。ふと途切れかかるように、はかなげな小節回しも板について、歌心がしなった。叶は竹川にいろんな曲を与えて来たが、この辺が本線かな。

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茨の木

作詞:さだまさし
作曲: さだまさし
唄:小林幸子

 今年一番のお騒がせをしたこの人の再出発第一弾。言い分はどちらに...はともかく、金がからんでの仲間割れは、すっきりしない。そこを押し切る思いが、タイトルにも歌詞にもあって、耐え抜く心情ソング。虚実ないまぜて、さだまさしの詞、曲はなかなかなものだ。

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港のセレナーデ

作詞:星川裕二
作曲:杉本眞人
唄:チェウニ

 一九九〇年代に、二人の歌手で出した曲のリメイク。カラオケ族に歌い継がれているのが利点と見たか。都会的なタッチ、ひたむきな女心、ほどの良い哀切感...と、たしかにチェウニには似合いだ。作曲・杉本眞人ら一統には、これの上を行く新作を期待したいが...。

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マゼンダの黄昏に

作詞:城岡れい
作曲:弦哲也
唄:北原ミレイ

 弦哲也のポップス寄り展開、矢野立美のアレンジはシャンソン・テイスト。北原ミレイの歌づくりは、このところそんな路線が主で、本人も委細承知の歌唱を聞かせる。タイトルからしてそれらしい作詞は城岡れい。おどかした割に、底が浅いうらみが残った。

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