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2012年5月のマンスリーニュース

2012年07月14日更新

意表の衝き方も船村流か

 船村徹・北島三郎師弟の、久々の顔合わせ。それも北島のこの道五〇年作品...と来れば、出来上がりを待つこちらも、知らず知らずに相当に力が入っていた。そこへひょこっと、四行詞もの『職人』である。師弟名勝負ふうな大作を期待した当方は、あっさりはぐらかされた気分になる。しかし...。
 四行詞作品は、流行歌の原点であり、原型である。「そこのところをな。もう一度な...」とニヤリとする船村の顔が見えるような気もした。四行の詞にこれだけ彼流のメロディー、一見地味だが〝匠の技〟であることにも気がついた。

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人生ふたり咲き

作詞:仁井谷俊也
作曲:岡千秋
唄:岡 ゆう子

 歌手にぴったりと「はまる」作品が生まれることがある。訴求力なかなかに、まっすぐ聞く側に届く仕上がり。「ほほう!」と目を細めて、さて、作品のどこがはまりの要素なのか考える。
 この作品の詞は仁井谷俊也、目新しさこそないが、歌い出し二行で決めにかかるなど、歯切れがいい。それに岡千秋がアクが強めのメロをつけ、ズンズンズン...と、以後の展開もいかにも岡らしい。そんなせり上がり方に、歌う岡の感情移入が、ごく自然に重なった。ベテランの歌にある生活感まで生きて、二人の岡のメリハリの波長が合った。

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迷い月

作詞:麻こよみ
作曲:田久保真見
唄:四方章人

 美声を持つ歌手は、どうしても声に頼りがちになる。それはそうだろう。自他ともに許す魅力ならば、それを売りにしたくなるのも無理はない。
 そんな〝二枚目ボイス〟に、田久保真見が男の自問自答の詞を書いた。逢おうか、やめようか、別れることが優しさなのか、離さないのはわがままなのか...。情感、内向きになるのに、四方章人の曲は彼らしく穏やか。歌うよりは語るべき作品になって、藤原の声の誇示は八分目に止まった。美声も結局は、歌を伝える道具の一つと気がついてのことか?

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瀬戸内しぐれ

作詞:たきのえいじ
作曲:水森英夫
唄:西方裕之

 西方の「歌のタッチ」が変わった。歌い出しから手触りがソフトだ。この部分、声を響かせて歌い回したら、おそらく歌は重いものになる。それを避けておいてサビあたり、決めるところは決める一点集中作戦。西方のキャリアを生かして、歌の奥行きの作り方だろうか?

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霧雨情話

作詞:たかたかし
作曲:弦哲也
唄:松原のぶえ

 海峡シリーズの三作め。松原は全体を、線が細めの歌に仕上げた。ファルセットで聞かせ、そのあとさきの中、低音も太めに響かせぬバランスの取り方。歌のヒロインの姿形をそういうふうに聞かせたかったのか。竜崎孝路の編曲は、音でドラマの額縁を作った。

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たんぽぽの花

作詞:たかたかし
作曲:市川昭介
唄:都はるみ

 今年七回忌の市川昭介の遺作に、たかたかしが詞をつけた。市井の二人のささやかな幸せを、たんぽぽに託した相惚れソング。はるみ唱法に合わせてのたんぽぽか、花が花だけに唱法がそうなるのか、思いをすぼめ、声をしぼり、息づかいで聞かせる歌になった。

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俺の夕焼け

作詞:石森ひろゆき
作曲:大谷明裕
唄:小金沢昇司

 団塊世代の鬱屈や悔恨の、背中を叩き励ます歌。小金沢が胸中に残る夕焼けの色を歌う。石森ひろゆきの長めの詞に、大谷明裕が緊張途切れぬ曲をつけた。吉田拓郎やアリスのころを連想させるタイプの作品。そう言やあれは、団塊世代の青春ソングだった...。

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江差情歌

作詞:つつみりゅうじ
作曲:弦哲也
唄:音羽しのぶ

 冬の漁師町の舟唄である。音羽のくぐもりがちな声が、時化る海や凍れる人々の思いを語る。それがそのままでは暗過ぎるのを、「ハア~」から一転、サビが春を待つ気分へ展開した。音羽の声味を二通りに使ってみせたのは、作曲・弦哲也の知恵だろうか。

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赤坂レイニーブルー

作詞:田久保真見
作曲:樋口義高
唄:チャン・ウンスク

 初めての3コーラスソングだと言う。日本で一七年、ずっとトゥーハーフの作品を歌って来たということか。身上のハスキーボイスを三連のブルースで決める作品。田久保真見の詞、樋口義高の曲は、たたみ込む勢いよりは、肉感的にゆする感触を狙ったようだ。

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女の階段

作詞:仁井谷俊也
作曲:岡千秋
唄:小桜舞子

 岡千秋のメロディーは、幹が太い樹のようだ。ゴツゴツした手触りで、独特の訴求力を持つ。容姿もそうだが小桜の歌は、こじんまりと情の細やかさが身上。そんな二人の組み合わせは、岡の曲を小桜がよじのぼるように聞こえる。ミスマッチの面白さだろうか。

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うちわ

作詞:辻哲二
作曲:桧原さとし
唄:大石まどか

 死別した彼への思いを、夏の風景の中で語る女心ソング。小道具はうちわや打ち上げ花火だ。話し言葉の詞にたんたんとしたメロディーは、ひところのフォークソングふう。シンプルな水彩画みたいに仕立てるのが、大石の役割となった。彼女二一年めの挑戦である。

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職人

作詞:原文彦
作曲:船村徹
唄:北島三郎

 六月五日、デビューの日時に合わせた五〇周年記念ソング。師匠の船村徹が四行詞相手に、彼ならではの曲を書いた。起伏の幅大きめでたっぷりめの展開、さりげなく聞こえるが、これがなかなかのものを、北島は委細承知...の歌にした。軽めにこなして味で勝負だ。

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楽園

作詞:田久保真見
作曲:若草恵
唄:瀬口侑希

 歌書きとしての若草恵は、いろんな夢を持ち、それを形にしようと、やや性急なところがある。歌謡曲を彼なりの音楽性で満たそうとする気配で、これもその一曲。歌う瀬口は、おとなの女の媚態まで垣間見せなければ...と、相当な踏んばり方を示した。

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