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2013年12月のマンスリーニュース

2014年05月27日更新

歌の消耗品化を止めるためにも

 ことさらに歌詞には、作詞者の苦吟の気配を見たい。推敲の跡を感じたい。それが完成度の一つの目安だ。具体的に書けば、独自の着想、展開と省略、含蓄や詰めにいたる言葉選びなんてあたりか。
 今回の十曲には、志賀大介、吉田旺、高田ひろお、いではく、もず唱平らベテランの作品が並び、その色が濃い。それぞれ独特の視線、年季ものの表現、負けん気と技を持つ手練者。制作者の手詰まりで指名の側面もあろうが、彼らの改めての登壇を喜びたい。

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祇園のおんな

作詞:高田ひろお
作曲:弦 哲也
唄:
川中美幸

 「柳芽をふく 石畳」「夏は宵山 大文字」「霧にかすんだ 花灯路」と。五行詞スリーコーラスの最初の一行がさりげない。そこで景色を見せておいて、京都祇園の女性のおもてなしの心を語る。流行語を取り入れながら、コミカルにはしない筆致で、作詞の高田ひろおが、情のこまやかさを示す。近ごろ見かけない、推敲の気配が頼もしい。
 作曲・弦哲也がこれまた情の歌書き。そうと来れば川中の歌唱も、息づかいをまじえて表現がこまやかになる。三者それぞれに、抑制の妙を利かせた一曲と言えようか。

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人道

作詞:いではく
作曲:原 譲二
唄:
北島三郎

 こちらはいではくの詞。「義理だ恩だは古いと笑う」とか「花が咲くには助けがいるさ」とか「受けたご恩は世間に返す」とかのフレーズを、各コーラスの頭におく。バサッと切り込んで来る任侠もの路線ふう。それを「持ちつ持たれつ生かされ生きる」人生感慨ソングにするのがこの作詞家の腕か。
 作曲・原譲二、歌・北島三郎の二役は、それを小気味のいいやくざ歌調に仕立て直した。二つの要素を足して二で割ったあたりがミソで、前面に出るのは小市民の誠心誠意の生き方。そんな処理が、今日ふうなのかも知れない。

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伊豆の国

作詞:荒木とよひさ
作曲:南郷 孝
唄:
五木ひろし

 女ごころソングなら、内股で歌う。そんな作品への入り方が、五木流だ。歌のフレージング、吐く息吸う息で情感を作ってサビあたり、声も思いも抑えたうえで突く唱法がいかにもいかにもだ。五木用の作曲コンテストを制した南郷孝の曲。彼にも本望の仕上がりだろう

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からたちの小径

作詞:喜多篠 忠
作曲:南 こうせつ
唄:
島倉千代子

 死の三日前の吹き込みと、みんながニュースで知っている作品。息の途切れ方や歌い伸ばしの揺れ方からどうしても、そんな状態が伝わる。そのくせ歌は、彼女らしいけなげさと明るさではずむ。「玉砕」したんだ、この人は...と、僕は彼女の「覚悟」のほどを聞いた。

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男の酒場

作詞:田久保真見
作曲:岡 千秋
唄:西方裕之

 「さむい夜更けの盃に 男は夢をうかべ呑む 女は命をしずめ呑む」という、歌い出しの三行で、この歌は決まりだ。田久保真見版の男心ソングと見紛うが、後半の三行でそんな男を見守る女心に逆転、タイトルも腑に落ちる。伍代の・その気・も歌の節々に出ている。

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修善寺の宿

作詞:仁井谷俊也
作曲:山崎剛昭
唄:
鏡 五郎

 五木ひろしの歌への入り方は、彼の項で書いた。似たような伊豆湯の宿の女心ソングでも、鏡は少し距離を置き、おハナシとして伝えようとする。結果、聞こえて来るのは、主人公の心情よりも、彼の口説、芸の差し引き。そこのところが鏡流の個性なのだろう。

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哀愁線リアス

作詞:もず昌平
作曲:聖川 湧
唄:
成世昌平

 春のリアス線界わい「もう聴くこともないでしょう 土地の浜唄 鴎の噂」と、これは作詞家もず唱平の3・11挽歌。それを挽歌に止めず、復興への希望に聞かすのが、この人のココロか。宮古に残る浪花言葉で歌を結んだりして、北前船の昔までを偲ばせる。

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勝負坂

作詞:志賀大介
作曲:徳久広司
唄:
永井裕子

 ワンコーラスめの歌詞五行で、この歌の精神は言い切れている。掛け言葉重ね言葉を多用、この種の詞の書き手はまだ健在!を示したのが志賀大介。ツボを心得た徳久広司の曲、やや大仰にそれふうな南郷達也の編曲で、こんなタイプが・はまり・の永井が元気唱だ。

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海峡しぐれ

作詞:原 譲二
作曲:
原 譲二
唄:
藤 あや子

 五行詞の四行分は演歌、サビの一行分を民謡調で決めて、あとさきはこぶしコロコロ。作詞作曲の原譲二が、藤の歌い手としての"いいとこどり"をして見せた。決して北島節ののれん分けに止まらぬ才腕で、藤も別嬪歌手に止まらぬ人であることを示した。