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2013年3月のマンスリーニュース

2013年06月01日更新

大石、冠の冒険をよしとする

 歌手がそれまでのイメージをがらりと変える。新境地開拓である。売れ線を離れてでも、頑張ってみたい時期が来たのか、それにふさわしい作品が出来たせいか。結果「歌っているのは誰?」という意表の衝き方が生まれる。聞く側の反応は聞き手任せだが、いい方向へ転がるように...の祈りが、その陰にあろう。今回で言えば大石まどか、冠二郎の作品にそんな試みが顕著だ。冒険は時に流行歌の流れを変える可能性を持つ。二作品の今後を見守りたい。

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春一夜

作詞:さいとう大三
作曲:四方章人
唄:大石まどか

 一番に桜、二番に蝶、三番に月をあしらった詞が、惹句に言う「密かな情念、仄かな描写」を指す。古風な情景を水彩画三枚みたいに描いたのは、久しぶりにさいとう大三。それを四方章人が穏やかな味のワルツに仕立て、蔦将包の編曲もなかなか...である。
 歌っているのは誰?と、聴き耳をたてさせる大石は、相当な変わり身と熟し方を示す。抑えた歌唱で情感を維持した二行のあと、サビの盛り上がりで思いのたけを外向けに開き、歌い納めの昂揚は、その思いを内省気味に表現した。四者四様、いい仕事ぶりだ。

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湯の町月夜

作詞:仁井谷俊也
作曲:原譲二
唄:大川栄策

『湯の町エレジー』を元祖としたら、この種〝湯の町もの〟はもう何百曲作られたろう? 男の未練がテーマなのも定石通りだが、今回は仁井谷俊也がソツのない筆致の詞にして、曲は原譲二。大川の哀感ねばっこい高音をうまく生かしている。
 原はおなじみ北島三郎の筆名。自作自演だけでなく、大勢の歌手に〝北島節〟の暖簾分けをして来た。それが今回は、大川の声味とツボを心得た曲づくりで、市川昭介か?と思うくらいに、大川の味を優先した気配がある。頼んだ大川は、してやったり!だろう。

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勘太郎笠

作詞:久仁京介
作曲:原譲二
唄:北島三郎

 その北島は、東京、大阪、博多でやる長期公演「伊那の勘太郎・信州ひとり旅」の主題歌で、のびのびマイペースの自作自演だ。股旅ものだが、主人公の粋がり方を避け、流れ者の哀愁に軸足を置いた詞は久仁京介。北島の、年相応の苦渋が、前面に出ている。

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女のかがり火

作詞:喜多條忠
作曲:大沢浄二
唄:大月みやこ

 六行詞の前半三行で女主人公の内面を語り、後半三行で各節それぞれ「鞍馬山」「長良川」「厳島」のかがり火を見せる。作詞・喜多條忠のアイデアの、前後半の変わりめ、一番で言えば「あれは」の箇所で、きっちり気分を変える曲は、ベテラン大沢浄二ならではの腕前か。

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伊勢めぐり

作詞:田久保真見
作曲:弦哲也
唄:水森かおり

 作詞の田久保真見に言わせれば、哀しみも月日が経てば「愛は真珠になる」そうな。夢が木の葉のように手をすり抜けるなど、何とか自分らしいフレーズを...という苦心のあとが見える。弦哲也の曲と水森の歌は、シリーズの色あいを踏襲して〝まとも〟だ。

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孤独の川

作詞:三浦康照
作曲:小野彩
唄:冠 二郎

 はなから狙ったのか、詞の書き出し「友と語らん 春の宵...」に触発されたのか。小野彩の曲が吉田拓郎ふうフォークタッチで意外性を作る。三浦康照も思い切ったものだが、お陰で冠の、やんちゃ節が影をひそめた。四五周年三つめの記念曲らしさと言うべきか。

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炎の川

作詞:菅麻貴子
作曲:岡千秋
唄:服部浩子

 タイトルの「炎」 を「ひ」と読ませる。いにしえの文学の「雅」と「和」を流行歌に置き替えるという企画を、詞の菅麻貴子、曲の岡千秋、歌の服部が踏ん張った。その志は大いに多とするが、さて、前置き抜きで聴いた場合、そんな思いがすべらずに届くかどうか?

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恋めぐり

作詞:槙桜子
作曲: 徳久広司
唄:浜 博也

 浜の〝ひとりムード歌謡〟は、いつもながらなかなかのもの。それらしいノリ、はきはきした口調、抑えながら張る高音の艶っぽさで、歌謡コーラスの魅力を晴れ晴れと聞かせる。それを生かしたのは作詞・槙桜子の女名前ごっこと、徳久広司の曲だろう。

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北のとまり木

作詞:仁井谷俊也
作曲:徳久広治
唄:岩出和也

 こちらもムード歌謡で、曲も徳久広司。詞が仁井谷俊也で、舞台は港町、主人公は過去を背負った女、視線は居合わせた男のもの。そんな設定が手伝うのかどうか、岩出の発声と発音は二枚目気分が強い。その分だけ晴れ晴れとした〝抜け〟と活力が乏しかった。

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嘘の花

作詞:麻こよみ
作曲:水森英夫
唄:長保有紀

 昔なら西田佐知子とか藤圭子とかに似合いそうな曲調。なげやりな女心ものだが、西田ほど捨てず、藤ほど居直らず、肩をすくめる程の良さが長保の魅力になっている。詞が終始〝女の繰り言〟なのを、長保が独特の声味と歌唱で、うまく物語にした。

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そして...湯の宿

作詞:池田充男
作曲:岡千秋
唄:永井裕子

 詞の歌いだし「遠い波音...」を「遠い 遠い波音...」と、重ねたのは岡千秋の作為。ここではずみをつけ、高音のメロディーで一気に決めたかったのだろう。永井の力量を前面に出すアイデア。あとは池田充男の詞なりで、永井の愁い声に任せたろうか?

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恋文しぐれ

作詞:麻こよみ
作曲:伊藤雪彦
唄:三代沙也可

 古い恋文の男文字をなぞり、未練を捨て切れずに居る女唄。果たせなかった駆け落ちが唯一の物語のアヤを作る。麻こよみの詞、伊藤雪彦の曲で、三代は彼の愛弟子。歌づくりもずっと一緒...の呼吸が合う。納めの一行の途中、少々間をあけたのがアクセントになった。

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