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2014年2月のマンスリーニュース

2014年06月17日更新

歌の入り口・出口・手口

 歌に大事なのは「入り口」で、それがきっぱり決まれば「出口」はおおよそ納まる。欲を言えばその間にある「手口」かもねえ...と、これは昔、美空ひばりとかわした世間話。
 詞で言えば今回『居酒屋「津軽」』を書いた内藤綾子が出色。おなじみの設定の酒場歌を、入り口の2行で独自のものにした。呻唸のうえの狙い撃ちだろうか。水田竜子に『平戸雨情』を歌わせた水森英夫は「入り口」から「出口」まで一気!だし、城之内早苗の『白鷺の宿』を書いた弦哲也、歌手に「手口」まで用意した気配が面白かった。

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居酒屋「津軽」

作詞:内藤綾子
作曲:
西 つよし
唄:
大石まどか

 内藤綾子という作詞家が、各コーラスの歌い出し2行で意表を衝く。一風変わった酒場歌で、涙も愚痴も買って釣り銭は出さない。居酒屋のおかみの言い分だが、別に勘定高い訳ではなく、思いやりをそう表現するところがミソ。津軽訛りのじょっぱり女を、色恋抜き、ざっくばらんの主人公にしたのが、この人の苦心のあとだ。
 西つよしがひなびた味の曲をつけ、大石の歌も、そんな女のたたずまいを巧まずに歌った。この人も大分世慣れて、幅を広げて来てこその歌処理で、そんな年かっこうの歌手になったのだと合点した。

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雪国列車

作詞:坂口照幸
作曲:スガアキラ
唄:
川崎修二

 確か名古屋あたりの居酒屋で、この人のポスターを見た記憶がある。いろんな土地で頑張っている人が多いのだ!と、妙にしみじみとした。長いこと流行歌評判屋をやっているが、そういう人たちまでカバーし切れていない努力不足に思い当たったものだ。
 デビュー10周年と聞く。居ずまいを正して聞いたが、歌声に残る初心に「ほほう!」になった。温かみのあるせいせいとした声で歌に崩れも押しつけがましさもない。淡々とマイペースの歌表現で、強い個性を作ろうとしないところが、この人の個性なのだろう。

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大利根ながれ月

作詞:松井由利夫
作曲:水森英夫
唄:
氷川きよし

 デビュー当初の股旅ものへ戻る。15周年記念曲で、初心を思い返す意図もあろう。作詞松井由利夫、作曲水森英夫コンビも以前のまま。しかし、平手造酒を歌って内容はグンとおとな。語り口に三波春夫を思わせる派手さと深みがあり、氷川の成熟ぶりが見えた。

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夕子のお店

作詞:たかたかし
作曲:弦 哲也
唄:
増位山太志郎

 増位山は大相撲を卒業、歌手活動に今後を賭ける。題材はかつてのヒット・夕子もの・の続編で、江東区の門前仲町を舞台に、いい気分そうに歌う。作曲弦哲也がツボを抑えたムード歌謡仕立て。作詞たかたかしが遠くなった昭和を書いたのは、彼の実感か。

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白鷺の宿

作詞:喜多篠 忠
作曲:弦 哲也
唄:
城之内早苗

 よく聞けば、妖艶の女の凄みを描く詞は喜多條忠。それ相応の曲を書いた弦哲也が、城之内なりの歌処理を考えた凄み気配。各コーラスの歌詞2行目の・言葉の置き方・やサビの声の張り方などに、そのあとが見える。結果、歌の主人公が今風にこざっぱりした。

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平戸雨情

作詞:水木れいじ
作曲:水森英夫
唄:
水田竜子

 前奏でサックスが鳴る。この歌手でそのテを狙うか...と、こちらはニヤリとする。3連のブルース歌謡、水原弘やクールファイブを連想させる昭和テイストだ。ビブラート荒めに、のしかかって来る勢いの歌唱。声をしっかり出して、水田が精一杯頑張っている。

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おんなの酒

作詞:さいとう大三
作曲:叶 弦大
唄:
若山かずさ

 もともと薄めの声の人だが、それを芯に当てて力みも張りもせず、情緒ひと色の歌に仕立てた。すうっと一筆書きの絵みたいに破綻がなく、居酒屋の女の心情が切なげではかなげだ。聞けば聞くほど沁みて来るタイプ。地味だが、この人のキャリアが生きた歌か。

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知床情話

作詞:池田充男
作曲:中村典正
唄:
松前ひろ子

 メロディーに軸足を置いて、歌い回すことで独自の色を作る歌手。夫唱婦随かその逆か、作曲中村典正との夫婦コンビらしい作品だ。歌手生活45周年の記念曲、いろいろあった年月がしのばれる歌を「死ぬ気で生きたネオン街」と作詞の池田充男が言い切った。

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人世舟(ひとよぶね)

作詞:仁井谷俊也
作曲:岡 千秋
唄:
小桜舞子

 いかにも岡千秋らしい曲。何作か重ねたせいか、小桜の語り口にまで、岡ふうになってほほえましい。作曲家には惚れこんでいる気配があり、歌手にはその期待に応えようとする気配がある。それが憂き世を、背伸びしながら生きようとする主人公の姿に通じた。

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おんなの夜明け~第二章~

作詞:水木れいじ
作曲:叶 弦大
唄:
竹川美子

 "歌わせ歌"と"聞かせ歌"の二種があるとする。もともと叶弦大は、前者を狙うことの多い作曲家だろう。それが竹川には、時に後者の曲を書く。今回もツーハーフの大きめのメロディーで、愛弟子を大きく育てたい愛情のほどが伝わって来た。竹川も一生懸命だ。