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2014年6月のマンスリーニュース

2014年09月16日更新

"いい作品再発掘"の陰の懸念

 五木ひろしが3月に「桜貝」を出して、今月は細川たかしが「女の十字路」である。たまたま福田こうへいのレッスン用テープ「風やまず」は三度目のお目見得。いずれも旧作の再発掘だ。
 歌手にぴったり"はまりの作品"は、そうそう出来るものではない。ご時世にはまるかとなるとなおむずかしい。だから「いい作品を再び」の試みは、それなりの意味があって悪くはない。しかしその陰に、ステレオタイプの作品への疑義がありはしないか? 歌手が飽きる前にファンが飽きる。痩せて久しいのは歌詞で、巻き返しを切望する所以だ。

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涙しぐれ

作詞:田久保真見
作曲:岡 千秋
唄:
原田悠里

 「俺、ここんとこ、ずいぶん書いてるヨ」恒例の北海道・鹿部の旅で、相変わらずの深酒の岡千秋が、チョビひげそよがせて言う。「判ってる、聴いてるヨ」と、僕の返事はそっけないが、ココロは理解と激励のつもり...。
 この作品もその一つ。原田の声味を生かして、曲の細部にまで気配りがある。このところ演歌も書き慣れて来た田久保真見の詞は、歌い出し2行で決めたい気配。歌い納め前の1行が「あいたくて、あいたくて」と他愛がないのが逆に気分のいい隙間になって、原田の歌のヘソを作った。

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ネオン舟

作詞:仁井谷俊也
作曲:水森英夫
唄:
池田輝郎

 仁井谷俊也の詞は、各コーラス歌い出しの2行で一番が男の生き方、二番が長崎の景色、三番が人の情と書き分け、これがそれぞれ歌の前置きになる。中身は何?と言えば、不遇の男の未練とボヤキなのだが...
 それを水森英夫の曲も池田の歌も、屈託のかげりもなしに、のびのびと行く。声味と開放的気分を重視した歌づくりだから、余分な感情移入など邪魔とでも言いたげだ。その昔、春日八郎も三橋美智也も、こういうふうに詩と曲の持ち味を率直に歌声に乗せた。結果、情感が大づかみの、おおらかさがあった。

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風やまず

作詞:久仁京介
作曲:徳久広司
唄:
福田こうへい

 西方裕之のカップリング曲だったのを、福田が「南部蝉しぐれ」のカップリングにして、今度はレッスン用というおつとめ曲。久仁京介の詞が東北男の心意気を力みかげんに書いたのを、徳久広司が面白い曲に仕立てた。一部に村田英雄を思い出す浪曲調。それを福田が民謡調でこなして組み合わせの妙が生きる。西方よりは似合いの線になったろうか?

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女の十字路~あなたに迷いそうな夜~

作詞:中山大三郎
作曲:浜 圭介
唄:
細川たかし

 昭和51年に出した曲の新録音だという。31年も前で、作詞した中山大三郎はとうに亡い。それがさして古く感じられないのは演歌ならではの現象と、浜圭介の曲の粘着性とたたみ込む覇気。高っ調子でガンガン行く細川の魅力にぴったりだから、彼が歌いたがるのもよく判る。聴いているこちらに残るのは生理的快感で、詞の女心の切なさなど吹っ飛んだ。

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女 いのち川

作詞:麻 こよみ
作曲:岡 千秋
唄:
北野まち子

 麻こよみの6行詞女心ソング。岡千秋の曲が歌い出し2行分からソツなく繊細で、北野の歌を気分よくリードする。歌詞5行めの字あまり5字分も、うまいこと乗り切って、歌を納まるところへ納めた。メロディーにはえてして、次へ行くためのブリッジ部分がありがちで興醒めするが、それがない。岡が頑張ってるヨと言い募るのも判るな。

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おまえの子守歌

作詞:槙 桜子
作曲:岡 千秋
唄:
浜 博也

 連絡船ものみたいな前奏(編曲伊戸のりお)に気分よく乗せられる男の未練唄。惹句が「たっぷり歌えるスタンダード演歌」なのは、料理法では、どんなタイプの歌にもなるということか。これも岡のムード派っぽい曲を、浜が声を抑えめに、そのくせしっかりと彫りが深めの歌にした。元来歌謡コーラスのリードボーカルは、突出しない巧さを持つ証だ。