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2015年11月のマンスリーニュース

2016年01月25日更新

それはそれで、時代の反映なのか?

 昨今の世情、そうそう明るく軽めでは決してない。だからと言って深刻に眉を寄せて、重めの表現もうっとおしいのか。例えば安保関連法に反対する若者たちのデモ。あれは60年や70年の安保闘争とは隔世の感がある手法だが、事態をしっかり捉えた危機感が芯にあるから長く続くのだろう。歌書きたちもそんな時代を、理屈ではなく皮膚感覚的に捉えていそうで、作る流行歌が軽めに歌い流すタイプが多い。みんな、強くなる時代のキナ臭さに、うんざりしているのかも知れない。

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霧島の宿

作詞:坂口照幸
作曲:水森英夫
唄:
水田竜子

 坂口照幸の詞は、絵葉書みたいに景色を見せる。ちりばめてあるのは日豊本線、薩摩路、霧島連山、天降川などのご当地名。置き手紙を読んだ男が、追って来るのか来ないのか、女主人公が気をもむ歌なのだが。 結局彼は来ずに、彼女はあきらめるのだが、その間の心情に深入りはしない。深刻な重さを避けて、軽めに納める趣向は、水森英夫の曲にも共通している。歌詞を変えれば氷川きよしにも似合いそうな股旅調。それを水田竜子がのびのび、のうのうと歌う。昔は情緒てんめんだった湯の町ものも、大分様変わりした。

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おちょこ鶴

作詞:内田りま
作曲:みちあゆむ
唄:
城之内早苗

 箸袋で折った鶴を、ちょこに並べて好いた男を待つ女の酒場ソング。内田りまの思いつきが主人公のいじらしさを前面に出す。6行詞の気持ち長めなのを4行めと5行めをうまくまとめたみちあゆむの曲が、5行詞の気分のよさに仕立てた。城之内早苗は歌にそれらしい"口調"を作り、主人公のイメージを具体的にする。ちょっとしたアイデアソングだ。

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十勝望郷歌

作詞:円香乃
作曲:岡千秋
唄:
戸川よし乃

 戸川よし乃の歌はずっと、岡千秋が曲を書いている。あれこれ工夫しながら、彼流の冒険をしていることが目立つ。今回は8行詞の頭3行、静かだが味のある起伏がきれいで、戸川の歌味を聴かせる。歌声がしっくり練れて来ていて、次の3行分で心開いていくさまも、うまく生かした。2ハーフ、骨格は大作の曲だが、大きく構えない歌わせ方がいい。

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愛は海

作詞:高畠じゅん子
作曲:小田純平
唄:
木下結子

 愛にもがき、おぼれていく女心の詞は高畠じゅん子の2ハーフ。それをヨーロッパ風味の歌謡曲にしたのは、作曲の小田純平と編曲の矢田部正で、快い哀愁を生んだ。木下結子の歌は多少の倦怠感をにじませながら、おとなの味つけ。「ノラ」の創唱者、ヒットの手柄は門倉有希にさらわれたが、その後の精進を加えて、この人は独自の歌世界を作っている。

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港のリリー

作詞:下地亜記子
作曲:樋口義高
唄:
北原ミレイ

 セピア色の波止場町の夕暮れを背景に、鴎と泣き濡れる港のリリーの立ち姿が、目に見えるようだ。下地亜記子の詞、樋口義高の曲、馬飼野俊一の編曲という顔ぶれが、ミレイに似合いの歌を作った。地味だが息の長いヒットをいくつか続けて、ミレイの歌唱にはそれなりの自信が匂う。この人の魅力は物語を語る表現力だと、改めて合点した。