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2016年3月のマンスリーニュース

2017年05月02日更新

君はM型で行くかW型か?

 演歌のメロディーは大別して、M型とW型がある。M型は歌い出しをなだらかに出てサビの高音で決めるオーソドックス・スタイル。W型は歌い出しを高音で出るから、サビと歌い収めにまた高音部が出て来る。作品のインパクト、訴求力はこちらの方が断然強くなるが、曲の流れに無理が生じる危険がある。今回の13作のうち、W型は坂本冬美の『北の海峡』大川栄策の『みれん舟』上杉香緒里の『手鏡』島津亜矢の『阿吽の花』あたり。他と聞き較べてみるのも一興だろう。

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土佐女房

作詞:石本美由起
作曲:叶弦大
唄:
中村美律子

 石本美由起の遺作。実にこの人の詞らしく、すっきりと漁師の女房の心のうちを描く。特段の技は用いない平易さが、実はこの人の技。一行にほぼ一つ、要所に配置された単語が、舞台の土佐、そこに生きる人々の営みから待つ女の気性までを伝え、情感を濃いめにするキィワードになっている。読み返せば、推敲の跡歴然なのだ。
 叶弦大の曲は、そんな詞の色あいに添った。南郷達也の編曲が、それを芝居がかった仕立てにした。中村美律子はのびのびと歌う。二番など、主人公の笑顔が見えた気がした。

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北の海峡

作詞:たかたかし
作曲:岡千秋
唄:
坂本冬美

 どんなタイプの曲を歌っても、ちゃんと冬美の歌になるのが、この人の特色。それが久しぶりの演歌で、いかにもいかにも...の唱法を作っているのが面白い。声の揺らせ方や、言葉を粒立てる唇の使い方にそれが表れていて、歌うことを楽しんでいる気配がある。

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みれん舟

作詞:秋浩二
作曲:筑紫竜平
唄:
大川栄策

 秋浩二の詞に筑紫竜平が曲をつけた。筑紫はご存知大川のペンネームで、この人は時おり演歌のシンガーソングライターになる。自分の魅力は高音部にあると熟知しているから、歌い出しから高音を多用、彼らしい切ながり方を聞かせて、どや顔まで見えた。

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化粧なおし

作詞:たきのえいじ
作曲:杉本眞人
唄:
石原詢子

 杉本眞人の曲には、いつも彼らしい"口調"がある。歌手はそれに添うのか否かの選択を迫られるが、石原詢子は自分流の歌唱に引きつけようとした。彼女らしい挑戦といっていい。長いこと墨絵ぼかしめいていたたきのえいじの詞に、色彩が生まれて、いい。

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雪哭き津軽

作詞:近藤しげる
作曲:井上慎之介
唄:
清水まり子

 その後どうしているのか?と思っていた清水まり子の歌に、久々に出会った。津軽三味線をお供に、やや力みかげんの歌で、歌詞の最後の行は、唸ったりしている。代表作に持つ『父娘坂』を追う企画の詞と曲で、夢よもう一度!の思いが透けて見える一作だ。

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手鏡

作詞:麻こよみ
作曲:徳久広司
唄:
上杉香緒里

 手鏡が二つに割れて、歌の女主人公は男との別れをかみしめている。一番から三番まで手鏡にこだわり続けた麻こよみの詞は、その枠組の中で何とか展開を試みる。そんなこだわりが、上杉の歌を諦め色にするが、深刻にならずに済ませたのは、温かめの声味か。

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阿吽の花

作詞:久仁京介
作曲:村沢良介
唄:
島津亜矢

 独特のレトリックの詞は久仁京介。それに村沢良介が彼らしい曲をつけて、ベテラン2人の年の功の作品。島津亜矢はそれをすっきりと、一筆書きの絵みたいに歌った。大器と呼ばれて久しい彼女はこのところ、強い声と語気をそぎ落として、それなりの成熟を示している。

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紀ノ川旅情

作詞:助田ひさお
作曲:佐々木雄喜
唄:
千葉一夫

 失意の女主人公を旅先の風景の中に立たせて、詞も曲も歌もいわば定石どおり。ことに千葉一夫の歌唱は、長いこと淡々と演歌の定石を踏まえて変わらない。しかし、継続は力なのか、それが千葉の特色になっていて、おそらくファンは、安心して彼を味わうのだろう。

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再愛

作詞:原文彦
作曲:叶弦大
唄:
山川豊

 テナーサックスにギターがからむ前奏から山川豊お得意のムード派歌謡曲。サビあたり曲がちょっと弾むのが、スパイスになった。それにしてもまっしぐらに一途な男心の詞は原文彦、それが最後の最後に、再会の時は独身で居て欲しいと言う男のエゴに笑った。

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出船桟橋

作詞:仁井谷俊也
作曲:岡千秋
唄:
椎名佐千子

 仁井谷俊也の詞は、一番の歌い出し2行分で重ね言葉の妙を作る。しかし二番と三番にはそれがない。探しあぐねたのか、こだわると内容が限定されることを避けたのか。椎名佐千子の歌は、サビの「行かないで行かないで」を突かず、結果ソフトに止まった。

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紅の傘

作詞:池田充男
作曲:弦哲也
唄:
大月みやこ

 和風なおとなのいい女を、絵に見せる詞は池田充男、委細承知!の曲は弦哲也。しっとり気味の艶歌を、大月みやこが私流だとこうなの...という歌唱で仕立てた。言葉ひとつひとつに思いをこめ、小さな技を連発しているが、歌をこねることと情感とのバランスが微妙だ。

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越後水原

作詞:伊藤薫
作曲:弦哲也
唄:
水森かおり

 珍しく歌が泣いている。ご当地ソングの女王になった各作品では、見せなかった境地。越後水原、瓢湖の風物は織り込むが、伊藤薫の詞が一途な女の失意に踏み込み、水森かおりはそれに刺激されたのだろう、歌い終わりの笑顔とピョンピョンはしばらく封印か。

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