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2016年4月のマンスリーニュース

2017年05月02日更新

数よりは質なんだな、歌い手は...

 いまさらながら、歌い手最大の武器は声そのものと改めて思う。一声でその人と判るのが強み。それに加えて、あらかじめ情感をにじませる声だったら、鬼に金棒、即スターだ。しかし、そんな例はきわめて稀。仕方がないから詞や曲の特異さ、企画性でそれらしい色を作る。節回しで個性を狙う場合もある。クセ者は情感という奴で、こればかりは生まれつきの資質。身につけさせようと手を尽くしても、歌がシナを作るだけに止まってしまう。歌手って難儀な商売なのだ。

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心かさねて

作詞:石原信一
作曲:幸耕平
唄:
市川由紀乃

 「今年こそ、紅白に」という声が、周辺にある。昨年、同じ呼び声の山内惠介と三山ひろしが大願成就していて、紅白に若手起用の気運が生まれた。新旧交代の兆しとも捉えれば、市川に期待の声が上がるのも無理はない。
 彼女をそんな波に乗せたのは、詞の石原信一と曲の幸耕平の連作。今作も二人は、すっかり"その気"で、石原が似合いの女心フレーズを、詞にちりばめる。幸も彼女の温かく優しい声味を生かした。
 歌唱の一途さに、ふくらみが生まれているのは、本人の、風を感じての自信か。

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思い出の川

作詞:石原慎太郎
作曲:五木ひろし
唄:
五木ひろし

 昔、都知事だったころの石原慎太郎氏の要請で、三宅島支援の歌を作ったことがある。「あれ以来の縁で...」と、深夜、五木本人から電話をもらった。自信作が出来た気配が、その声に濃かった。
 石原氏の詞、五木本人の曲と歌。失った恋、去った友を軸に、過ぎた青春を思い返す詞に五木はゆったりめ、大きめの曲をつけ、あえてそれをソフトに、抑えめに歌う。「今どこに、今はどこに...」という歌い収めのフレーズに、万感の思いを託すいわば抒情歌。こういう時代になって見失ったものへ、熟年の男の感慨が重なった。

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両家良縁晴々と

作詞:坂口照幸
作曲:水森英夫
唄:
池田輝郎

 嫁ぐ娘は25歳、それを見送るのは、彼女を兄夫婦から引き取って育てた養父。ひとひねりした祝い歌を、坂口照幸の詞がきっちりした筆致、水森英夫がひなびた民謡調の曲に仕立てた。池田輝郎の押しの強い声味にぴったりで、歌い収めの「晴々と」が実にいい。

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秋恋歌

作詞:原文彦
作曲:叶弦大
唄:
香西かおり

 原文彦の5行詞3連が、きちんと女心を書き込んでいる。サビにあたる4行めにそれぞれ工夫があり、一番にまたこおろぎが出て来た。以前、美川憲一の歌で「こおろぎみたいに女が泣いた」と書いた人だ。作曲は叶弦大、香西かおりの歌は「うまいなァ」の一言!

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絆雪

作詞:石原信一
作曲:岡千秋
唄:
岩出和也

 歌い出しの歌詞1行分を高めにスタート、岡千秋が味のある曲にした。もともと派手に決めるタイプではない岩出和也の歌で、ひと勝負したい苦心が見える。穏やかだが地味な岩出の、息づかいと声の湿度がうまく生きた。彼は自分の"色"をつかめたかも知れない。

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女の慕情

作詞:原文彦
作曲:叶弦大
唄:
真木ことみ

 「聴かせ歌」よりは「歌わせ歌」が身上の叶弦大が、いかにもそれらしい曲を書く。このところコンビの多い原文彦が、それに似合いの詞を書いた。独特の声味の真木ことみが、それを大づかみの感情移入で歌う。サビと歌い収めの2カ所の、高音がアクセントだ。

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幸せの場所

作詞:円香乃
作曲:樋口義高
唄:
チャン・ウンスク

 とかく、セクシーさが売りだったチャン・ウンスクの歌が変わった。主人公が個人的な悲嘆を離れ、人生を語る規模と客観性を持ったせい。円香乃の詞、樋口義高の曲が大きめの2ハーフ。チャンがそれを例の声と例の息づかいで辿る。これも一つの冒険だろう。

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女の幸せ

作詞:原譲二
作曲:原譲二
唄:
山口ひろみ

 北島三郎は原譲二の筆名で、きっと歌いながら曲を作るのだろう。そう思えるくらい今作は、詞曲ともに女心演歌の定石どおりで、起承転結、歌好きの期待を裏切ることはない。それを山口ひろみは、デモテープを聞いて覚えるのか。北島節の痕跡がチラリとした。

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空蝉の家

作詞:田久保真見
作曲:堀内孝雄
唄:
堀内孝雄

 心ならずも故郷に、空き家を放置する人は多い。そんな社会現象を素材にした、いわば昭和挽歌。庭先の蝉の抜け殻から、主人公は生家を時の抜け殻と合点する。堀内孝雄の曲と歌もいいが、作詞田久保真見は、認知症を描く傑作『菜の花』に次ぐ社会派ぶりだ。

1604_10.jpg©You, Be Cool !/KING RECORDS

365日の紙飛行機

作詞:秋元康
作曲:角野寿和/青葉紘季
唄:
AKB48

 一人ぼっちで俯き加減の友に「人生は紙飛行機!」と呼びかける。365日、それが希望の推進力だと。AKB48の賑やかなアイドル騒ぎに眼を奪われがちだろうが、彼女らの歌がヒットするには、それなりの理由がある。これは人生の応援歌の秋元康版だろう。

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