トップページ> > 月1マンスリーニュース> 2017年10月のマンスリーニュース

2017年10月のマンスリーニュース

2017年11月20日更新

エドアルドの『竜の海』がいい!

 10月発売分の新作から、編集部が選んだ8曲を聞く。いわば秋冬もの、そのせいか「雪」をからめた歌が目立つ。流行歌と季節感、近ごろは年1作のケースが多いが、狙うのはスタートダッシュか。
 演歌よりは歌謡曲、歌謡曲よりはポップス系...と、歌の流れは緩慢だが確実に変わっていて、作家たちは工夫をこらす。岡千秋が作品の幅、弦哲也が手堅さ、徳久広司が野心をのぞかせ、香西かおりの才気がまぶしい。エドアルドの快唱も「ほほう!」である。

1709_01.jpg

雪の華

作詞:麻こよみ
作曲:徳久広司
唄:
真木ことみ

 けっこう冒険好きの徳久広司が、この作品でまたひとつやってのけた。独特の声の色と味の真木ことみの歌づくりは、これまで作家たちがそれを特色として生かして来た。仕上がりは自然、中性的な匂いになったものだが、徳久は委細かまわず、彼女の歌を「女」に仕立てた。
 麻こよみの詞の3行めで、めいっぱい高音のファルセットを使ったのがミソ。4行めで着地するとその後を、ズンと低音を生かして奥行きを作る。お陰で真木の今作は、音域広めの〝いい歌〟になり、熟女の気配まで漂わせた。

1710_02.jpg

忍び川

作詞:石原信一
作曲:岡千秋
唄:
西方裕之

 演歌のメロディーの起承転結には、一種の定石がある。岡千秋がそれの「起」の部分を、少し強めに出て「承」で一度納め、〽泣かされて 泣かされて...と繰り返す詞(石原信一)の3行めを「転」のサビとして一勝負、おしまいの「結」は、よくある手でくくった。定石を彼なりの訴求力でまとめる工夫だ。
 西方裕之の歌は、歌詞のひと言ずつをていねいに表現しながら、淀みのない情感で全体を歌いつくした。男っぽい芸の強さが芯にあり、息づかいこみの女心の揺れ方が表面に出る。彼なりの成熟だろう。

1710_03.jpg

港わかれ雪

作詞:鈴木紀代
作曲:岡千秋
唄:
花咲ゆき美

 ほほう、これも岡千秋か...と僕はニヤリとする。鈴木紀代の破調の詞2ハーフ分で、花咲ゆき美の力量をアピールして、歌謡曲とポップスの折衷作に聞こえる曲だ。歌い出しを高音で「雪が」を4回も重ねる歌詞をガツンと行く。3行1ブロックで演歌っぽくしたあと、サビはポップス展開、後半でもう一度切迫感の高音と来て、韓国メロディーの匂いもした。

1710_04.jpg

螢火の宿

作詞:鎌田かずみ
作曲:弦哲也
唄:
松原のぶえ

 「ン? 歌は松原のぶえのはずだが...」ともう一度作品リストを見直した。彼女の歌がいつもの粘着力を離れ、すうっと率直なせい。言ってみれば「主観的に歌う」から「客観的に歌う」変化のほどの良さがある。歌詞が7行7行5行の2ハーフ。のぶえをそうさせたのは弦哲也の曲の創意、そのうえ後半には一箇所、ちゃんと演歌の詠嘆も一節加えた。

1710_05.jpg

竜の海

作詞:石原信一
作曲:岡千秋
唄:
エドアルド

 エドアルドの歌世界は、この曲でひとつ決定的になった。5行詞3節の漁師唄。このところ器用にあれこれ詞を書いて来た石原信一に「いい詞だ!」と言ってあげたい。特異なネタで独自性が濃く、岡千秋がバッサリ彼ならではの曲をつけた。エドアルドはそんな作品に恵まれ、海の男のあらくれを、緊迫感と端整さの歌に仕上げ、達成感ありありだ。

1710_06.jpg

あぁ奥入瀬に雪が舞う

作詞:チコ早苗
作曲:村沢良介
唄:
木原たけし

 歌い出しとサビと歌い納めの3個所に高音を使ったW型のメロディーは、ベテラン村沢良介らしい手腕。後半に「サラサラ、ユラユラ」なんてゆすぶりもあり、おしまいには「雪が」を4回も重ねて、ケレン味も十分だ。インパクト強めの曲を、木原たけしが力まずに歌う。いつもの東北訛りが影をひそめて、北国抒情歌の趣を作った。

1710_07.jpg

夜霧の再会橋

作詞:水木かおる
作曲:市川昭介
唄:
大川栄策

 やっぱり市川昭介はいいな...と、逝ってしまった腕利きの仕事を再確認する。詞は水木かおるでこちらも故人だが、2番の「蜜でくるんだ男の嘘」なんてフレーズは、平易だが彼ならでは。1984年の旧作(『わかれ港町』のカップリング)を、大川栄策が掘り起こした気持ちがよく判る。30年も前の作品が「今、おいしい」ことに作品の命を感じる。

1710_08.jpg

標ない道

作詞:香西かおり
作曲:玉置浩二
唄:
香西かおり

 30周年記念の第2作に、香西かおりがまた詞を書いた。作曲は玉置浩二で、歌謡曲的情感をにじませながら、全く違うメロディーを書く。ぜいたくなアレンジは若草恵。香西が今歌いたいタイプの作品の三位一体だ。民謡から演歌に入り、今またもう一つの歌世界を模索する香西の、ただ者ではない意欲を感じる。歌唱はいつもながら、表現細やかだ。

http://to-ryo.com/menu/photo/201206cre_m_s1.gif