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2018年1月のマンスリーニュース

2018年03月26日更新

新春、なかなかの歌揃いです

 新年あけましておめでとう―の気分で、松の内に12曲を聞いた。今こそスケール大きめの歌を!と意気込む五木ひろし、老境枯淡の北島三郎、恩師の節目を寿ぐ川中美幸らに、転機をうかがう藤原浩、市川由紀乃、にっこり愛嬌の石川さゆりと、新年に似合いの歌手たちの気組みと顔つきが見てとれた。
 ベテラン作詞家久仁京介が、恋情ひたひたと男の心意気、慰めムード派と3曲3様で幅広い仕事ぶり、岡千秋はお手のものの人情ソングに、女心もの二つと望郷ソングと4曲も量産、繁盛ぶりご同慶のいたりだ。

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うたかたの女

作詞:たかたかし
作曲:幸耕平
唄:
市川由紀乃

 市川の泣き歌・嘆き節は、一定の評価を得た。大型新人(!)の域も確かに越えた。そうなれば...と、制作陣は次の手を考える。本人もそうかな...と思うか。
 そこで作詞がたかたかし、作曲は幸耕平に代わる。二人とも嘆き歌を書いても、芯に明るさを宿す歌書き。曲調もメジャーになった。生きて行くのは「つらいわね」と呟きながら、男へのいとしさにくさをかきまぜて、酒と涙の女主人公が生まれる。
 市川の歌声の包容力と温かさ、健気さが全面に出た。芸幅を広げる試金石になりそうだ。

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恋歌酒場

作詞:阿久悠
作曲:徳久広司
唄:
五木ひろし

 昨年が没後10年だった阿久悠の未発表作に徳久が曲をつけた。この詩を選んだ時、徳久には曲のイメージが浮かび、それを越えようとしたろうか。
 阿久の原詞は2行2行5行の9行が1コーラス。それを徳久は2行2行3行の7行体裁の曲にしている。サビ2行めの前半を1行めにつなぎ、後半をその次の行の頭におき、最後の原詞2行分を1行にまとめた。
 結果「恋歌よ恋歌よ」が痛切に響き、大詰めがよりドラマチックになる。酒場歌が実は時代の挽歌であることが明白になった。

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幸せ古希祝

作詞:奥田龍司
作曲:原譲二
唄:
北島三郎

 長く連れ添った夫婦が同時に古希を迎えたらしい。そんな祝い歌を傘寿を越えた北島が歌う。「ありがとう」がテーマの男唄。かつての北島節なら勢いのある演歌になったろうが、息づかいやわらかく、声も淡々と、今様の小唄端唄の表現。これも年輪なのだろう。

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夫婦人情

作詞:喜多條忠
作曲:岡千秋
唄:
石川さゆり

 こちらは逆に、歌唱を昔に戻したようで、歌声がやわやわふわふわ、声に笑みを含めた。「あんたとわたしは竹光芝居 切っても切れぬ仲やんか」が喜多條忠の詞のキイワードになる浪花夫婦もの。さゆりが三番の歌唱で決めにかかって感想は"役者やのう"だ。

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雪明かり

作詞:久仁京介
作曲:徳久広司
唄:
藤原浩

 朗々とした美声の持ち主が、このところ詠嘆の語り歌に挑戦している。そんな藤原が進境を示す一曲。息づかいも含めて声に頼らぬ声味が作れて、世話ものの女唄だ。久仁京介の詞が恋情ひたひた、作曲の徳久広司の歌い込ませないやり方も奏功していそう。

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いごっそ魂

作詞:久仁京介
作曲:中村典正
唄:
三山ひろし

 このところ、きっちり男唄で聞かせる三山ひろし。ビタミンボイスが太めになったせいか、中村典正の曲がそうさせるのか。今回は坂本龍馬が主人公。威勢のいい詞は久仁京介のベテランらしい筆致。比較的なだらかな曲を辿って、歌い納めで三山は、歌で見得を切った。

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金沢茶屋街

作詞:麻こよみ
作曲:影山時則
唄:
葵かを里

 葵の歌声は鼻にかかってか細い。歌う口調はたどたどしさを感じさせて、金沢茶屋街の女の姿をはかなげにする妙がある。そこを舞台にした麻こよみの詞も、特有の言葉は友禅流し、格子窓、三昧の音くらいでくどくない。葵はこの曲も踊りながら歌うのだろうか。

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泣き虫

作詞:久仁京介
作曲:花岡優平
唄:
増位山太志郎

 ほう、増位山に花岡優平の曲、矢野立美のアレンジか!と、組み合わせに注目。歌手の領域を広げるのか、曲、編曲の二人がムード歌謡に手を染めるのか。結果は増位山専門のムード歌謡ぶりが変わらず、異種交配ほどの驚きはなかった。これも歌手の個性と言うべきか。

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女のなみだ

作詞:かず翼
作曲:岡千秋
唄:
角川博

 角川の女唄には定評がある。歌唱に独自の女口調が作れて、本人も応分の自負を持っていそう。そんな板につき方が随所に出ていて、かず翼の詞、岡千秋の曲もいかにもいかにも。アクセントは女声コーラスの溜息ふう。歌なかでも一カ所それを重ねて、奥行きを作った。

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舞鶴おんな雨

作詞:麻こよみ
作曲:岡千秋
唄:
椎名佐千子

 昔ふうに言えば「連絡船もの」の曲とテンポ。菅原都々子を思い出すタイプの作品だ。それらしい揺れ方と語り口で、椎名は歌い出しの歌詞2行分をこなした。序破急のメロディーのメリハリでは、高音で弾ける部分に欲が残る。語る方が得手の歌手なのかな。

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望郷貝がら節

作詞:仁井谷俊也
作曲:岡千秋
唄:
岡ゆう子

 都会の海で溺れかけている女の望郷歌。亡くなった仁井谷俊也の遺作詞は貝がら節の「カワイヤノ、カワイヤノ」を、そんな女への親心として捉えたのか。使われる民謡はその部分だけに止まる。岡の乾いた歌声が生活感にじませて、かえって切迫感を強めている。

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深川浪花物語

作詞:もず唱平
作曲:聖川湧
唄:
川中美幸

 落ち込む浪花生まれの娘を、励ます東京男の深川人情編。各コーラス4行で状況を語り、続く2行が男心セリフになる。3節を三幕ものの芝居みたいな味で、川中が演じた。もず唱平の作詞50周年記念作品。大阪在住のまま東京望見の仕事をする年月の感慨も感じた。

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