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2018年10月のマンスリーニュース

2018年11月22日更新

大きいことは、いいことだ!

 「どうです、最近の歌は?」と人に聞かれれば、その都度「痩せて来てるな」と答えた。カラオケ族狙いのチマチマした演歌が多い。手売りが主の歌手たちの活路など、理由はあれこれあろうが。
 それが決して悪いとは言わない。求める人がいればそれに応じるのもビジネスだろう。だが一方では、冒険作をじっくり聞きたい。スケール大きめのいい歌が聞きたい欲が残る。今回は坂本冬美の『熊野路へ』永井裕子の『ねんごろ酒』が出て来て、胸がス~ッとした。

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長崎しぐれ

作詞:かず翼
作曲:徳久広司
唄:
島津悦子

 歌謡界に「都はるみの不在」がずいぶん長い。ふっつりと姿を消して、その後どうしているのだろう。三たび歌い始めることはもう、ないのだろうか?
 そんな思いが、歌書きたちの胸によどむのは判る。それなら彼女が残した世界を、オマージュして...という歌づくりも判る気がする。徳久広司が書いた今作がそれに当たっていそうで『大阪しぐれ』をもう一度...の気配が濃い。「あなた私で いいのでしょうか」を各コーラスのまん中に、かず翼の詞は実質4行詞ですっきりしてなかなか。島津悦子の歌もそれ"らしく"柔らかで優しい。

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望郷ひとり旅

作詞:麻こよみ
作曲:宮下健治
唄:
木原たけし

 東京発・全国狙いで、メディアを賑わすタイプばかりが歌手ではない。地方に根をおろして東京を望見、独自の活動をする"地方区歌手"も存在感がある―と常々そう思っていて、浜松の佐伯一郎をはじめ、親交のある歌手が各地に居る。面識はないが木原たけしも、そんな歌手の一人と思っている。
 歌声の響きや語尾に顔を出す東北訛りが、いかにも岩手在住の味だ。麻こよみの詞、宮下健治の曲が、ひなびた伝統的路線で、それを生かす。故郷をしのぶ苦渋の歌なのに、妙にのびのびと明るめで、地に足つけていて頼もしい。

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ふるさと太鼓

作詞:下地亜記子
作曲:原譲二
唄:
北島三郎

 歌手北島三郎も、原譲二を名乗る作曲家としての彼も、どうしてもこういう作品を歌い残したいのだろう。「日本列島四季折々に 愛と笑顔の花よ咲け」とばかりに、大衆を鼓舞する男唄。詞が下地亜記子の遺作なのもそれなりの意義を持っていただろう。82歳になったはずで、歌声は枯れているが、歌う背筋は伸びて、今年何と、4枚めのシングルにした。

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熊野路へ

作詞:吉幾三
作曲:吉幾三
唄:
坂本冬美

 坂本冬美が故郷和歌山をテーマに、4曲を集めた作品のひとつ。吉幾三の詞、曲との顔合わせだ。テレビ番組企画で生まれたというのが『熊野路へ』で、古道を歩く女のひとり旅、別れた人への回想も行き止まる。若草恵の編曲が彼らしくドラマチックで厚めなのを背景に、冬美は小さめに歌い出し、やがてスケール大きめに収める。年輪を感じる一作だ。

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ねんごろ酒

作詞:荒木とよひさ
作曲:浜圭介
唄:
永井裕子

 詞が荒木とよひさ、曲が浜圭介だもの、タイトルから連想する類形タイプの歌ではない。詞が荒木らしく長めの8行、曲がいかにも浜らしく、粘着力と起伏に富む。それを永井裕子が、怖めず臆せず歌い切った2ハーフ。「ばか野郎が」を連発しながら、漁師町で生きる女の気風のよさを表現した。似合いの大作ふうで、裕子の力量が再確認されよう。

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こころの灯り

作詞:石原信一
作曲:岡千秋
唄:
北野まち子

 「今では遠い人」の面影を、「こころの道しるべ」にして生きる女唄。石原信一のそれなりの詞を、岡千秋がいかにもいかにも...の曲にした。幸せ薄い女を、泣くでもなく嘆くでもなく、北野まち子が妙にせいせいした味で歌っている。キャリアは長い人だが、歌声も節回しも、汚れず崩れずにこの人なりの世界。お人柄なのかも知れない。

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