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2018年12月のマンスリーニュース

2019年01月29日更新

新年を挑戦の転機に

 「俺は今、こういうメロディーが書きたい」「私が書きたい詞はこういうものだ」――作家たちの意気込みが"こだわり"に聴こえる何曲かが揃った。歌い手の個性を生かし、あるいは進化を期待する思いが、その芯にあるだろう。
 新しい年を迎え、間もなく新しい年号に変わる。それを転機と捉え、歌社会の人々が創意工夫を凝らして挑戦するなら、頼もしい限りだ。はやり歌の拡散小形化や低迷を嘆くことなど、すっぱりと捨ててしまおう!

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漁火街道

作詞:麻こよみ
作曲:岡千秋
唄:
椎名佐千子

 ジャジャジャジャ~ン...と伊戸のりお編曲の前奏が始まる。「おっ、大きく構えたな!」と、聴く側のこちらは身がまえる。
 作曲の岡千秋はこのところ「王道もの」を書くことに熱心な様子。今作も麻こよみの5行詞を、起承転結も彼流に、差す手引く手たっぷりめで「これでどうだ!」の気合いが入っている。絶唱型のメロディーだ。
 ヤマ場はサビの「ねえ ねえ あなた 今頃どこにいる...」の高音部。椎名佐千子の歌はここでめいっぱいになる。長く歌い込めば、彼女の代表作の一つになるだろう。

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乱れ月

作詞:田久保真見
作曲:岡千秋
唄:
角川博

 「しゅら しゅしゅしゅ...」はどうやら、女がほどいた帯の音。それがまだ続いて、歌詞では「修羅 朱朱朱」と漢字表現だ。耳で聴くだけでは、そうとは判らないだろうに、作詞の田久保真見はこだわる。女の性は「修羅」そのもの、事実、三番でドキッとさせる。
 これも作曲は岡千秋。女唄では定評のある角川博を知り尽くしていて、その"極み"を狙った気配がある。この人も最近、妙に強気だ。
 角川は委細承知の歌唱、息づかいも巧み、歌の語尾に思いを託して、年期の芸を聴かせている。

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初恋の詩集♡

作詞:志賀大介
作曲:伊藤雪彦
唄:
三代沙也可

 作曲家伊藤雪彦もこだわる。弟子の三代沙也可の作品は一手引き受け、他人に渡したことがない。それが湘南を舞台の連作に一段落、今作に転じた。昔なら舟木一夫に似合うだろう青春叙情歌。三代の歌も初々しい。
 詞は志賀大介の遺作。三番に「夢よりも嘆きの歌ばかり」の一行がある。生前に彼は、自分の仕事にそんな苦渋を抱えていたのか?

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散らず花

作詞:坂口照幸
作曲:四方章人
唄:
西方裕之

 作詞は名文句捜し、それを歌い出しに書ければ勝負が決まる。坂口照幸のこだわりは「やさしい男に女は惚れて、そのくせ訳あるひとに泣く」を一番の歌い出しに据えた。四方章人の曲のその部分を、西方裕之の歌は客観的に語り、サビの「いいのいいのよ」以降を主観的な嘆き歌とした。歌唱の微妙なサジ加減の妙を聴き取れば、楽しみが増す。

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一番星

作詞:水木れいじ
作曲:水森英夫
唄:
天童よしみ

 チャカポコ賑やかな伊戸のりおのアレンジが、快適なテンポで進む人生の応援歌天童版。メロディーを軸に、しっかり声を張るタイプの曲をよく書く水森英夫が、こちらもそれが得意の天童に、この手のものを提供したのが面白い。
 世に出るのが新年の初頭に似合いそうで、天童も気分よさそうに歌って、ちゃんと彼女の歌にする。なかなかである。

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望郷山河

作詞:喜多條忠
作曲:中村典正
唄:
三山ひろし

 喜多條忠の詞は故郷の山河に「俺も男だ 負けないぜ」と、主人公の心意気が勇ましい。それを中村典正の曲はあえて〝望郷〟に軸足を置いた穏やかさ。三山ひろしの歌唱ものびのびのどかに聴こえる仕立て方だ。
 弟子であり娘婿でもある三山に賭ける中村の思いが、透けて見える。中、低音の響きを中心に、三山の〝男らしさ〟を前面に出す演出だろう。

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愛は一期一会

作詞:たきのえいじ
作曲:弦哲也
唄:
北原ミレイ

 たきのえいじの詞は、彼流の〝愛の讃歌〟で、最愛の人を得れば、生きて行ける未来を「一秒先」までと真摯さを訴える。
 その序章4行分を、おおらかに語らせるのが弦哲也の曲。一転する次の4行で、女主人公の思いに切迫感を加えた。ポップス系のメロディーは弦の幅の広さを示し、大ステージで双手を広げて歌うミレイが、目に見えるようだ。

マンスリーコースの皆さんに
 一つの歌が生まれる陰には、かかわった人たちの"一生懸命"が必ずある。僕は1曲ずつにそれを捜し、応援の弁を書いて来た。これが僕の批評の骨子で、アラ捜しはしない。マンスリーニュースを担当したのは平成13年11月号からと言うから、丸17年間毎月。僕は沢山勉強をさせて貰い、多くの知己を得た。平成とともにこの号が最終版である。よいお年を!よい歌を!を、ごあいさつとしたい。(小西)

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