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2018年6月のマンスリーニュース

2018年07月23日更新

みんなが昭和歌謡を再現する

 ベテラン2人が自作自演をしている。北島三郎が『男松』森進一が『北港』。
 たくましい松に例えて、男の根性を歌う北島は詞も本人。80歳を過ぎ身辺の多難さを考え合わせて聞いても、歌声に老いは隠せない。森も詞曲で『港町ブルース』の昔を追う気配。やむを得まいが、やはり声の艶は往年と違う。
 北島の船村徹、森の猪俣公章と、ともに師匠はすでにない。そんな境遇で、昭和のあのころを再現する2人。歌づくりの胸中に去来した感慨は、どんなものなのだろう?

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火の河

作詞:池田充男
作曲:岡千秋
唄:
真木ことみ

 池田充男にしては珍しく、前半破調の詞に岡千秋が寄り添う曲をつけた。歌い出しの歌詞1行から、ゆったりと長めで、歌い手は情感の維持を強いられる。話し言葉の2行分で昂ぶった思いを、歌い収め2行分は演歌調で決める寸法。ここで歌い手はお得意の歌唱に戻れて気分は解放された。
 前作で真木ことみは、ファルセットも使って女唄に転進した。その名惜りは歌唱のあちこちに残り、息づかいや歌う語尾のやわらかさに生きる。特異な声味を持つ人が、一曲ずつ孵化していくようだ。

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儚な宿

作詞:朝比奈京仔
作曲:木村竜蔵
唄:
鳥羽一郎

 朝比奈京仔という作詞者を、寡聞にして知らないが、なかなかの書き手。4行詞の湯の宿女心哀歌を、きっちりと仕立てている。短い詞だから、重ね言葉や行間の含蓄に頼ることになるが、2番の艶っぽさ、3番の歌い収めあたりで力量を示す。
 作曲した木村竜蔵は鳥羽一郎の息子。あのダンディー、イケメンが古風なくらいのこんな艶歌を書くことにも驚く。蔦将包のアレンジ、鳥羽の歌唱もすっかり〝その気〟で、この作品は明らかに、星野哲郎、船村徹コンビの世界を追っていて、愉快だ。

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男松

作詞:原譲二
作曲:原譲二
唄:
北島三郎

 原譲二が奮闘している。詞では身上の根性ものに知恵をしぼり、曲では起承転結、これでどうだ!の力の入れ方。いかにも北島三郎らしい世界が出来ている。80歳を過ぎてもう2年、ほどほどの境地に収まってもよさそうなのに、なお自分を奮い立たせ、全盛期の歌世界を構築しようとする情熱に感じ入る。もはやこれは執念だろうか?

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江差恋しぐれ

作詞:万城たかし
作曲:宮下健治
唄:
水城なつみ

 キングレコードの歌謡選手権は、この社独自のカラオケ大会。そこの常連として何年も、勝ち抜いて来た人と聞く。きっと真面目にコツコツと、1曲ずつ取り組み、クリアして彼女なりの魅力を作って来たのだろう。そういう作品との向き合い方が、この歌にも表れている。芯が明るめな声で、本人も歌唱も、気持ちが上を向いて一生懸命だ。

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北港

作詞:荒木とよひさ
作曲:弦哲也
唄:
森進一

 とうにベテランの域に達しているから、自作自演だが特段の気負いはない。こういう曲をあのころは、こういうふうに歌っていた...とでもいいたげに、歌を楽しんでいるようだ。そう書くと「とんでもない、いつも通りに目いっぱいだよ」と本人は反論しそうだが、昭和歌謡は歌づくりの懸命さを裡に秘めて、こういう楽しさが確かにあったな。

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鈴鹿峠

作詞:久仁京介
作曲:四方章人
唄:
成世昌平

 成世昌平の歌の"決めどころ"は、民謡調の高音のびのび感。それを承知で四方章人が、歌い出しから高音を使い、サビと歌い収めでまた高音の、W型の曲を書いた。詞は久仁京介の峠の別れ歌。「胸はなみだで濡れそぼつ」女心ものだから、成世は得意の高音もやわらかめな息使い。やわやわとした情趣のむずかしい曲で、カラオケ上級者向けか?

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じょっぱり よされ

作詞:内藤綾子
作曲:西つよし
唄:
長山洋子

 津軽三味線を立ち弾きで、派手めに歌う長山洋子の姿が、目に見えるようだ。1コーラス9行の詞(内藤綾子)を4つのブロックに分け、訴求力を絶やさぬ工夫の曲(西つよし)が、長山の〝芸〟を生かす。よく聞くと男に添えなきゃ「死んでやる」とか「生きている意味がない」などと、恋を譲らぬ女心の表現がかなり強め。長山の歌の気合いも強めだ。

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いちから二人

作詞:荒木とよひさ
作曲:弦哲也
唄:
神野美伽

 BSテレビ各局は、昭和歌謡ばやりで、年配の歌好きが喜んでいる。そんな流れがあるなら、本気で今、昭和歌謡を作ろうかと、荒木とよひさと弦哲也が踏ん張った。2人とも昭和歌謡で育ち、仕事をして来たから確かにお手のもの。神野美伽の歌もその辺を委細承知の乗りで、こちらも「たっぷり!たっぷり!」と、掛け声をかけたい気分だ。

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