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二代目たちも踏ん張っている!

2015年4月26日更新


殻を打ち破れ160回


 たまたまだが、同じミニアルバムを二人から貰った。

 「聞いてみてよ」

 テレ加減の微笑で手渡したのは、シンガーソングライターの有近真澄。似たような文面の手紙つきで、送り届けて来たのは作詞家の真名杏樹だ。二人とも年下の友人で、つき合いは親密でかなり長い。アルバムに収められた5曲のうち、最初の曲が二人の合作。真名が詞を書き、有近が曲をつけて、歌っていた。

 タイトルは『あなたを知らないほうがよかった』とある。恋人を知る前の歌の女主人公は、

 ♪焦げつく グライダーにように飛んでた 真珠の粒を孕んで夜が また来る...

 という境遇の中に居た。それが今は、

 ♪だけど知りたい 教えて欲しい わたしの光を わたしの影を...

 ♪何もないなら 無いと知りたい 光も影も 最低も最高も...

 という心境を抱えている。どうやら彼女は、革命の歌よりも自分を惑わせ、狂わせる恋を体験したらしいのだ。

 有近がそれを、少しバタ臭い口調で我がことのように歌う。リズムはビギン、はじめは軽めの感情移入だが、メロディーの昂まり方で哀調のファルセットになり、幕切れで感極まる。おとなの恋唄、漂う色濃い孤独感――。

 「ふむ」

 僕は友人二人の顔を思い浮かべながら、もう一度聴き直す。そういう歌なのだ。聴き直せば、最初とは少し違う感触が、こちらに深まる。歌って奴はそういうふうに、肌になじんでくるタイプがあったんだよな...と、感想が少しずれる。はやり歌評判屋の僕は、長いこと演歌・歌謡曲を中心に歌を聴いて来た。覚えやすく歌いやすい作品から、そんな枠組みをぶち壊す野心作まで。新聞記者くずれだから、後者に期待、新鮮さを求めた。しかし、真名・有近コンビのこの歌は、それも超えた。何だか、短めのエッセーに出会った気分だ。

 アルバムに収められた曲は、ほかに『Screamin' Peanut Vender』『真夏のゾンビ』『宝石を見詰める女』『La Vita』で、そのうち3曲を有近が作詞もしている。アルバムタイトルは『エロヒム/NIGHT SAFARI』イラスト田村登留、デザイン秋田和徳のジャケットは、こじゃれたサファリ風景に月が出ている。

 作品にはシャンソンの匂いがあった。

 ≪そう言えば...≫

 と思い出すのだが、有近はずいぶん前に女性歌手とデュエットで、石井好子のコンサートに出たのを観たことがある。彼は流行のJポップとは違う立ち位置で、彼自身の音楽を追っていたことになるのか?

 そろそろ種明かしをしよう。有近真澄は作詞家・星野哲郎の長男で、真名杏樹は作曲家・船村徹の長女。昭和・平成を代表する大物作家コンビの二代目たちが、独特の美意識と感性で、こんな歌づくりをしているのだ。いつだったか、有近のライブを見た美空ひばりの息子・加藤和也・有香夫妻が「凄くいい!」と共感していたのも思い出した。


                                 

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