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新年、天童人情の酒に酔う

2018年3月10日更新


殻を打ち破れ194回

 「賀正 祈 歌謡発展 身体健全」

 と大書してある。何と、朱筆で達筆である日付はもちろん平成30年元旦。歌社会に長く身を置く僕あての、シャレの年賀状などと早合点しないで頂きたい。送り主が何と「天童大黒天、観月山妙法寺第十八世」の矢吹海慶日貞師なのだ。それに添えられたのが山形の銘酒・出羽桜の「枯山水」で「特別純米・十年熟成」の限定品、製造年月まで179月と明記されている。

 正月、葉山の自宅へ押しかけて来た友人たちに振舞ったら、

 「これはヤバイ。うま過ぎてどんどん行っちまう。銘酒中の銘酒だ」

 「すっきりしていて、飲んだあとにコクがある。やがて80才になる人生で、こんな凄いのは初めて出会った...」

 と、異口同音になった。僕はと言えば、「そうだろ、そうだろ」とはや陶然、ほとんど酔生夢死状態――。

 それにしてもどういう関係で?と、連中が訝しがるから、僕は謎解きをする。

 山形県天童市で晩秋に開かれる佐藤千夜子杯歌謡祭というのがあって、毎年僕はそれに通っている。予選通過100名ほどの歌を聞き、決選の10名から優勝と各賞を決めるカラオケ大会。そのイベントの実行委員長が矢吹師で、ボランティアの熟女たちを指揮、手づくりの歌謡祭を年々大きく育てている。「酒と女は2ゴウまで」などとうそぶきながら、よく飲みよく歌う粋人で、舌がんのリハビリをカラオケでやる歌好き。高僧で市の実力者でもあるから、表彰式には市長も駆けつける。

 冠になっている佐藤千夜子は天童出身で、日本のレコード歌手第一号。『波浮の渚』や『東京行進曲』『紅屋の娘』などのヒット曲を持つ。昭和のはじめごろの業績だが、それを顕彰し、全国の歌好きを糾合、天童の町おこしにもつなげる。昨年は17回めだったが、僕は審査委員長としてそのうち13回も通っている。審査するのは他に元テイチクの千賀泰洋、元ビクターの朝倉隆、元日本テレビのプロデューサーで山形出身の木村尚武、NAK本部の櫛田紘一...と、みんな友人。

 天童は歌どころである。予選にはご当地ノド自慢がぞろぞろ。朝から夕方まで会場舞鶴荘のホールを満員にする観客は、弁当をつかいながら聞き飽きる気配もない。天童は米どころであり、酒どころでもある。天童通いで大好きになったのは、米は「つや姫」おかずは「芋煮」つけものは「青菜漬け」で、これが僕の天童ベスト3。酒は矢吹師が集めてくる名酒・珍酒のうち、やっぱり出羽桜の「枯山水」「雪漫々」...。現地集合がイベント前夜の夕で、宴会のあとなじみのスナックで、また飲みかつ歌う。ゲスト歌手も例外ではなく、昨年は仲町浩二、奥山えいじ、内田あかり、一昨年は北原ミレイらがタダで歌った。

 天童は人情どころでもある。イベントの裏側ではリーダー福田信子の叱咜激励で熟女スタッフが右往左往するさまが、ほほえましくも家庭的。ずっと審査員控え室当番の片桐喜代、吾妻キヨ子の"両きよ"女史など、僕らとまるで親戚づきあい。昼のごちそうに、おやつも土地のものを「さぁ食べて!」「お茶をもう一杯...」。

 旅には「人に会い」「人情、風物に触れる」楽しみがある。僕の天童詣ではいつのころからか、矢吹和尚をはじめ信子リーダーたちとの歓談が主になっている。本末転倒ではあろうが...。


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