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『銀座のトンビ』を沢竜二で やるぞ!ワッショイ!

2018年12月22日更新


殻を打ち破れ203

 大衆演劇の大物・沢竜二と売れっ子編曲家の伊戸のりおが、文京区関口台のキングスタジオで待っていた。徳間ジャパンの梶田ディレクターと僕が合流する。104日夕、それぞれ旧知の仲だから「やあ、やあ」「どうも、どうも」になる。実はこれが一つの企画の顔合わせと細部の打ち合わせ、キイ合わせにアレンジの相談などを一ぺんにやる乱暴な会合。バタバタっと小1時間で万事OKになる。よォしっ!俺たちのお祭りなのだ、ワッショイ!

 『銀座のトンビ』という"いい歌"がある。ちあき哲也の詞で、杉本眞人が作曲、すぎもとまさとが歌って、一部に根強いファンを持つ。

 「あれをレコーディングしたいんだ。俺が歌うとやたらにウケる。みんなが、あんたの歌だって言うのよ。何とかならないかねぇ」

 沢から深夜の電話がある。この人は何かしら思いつくと即電話...のタイプで、大てい酔っており、年のせいか相当にせっかち。僕は東京で仕事仲間に会い、お定まりの酒になるから、湘南葉山に帰宅するのはほとんど深夜。午前さまがベテラン役者からの留守電を聞いて、折り返しのやりとりは翌日の午後になる。

 ≪『銀座のトンビ』なあ。なるほど彼には似合いかも知れない。さて、作業としてはどこから手をつけるか...≫

 そんな僕の思案は、ほろ酔いのベッドの中だ。

 ♪あと何年 俺は生き残れる あと何年 女にチヤホヤしてもらえる...

 夜の銀座をピーヒョロ飛び回る年老いたプレイボーイが、そんなことを言い出す歌だ。あと何年、俺は飲んだくれる、女房に大目に見てもらえる。友だちの多くは勝手に逝きやがったが、俺は俺のやり方でお祭りをやってやる。暴れる欲望のまま、ハッピーにド派手に、ワッショイ!

 すぎもとまさとのやんちゃなキャラと声味にぴったりはまる歌だ。いいコンビだったちあき哲也ならではの詞で、二人とも団塊の世代。人生どうにかここまで漕ぎつけて...の実感が歌い込まれるから、同世代の男たちがやたらに共鳴する。それぞれが最後のお祭りをやる気になる。ほろ苦く"来し方"を振り返り、傷つけちまった誰彼を思えば、少しもの悲しくもなりながら、ワッショイ!

 スタジオのキイ合わせで沢竜二が歌った。なるほど、いいね、いいね...の味がある。役者だから、歌も演じることになるのだろうが、歌声の芯に本音がのぞく。杉本やちあきよりも一回りは年上だが、しっかり共感の手触りがある。役者だから心身も感性もそのくらい若いのか、それもあろうが、作品自体が世代を越えて、最終コーナーに入った男たちの胸を打つのさ!

 「そういう訳だからさ、あんたの歌のポップス乗りよりは、歌謡曲寄りになるかも知れんけど...」

 と杉本に電話を入れる。

 「そうか、ありがたいことだねえ。あんたに任せるよ、うまくやって」

 相手の返答もお楽しみの口ぶりだった。

 「じゃあさ、こんな感じでエレキギターをメインに...」

 伊戸が、音楽的見地をひとくさり。そう、そう...と、ディレクターもはなから悪ノリ気味。そんな打ち合わせに沢が持ち込んだのが大きなポスターで、彼が主宰する恒例の「全国座長大会」用。今年は1212日、浅草公会堂だが、その隅に僕の写真も入っている。大衆演劇の名だたる座長たちに混じって、はばかりながら僕も長いことレギュラーだ。

 「そこで歌うよ、ウケるぞ、また...」

 「CDも間に合わせて、派手に即売だ!」

 あっと言う間にその発売時期まで決めちまった。沢も僕も80代、彼の方が一つ上だが「うまく行く時ゃこんなもんか!」と目顔でニンマリして、ワッショイ!だ。


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