2011年1月のマンスリーニュース

2011年2月28日更新


新年、それなりに粒揃いが集まった

 新しい年の第1弾だから、みんな力が入っている。制作者、作詞作曲家、歌手...と、それを取り巻く人々の気合いが感じられる。だから「ほほう!」と好感を持つ作品が目立った。転機を感じさせる歌手、地力をはっきりさせる歌手、ベテランの力を示す歌手...と、色あいさまざまなところが楽しい。
 しかし、小粒ではある。演歌・歌謡曲の行く道は狭く、それをくぐり抜けようとするのだから、やむを得まい。みんなでコツコツ当てて、ジャンルの底あげをすることが、肝要な時期が続くことになる。

港のほたる草

港のほたる草

作詞:たかたかし
作曲:弦 哲也
唄:井上由美子

 定番の連絡船ものを切々と歌う。女性演歌歌手なら必ず、越えなければならないハードルだろう。井上本人もその辺の意味や意義は承知のはず。そのせいか作品への取り組み方が一途になった。
 歌詞の単語の一つずつ、頭にアクセントをおいて、それが彼女流のていねいさ。だから歌詞がはっきり伝わり、若さも生まれた。情感を揺らすのは語尾の歌い伸ばし。各コーラスの最後に、おあつらえ向きの言葉が来た。
 タイトルと同じその部分に、たかたかしの詞、弦哲也の曲の、工夫を感じた。

男ごころ

男ごころ

作詞:仁井谷俊也
作曲:山崎剛昭
唄:鏡 五郎

 この人流の〝しあわせ演歌〟である。甘え上手ないい女に、惚れた女はおまえだけ...と、仁井谷俊也の詞は、まるで手放し。
 だとすると、そんな男をどう演じるかで、歌の主人公のタイプが決まる。歌手の個性、語り口、力量が聞かせどころになる。鏡はところどころに巻き舌を使って、彼なりのキャラクターづくりをしてみせた。やくざというほどの凄みは出さずに、板前くらいに聞こえるあたり、山崎剛昭の曲も加勢している。
 南郷達也の編曲、弦の爪弾きが歌声に寄り添って、相手役の女みたいなのが面白い。

冬の日本海

冬の日本海

作詞:悠木圭子
作曲:鈴木淳
唄:田川寿美

 鈴木淳の歌謡曲が、田川にはやはり似合うのか。歌手歴20年の要所のヒットは、このコンビに悠木圭子の詞で決まっている。今回は歌詞4行めのヤマ場にポップス系のメロディーまではさまった。そんな展開の曲を、太めの声で語って、田川はおとなの歌にした。

男の人生

男の人生

作詞:いではく
作曲:原 譲二
唄:北島三郎

 ♪振り向けば五十年、男の人生さ...の、1番の歌い納め、最後の「さ」を歌い切って決めずに、吐息まじりに歌い棄てた。結果、熟年男の喜怒哀楽、来し方への思いがないまざってにじむ。北島の歌手生活50年の、感慨の吐露、いではくの詞がなかなか...である。

霧笛橋

霧笛橋

作詞:喜多條忠
作曲:水森英夫
唄:伍代夏子

 ♪たとえ世間に土下座をしても...には、少々驚いた
男についていく女心の表明だが、作詞・喜多條忠も思い切ったものだ。前田俊明編曲の間奏にあおられながら、伍代は耐える女の風情をしっかり表現した水森英夫の曲が珍しく、語り歌に仕立てたのもいい。

あの娘と野菊と渡し舟

あの娘と野菊と渡し舟

作詞:水木れいじ
作曲:水森英夫
唄:氷川きよし

 タイトルと同じフレーズが、各コーラスの最後にあって、それがそのままこの歌のキイワード。氷川のほのぼの〝初恋編〟をキャラにも重ねて、作詞・水木れいじのお手柄だろう。水森英夫の曲は往年の三橋美智也調。氷川の歌をのびのびとさせるのはお手のものか。

大阪ふたり雨

大阪ふたり雨

作詞:喜多條忠
作曲:弦 哲也
唄:都はるみ

 ♪あなたとふたり、おまえとふたり...という歌詞が各節にあって、デュエットにも向きそう。若い二人のラブソング、とりたてて何の仕掛けもない歌が、尋常ではなく聞こえるのは、都の技と独特の唱法のせい。気分浮き浮き、はるみラプソディー、粋な平成小唄だ。

男のなみだ雨

男のなみだ雨

作詞:仁井谷俊也
作曲:宮下健二
唄:北山たけし

 中低音がよく響いて、男っぽい。高音部には艶があり声味が濃いめになる。心ならずも捨てて来た女をしのぶ男唄。艶歌の定番の一曲だが、北山にはまって、これがこの人の本線か...と合点する。若さと覇気が売りもののこれまでよりは、ずっといい。

旅路の果て

旅路の果て

作詞:三浦康照
作曲:小野 彩
唄:冠 二郎

 歌詞の2行ずつ2ブロック、中低音のメロディーが続く。冠の歌唱は抑えて我慢して、思いのたけを押し殺す。それが一気に解放され、冠らしくなるのは高音のサビ1行分だけ。作曲の小野彩は藤あや子の筆名だが、この人の美学、とてもストイックである。

夢酒場

夢酒場

作詞:美貴裕子
作曲:徳久広治
唄:岡ゆう子

 前奏や間奏に、シャララランとかテンツクテンツクなどの、おはやし風コーラスが入る
それを背に、岡の歌は明るめにはずんで、これは酒場小唄の平成版。岡の声味がうまく生きているし、軽い歌だからこそ、彼女の歌の年季のほどが前面に出た。

玄海 恋太鼓

玄海 恋太鼓

作詞:喜多條忠
作曲:岡千秋
唄:永井裕子

 太めの声のパワーと味が、一気呵成の歌にした。いわば〝娘無法松〟の気っぷのよさに、
哀愁もひとさじ。
この種の作品は、この人の地力をはっきりさせる。デビュー以来10年余、作曲を一手引き受けだった四方章人から岡千秋への、バトンタッチが生きたか。

未練のなみだ

未練のなみだ

作詞:池田充男
作曲:徳久広司
唄:服部浩子

 本格派狙いのワルツを、池田充男・徳久広司コンビが書いた。服部は好機到来とばかり、正面から切り込んで来る唱法をとる。息づかいも聞こえる歌い出しから、中盤をじっくり構えて、語尾の歌い伸ばしに情感をこめた。作品に背を押されての進境だろうか。

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