2016年12月のマンスリーニュース

2017年1月23日更新


俊ちゃん、元気で戻って来いよ!

 アレンジャーの前田俊明が、少し長めの休暇中である。その分だけひところ、演歌歌謡界は編曲者おさえに追われた。売れっ子の穴は、それくらい大きかったと言うことか。その留守中にもちゃんと、前田の編曲作は出て来て、今月でいえば『男道』『秋燕』『船折瀬戸』などがそれ。仕事に根を詰めたのも手伝ったのか、思いもかけぬ病を得て、今はリハビリ中である。僕らの仲町会のメンバーで、みんなが心配したが、もう全快も間近とか。好漢の一日も早い復帰を持っている。

津軽の春

津軽の春

作詞:里村龍一
作曲:水森英夫
唄:瀬口侑希
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 相当に驚く。あの瀬口侑希が大変身、何と民謡調歌手になった。企画する方も歌う方も、それなりの覚悟があってのことだろう。一度この道へ入ったら、そうたやすくは元には戻れまい。
前奏の津軽三味線に励まされるように、瀬口の歌はこぶしコロコロ、それらしい発声と節回しが、なかなか堂に入っている。作曲した水森英夫のレッスンの成果か。この種の作品は張り歌になるものだが、そこをソフトに温かく仕上げて、彼女の持ち味も生きた。こうなればきっと、化粧も衣装も変えるのだろうな。

津軽のブルース

津軽のブルース

作詞:志賀大介
作曲:新倉武
唄:山本謙司
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 こちらも津軽もの。民謡調ならお手のものの山本が、案に相違の歌謡曲、それもブルースと来た。もっとも、瀬口の大変身とは違い、こちらは趣向を変えての企画。あれもこれもOK...の幅を聞かせる一作だ。
 志賀大介の詞からして、訛っている。「こごさ流れて」だの「春は花っこ」だの。そうしなくてもいいくらい、山本の言葉も歌唱も訛っている。ものがブルースになっても、津軽民謡で一家を成す彼の、持ち味ばかりは変わらないし、変える気もない。歌手にはそれぞれ・歌の在所・があるものだ。

男道

男道

作詞:浅沼肇
作曲:山田倫久
唄:福田こうへい
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 「度胸千両」や「命坂」「男一生」...と、一番の歌詞だけでもこんな言葉が続く男唄。昔なら村田英雄にドンピシャリの詞と曲を、福田がのうのう、スタスタと歌う。余分な感情移入がないのは、この人が声と節で聞かせる歌手のせいだ。「あ行」の発声にハレがあって、上手なガイドボーカルみたい。カラオケ族にはいいお手本になるだろう。

秋燕(あきつばめ)

秋燕(あきつばめ)

作詞:麻こよみ
作曲:岡千秋
唄:青木美保
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 こちらは声をしならせて、ことば一つ一つに情感をこめる。このやり方が青木の"歌の在所"なのだろう。麻こよみは「秋燕」という言葉を見つけて、タイトルから目立ちやすく決めた。曲の岡千秋の曲は6行詞のまん中「もう旅立ちですか...」の「...」の部分で、音と声を止めて、一瞬の"間"を作る。それをどう生かすかが肝要になりそう。

豆桜

豆桜

作詞:喜多條忠
作曲:岡千秋
唄:城之内早苗
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 「豆桜」のタイトルを見て「ン?」になる。明るめにおどけた歌なのか、どうなのか? 作詞喜多條忠の、客の気の引き方だろう。歌を聞けば、女心の可憐さの意とすぐに判る。可憐ねぇ...と、僕はニヤニヤする。あの城之内に用意したネタがこれ。彼女の年に似ぬ幼なげな歌唱を狙み合わせてのことだろうが、それが城之内の持ち味なのだ。

船折瀬戸

船折瀬戸

作詞:岸かいせい
作曲:水森英夫
唄:水田竜子
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 一瞬、歌ってるのは誰?と思う人がいるかも知れない。水田竜子も民謡調になっているのだ。改造者は作曲の水森英夫。歌をのびのび生き生きさせるには、これが一番...と思ってのことか。そんな曲を貰って、水田はそれらしさを身につけた。声の張り方、はずみ方、節のころがし方、伸ばし方...。もともと器用な人だったしと合点がいく。

雪月夜

雪月夜

作詞:竜はじめ
作曲:花笠薫
唄:千葉一夫
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 やはり「柳は緑花は紅」と言うように、ごく自然がいいのか。長いこと聞いて来た千葉一夫の世界はあわてず騒がず、穏やかでマイペース。地味だが長生きの一例だろう。その歌にひと色、激した気配を作ったのが、作曲の花笠薫。5行詞のまん中の一行を、思いがけないせり上がり方でサビを作り、歌い納めを高音でもう一つ、アクセントにした。

夜明けのチャチャチャ

夜明けのチャチャチャ

作詞:下地亜記子
作曲:樋口義高
唄:真木柚布子
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 チャチャチャ...とは懐かしいリズム、おはやしの女声コーラス。そんな気分のよさを伴奏に任せて、真木柚布子の歌は前半、ゆったりめに女心を訴える。それが後半「いやよ、いやよ、いやよ...」とたたみ込む変化を見せるのだが、ここのノリで"歌の口調"まで変わるのが、この人の味の作り方。やっぱり役者だなぁと僕はまた確認した。

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