2017年7月のマンスリーニュース

2017年8月25日更新


弦ちゃん・徳さんに期待する

 弦哲也が日本作曲家協会の会長、徳久広司が理事長になった。この「マンスリー・ニュース」でもおなじみのヒットメーカー二人。歌づくりが超多忙に重ねる重職だから、さぞ大変なことと察するが、彼らなりの運営をするだろう。岡千秋、杉本眞人をはじめお仲間も、全面協力の態勢なのが頼もしい。叶弦大前会長とは年齢的にそう開きはないから、世代交代とまでは言えまいが、歌社会での生まれや育ちには大分差異がある。現場感覚が生きる明朗闊達な協会を期待したい。

宗谷海峡

宗谷海峡

作詞:仁井谷俊也
作曲:徳久広司
唄:野中彩央里
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 女の悲恋ソングを身を揉むように、全身全霊かたむけて歌いたい。演歌歌いなら大ていは、そんな夢をかかえていよう。それにふさわしい大作が欲しい。そんな作品にめぐり合って、代表作に育てたい―。
 どうやら野中彩央里は、そんなチャンスを得たようだ。日本最北端の稚内あたり、仁井谷俊也が書いた主人公の恋も行き止まり。凍える胸で見つめるのはサハリン...。8行詞2ハーフ、徳久広司の曲は、泣け!とばかりに高音部が切迫する。野中の歌は〝なりきり型〟の悲痛さで、ここを先途...の昂り方だ。

江差だより

江差だより

作詞:もず唱平
作曲:四方章人
唄:成世昌平
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 江差追分を聴きながら、女が手紙を書いている。そんな歌い出しの歌詞2行分で、内容は添えぬ男への未練...と連想する。ところがそこから先でもず唱平の詞はひとひねり。娘は母親を置いてはいけないと、「困っている」のだ。
 どうやら母子世帯。幼いころの主人公を連れて、母は辿りついた北国で苦労した。歌詞の二番は、涙ながらの母ものになる。
 周囲は旅立てとせかすが、主人公は「悩んだまま」で歌が終わる。「花街の母」平成版ふうに、もずらしい人情話。曲は四方章人。成世昌平の歌も温かい。

男の夢

男の夢

作詞:大屋詩起
作曲:原譲二
唄:北島三郎
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 勝っているのは愛馬キタサンブラックだけではない。そうでも言いたげに北島三郎は、自作自唱の演歌を続々発表する。今回はタイトルで一目瞭然、お得意の生きざまソングだ。夢を追いかけ、夢を掴んで、夢を担いで、と、各コーラスで念を押すのは、先が見えない今の世を生きるせい。年なりに枯れた節と声が、男の「述懐」に聞こえる妙がある。

縁結び祝い唄

縁結び祝い唄

作詞:さとうしろう
作曲:増田空人
唄:細川たかし
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 今も昔も、娘を嫁に出す父母の心情は変わらぬものか。歌謡界に時おり出てくる祝い唄は、もはや定番。それを細川たかしがご時勢ふうに声を抑え、節を控えて、珍しく語り歌仕立てにした。身上の高音、声を彼らしく張るのは、歌詞のまん中3行目の頭の一カ所だけ。美声を誇示できるのは、張り歌ばかりではないのだなと納得した。

男の駅

男の駅

作詞:たきのえいじ
作曲:船村徹
唄:走裕介
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 歌い出しの歌詞1行分だけで、船村メロディーだとすぐに判る。2行めへのつなぎ方も、彼ならではの味だ。そんな作風が、3番に顕著な男の生きざまソング(詞はたきのえいじ)を、しみじみとした抒情歌にした。この春に亡くなった大物作曲家の遺作を歌うのは、内弟子の走裕介。薫陶よろしきを得た青年の、師と向き合う気概が聞こえる。

別れ上手

別れ上手

作詞:鈴木紀代
作曲:浜圭介
唄:長山洋子
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 おや、あの浜圭介がねぇ...と、軽快なムード派ソングに、ニヤリとした。長山洋子のデビュー35周年記念曲だが、だからといって肩ひじ張った曲にしなかったのが愉快だ。
 「イヤね」とか「ダメね」とかで始まるサビ2行分(詞は鈴木紀代)のメロディーがオイシイ。長山の歌声に、浜夫人の奥村チヨの顔が思い浮かんだ。

千鳥の舞

千鳥の舞

作詞:仁井谷俊也
作曲:山崎剛昭
唄:鏡五郎
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 古風な表現の女の情歌で、詞は仁井谷俊也、曲は山崎剛昭。生身の女の嘆き歌ではなく、一さし舞って舞台にのせる物語ソング仕立てだ。和楽器を使った南郷達也の編曲も、委細承知の趣き。もともと芝居っけたっぷりの鏡五郎も、息まじりの低音の歌い出しから〝その気〟十分のこなし方。新舞踊がお好きな熟女たちが喜びそうだ。

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