2015年は早くも2つの劇場公演からお誘いがあった。その1は劇団若獅子プロデュース公演「歌麿~夢まぼろし」(笠原章・作、演出、主演)で2月5日から8日まで4日間6公演、場所は中目黒キンケロ・シアター。お話は寛政5年の江戸。吉原の遊女・多賀袖の背に刺青を彫るシーンから始まって、喜多川歌麿、彫り師唐草の権次らが登場、僕は版元の蔦屋重三郎役。人気浮世絵師歌麿の浮沈に、謎の絵師東洲斎写楽がからんで、ストーリーは予想外の展開を示す。若獅子は新国劇の世界を継承する劇団、笠原章座長とは川中美幸公演などでご一緒、その縁で声をかけてもらった。新年は山ほどあるセリフと格闘、祝い酒に酔うゆとりなどなかった一。
その2は4月、名取裕子主演の「居酒屋お夏」(岡本さとる原作、脚本、演出)で9日から19日まで11日間15公演、場所は三越劇場。時代は文政、目黒不動
近くの居酒屋が舞台で、日陰ぐらしの人々のたまり場。女将の名取裕子は気っ風のよさと毒舌が売り物だが、どうもいわく剣呑な、もう一つの顔を持っている気配。それが或る夜、付近で夜鷹が一人殺されたことから、ドラマが一気に激化する。共演は目黒祐樹、河原崎國太郎、青空球児らに関西大衆演劇界の津川竜。僕は居酒屋の客で妻に先立たれ、生きる望みをなくした男・六兵衛。もっとくわしくお夏の世界を知りたかったら、岡本さとるの同名の小説が幻冬社から出ているから、事前に読んで"通"になる手もある。
名取さんは平成19年5月、大阪松竹座の「妻への詫び状・作詞家星野哲郎物語」でご一緒。舞台の仕事これが2作目だった老トルとして、お世話になり、ご迷惑をおかけした。その後シアター1010の「耳かきお蝶」では、彼女の膝まくらにうっとり・・・の光栄にも浴している。
安藤一人、田井宏明、門戸竜二、綿引大介らは、何度も川中美幸公演ほかでご一緒したいわばお仲間。終演後の一献!がふえるかも知れない。