2012年3月その他1

2012年4月30日更新


情け川

情け川

作詞:石本美由起
作曲:弦哲也
唄:中村美律子

 さすがに老練...と改めて感じ入る。石本美由起の遺作だが、あまたある〝幸せ演歌〟の歌詞の、これぞお手本!の筆致。「春は桜、秋は紅葉」を決め言葉に、それを写す川、そこを舟で行く二人、イメージくっきりときれいなものだ。
 奇をてらわない。新機軸も狙わない。さりげなく、はやり歌のいつもの世界を、描き切ろうとする。そのうえで目立つのは細心の言葉選び、ゆるみたるみのない均質のスリーコーラス。垣間見えるのは厳しい推敲の跡だ。だから、弦哲也の曲も中村の歌も、暖かく情の濃いものになった。