小西良太郎のカラオケ談義

2015年12月29日更新


横井弘は歌社会の文学者だった!

殻を打ち破れ167回  三橋美智也の『哀愁列車』が大ヒットしたのは昭和31年。歌い出しから三橋の高音が♪惚れて...と突出して、同じフレーズを3回繰り返す。悲痛で甘美な魅力がズン!と、胸に沁みたものだ。  この歌に背を押されるように、その年の8月、僕は上野を目指す常磐線に乗った。茨城の水・・・

「地方区の巨匠」佐伯一郎を激励する。

殻を打ち破れ166回  佐伯一郎のコンサートを見に行ったのは、8月16日、浅草公会堂。「見に行った」と言えば聞こえがいいが「飲みに行った」が実情で、楽屋を訪ねると茶碗酒が出るのがいつものこと。それが今年はステージを見ずじまいで、そのまま打ち上げの席へ直行した。午後1時の開演。佐伯の弟子た・・・

浜博也『越佐海峡』を注意深く聴く。

殻を打ち破れ165回  浜博也の新曲『越佐海峡』を聴く。喜多條忠の詞、伊藤雪彦の曲で編曲は前田俊明。越後の山を振り返り、佐渡の島影を見る船上の女主人公は、傷心の一人旅だ。伊藤の曲は気分のいいテンポと起伏で哀愁をひと刷毛、カラオケ・ファン狙いと読める作品で、格段の新しさや型破りの野心の気配・・・

比叡山延暦寺で出口美保を聴いた

殻を打ち破れ164回  話し方に「訥弁の能弁」というのがある。トツトツとした口調に微妙な間(ま)があり、ちょっと見には話し下手に聞こえる。これが曲者で、独特のペースで聞く人を次第に引きつけていく。耳を澄ませば、意味あい深いフレーズが多く、内容は含畜に富んでいて、時に上滑りなおしゃべり、能・・・

鏡五郎、渾身の『花火師かたぎ』

殻を打ち破れ163回  いい意味の緊張感がみなぎっていた。舞台中央で歌う鏡五郎の眼は、ひたと会場の宙空を見据えている。  ♪ドカーンと弾けた 夜空を見上げ 為になったら うれしいね...  前奏から勇壮な花火の音が続いて、新曲『花火師かたぎ』の歌い出し。鏡の歌声は覇気に満ちてい・・・

高林こうこの詞、福浦光洋の歌がいいぞ!

殻を打ち破れ162回  福浦光洋という人のミニ・アルバム『途中下車』を聴く。銀座にシャンソン・バー「ボンボン」を開く人で、シャンソン、カンツォーネ歴は30年。店ではそんな外国曲の詞を、津軽弁で歌って人気があるとか。  5曲全部を書いている高林こうこの、詞がいい。表題曲『途中下車・・・

絶賛!田久保真見、出色の『菜の花』

殻を打ち破れ161回  「ずっと大人になれなかった僕」と、「そっと子供に戻ってゆくあなた」が、寄り添って一面の菜の花を見つめている。二人はどうやら母親と息子で、彼が親孝行を気取った「最後のドライブ」の一コマだ。  その前置きに、母は息子を忘れ、自分をも忘れているとある。花の名前だけは覚え・・・

二代目たちも踏ん張っている!

殻を打ち破れ160回  たまたまだが、同じミニアルバムを二人から貰った。  「聞いてみてよ」  テレ加減の微笑で手渡したのは、シンガーソングライターの有近真澄。似たような文面の手紙つきで、送り届けて来たのは作詞家の真名杏樹だ。二人とも年下の友人で、つき合いは親密でかなり長い。アルバムに収・・・

日高正人の「下手ウマ」を褒める!

殻を打ち破れ159回  「別に声がいい訳でも、節回しが上手い訳でもない。イケメンっぽかったのは昔々の話で、もう70才に手が届くはず。そろそろ退き際を考えろと言ってるのに、まだ歌うと言い募る。おつき合い頂く皆さんも、こうなるとくされ縁のはずで...」  無名の大歌手・日高正人のショーなどで・・・

紅い餅・本間由里・石狩挽歌

殻を打ち破れ158回  大晦日、ドカドカとやって来た客が、ドカドカと帰る。葉山の海の夕陽に乾杯!の趣向が「ゆく年くる年」の途中まで続いたのだから、みな相当に酔っていた。静かになったから、餅を少し焼く。大きめの蒲鉾みたいな奴を薄く切って、面倒だからチンする。なぜか紅色の餅がぷくんとふくれて・・・