新歩道橋

2021年9月12日更新


新歩道橋1110回

 日本の四季を代表するような映像が次々と展開する。舞台いぱいのスケールと鮮やかな色彩に圧倒されそうだ。五重の塔に紅葉、桜吹雪もあったか? 一望の草原、密集するひまわりの花、雄大に波打つ海、満ちてゆく月の変化…。その光景の中に、男と女の影が白く浮き出て、すぐに溶けて散る。どうやら切ない恋の・・・

新歩道橋1109回

 遠くから突然、坂本九の歌声が流れて来た。つけっぱなしのテレビが映していたのは東京オリンピックの閉会式。歌声はその会場からで、「ン?」あれは「上を向いて歩こう」か? 「見上げてごらん夜の星を」か? 確認しようと、あわててボリュームを上げたが、テレビの画面はもう次の光景に移っていた―。 日・・・

新歩道橋1108回

 みなとみらい線・日本大通り駅から徒歩8分、神奈川県民ホールへ、熟年男女が行進した。7月19日月曜日の午後1時、相変わらずの暑さだが、人々の歩みは物見遊山ふうにゆっくりめで、軽い。行く先は福田こうへいコンサート。去年7月にやるはずだったものの振替公演。道々交わされる会話はコロナ禍の不満や・・・

新歩道橋1107回

 東北の〝職業歌手〟奥山えいじの新曲「うまい酒」が妙にしみじみしている。槙桜子の詞、伊藤雪彦の曲で、一番がちょいと一息の〝ひとり酒〟二番が友だちとの〝つるみ酒〟三番が夫婦の〝ふたり酒〟という歌詞。庶民の暮らしの中の、安らぎの場面を並べ、人生良いことばかりではないが、うつむかず明るめに暮ら・・・

新歩道橋1106回

 「夜霧のブルース」と「別れのブルース」が、好きな古い歌の双璧である。それがここ数年は「別れのブルース」に、愛着が傾いている。 〽窓をあければ港が見える、メリケン波止場の灯が見える… と、藤浦洸の詞が淡々と風景をスケッチ、 〽むせぶ心よ、はかない恋よ、踊るブルースの切なさよ… と結ぶ。2・・・

新歩道橋1105回

  旅の終わりはいつだってひとりに戻る。ふと思い返すのは訪ね歩いた先々の風物、触れ合った人々の営みや人情…。ずんと胸に来る孤独の中で、男は歌を書くのだろう―、と、まあ、そんな雰囲気を作って、弦哲也は「北の旅人」から歌い始めた。6月11日午後、東京・王子の北とぴあ・つつじホール。「音楽生活・・・

新歩道橋1104回

 《おや、ずいぶん変わったな。うん、いい笑顔だ。いいことがあったみたいな気配まである…》 CDのジャケット写真というものは、歌い手の訴え方があらわで面白い。自分が作りあげた世界に鷹揚におさまるベテランから、精いっぱい存在をアピールする若手まで、人により作品によって実にさまざま。女性歌手の・・・

新歩道橋1103回

「無名」というタイトルの歌詞は、ずいぶん前から僕の引き出しに入っていた。田久保真見が書いた5行詞で、持って来たのは歌手の日高正人。 「うん、お前さんにゃ似合いだな。いつ世に出すか、楽しみにしてるよ」 と、彼を励ました記憶がある。もう喜寿になるが、若いころたった一人で武道館をいっぱいにして・・・

新歩道橋1102回

「こちらはもう、しょうけつを極めておりますわ、はははは…」 電話でいきなり、作詞家のもず唱平がむずかしい熟語を使う。長いつきあいで、そういう癖のある相手と判っているが、さて「しょうけつ」ねえ。大阪のコロナ禍激化を指して「悪いものがはびこる」の意だろうが、文字が思い浮かばない。突然出て来た・・・

新歩道橋1101回

 頼まれて単行本の帯を書いた。推薦コピーである。 「タフな行動力に感動! 山陰を離れず音楽を糧に、辿った数奇な半生に脱帽。小説にしても面白すぎる!」 いささか長く歯切れが悪いが、何案か渡したものを本人がつなぎ合わせて、こうしたいと言うからOKした。石田光輝著「あの頃のままに~遠回りしたエ・・・