新歩道橋

2018年1月20日更新


新歩道橋1005回

 「心の中に底なし沼があって、書いても書いても、飢えています」  年賀状の中の、ドキッとするフレーズである。  「う~ん」  としばし、虚を衝かれた気分になる。そこまであからさまに胸中を言い切るか!  毎年、年賀状を山ほど貰う。ほとんどが歌社会の方々からだが、申し訳ないことに貰いっぱなし・・・

新歩道橋1004回

 昔の話だが、瀬川瑛子が「命くれない」でブレークし、賞を総なめにした彼女が言ったものだ。  「賞なんて、芸能人バレーボール大会で貰ったことしかないし、コメントを...と言われても、どう言っていいのか...」  涙ぐむ彼女を見守りながら、僕は大笑いした。そこまでが長い道のりだったし、困惑し・・・

新歩道橋1003回

 《そうなんだ、彼女の場合は、歌手が芝居をやるんじゃなくて、役者が歌を歌っているということなんだ》  真木柚布子の演歌ミュージカル・一人芝居「知覧のホタル」を観て、改めてそう合点した。11月21日、渋谷の伝承ホールでの体験だが、何だかまだ生々しくその感触が残っている。  「知覧」と言えば・・・

新歩道橋1002回

 「森進一の『さらば友よ』よかったぞ。あの調子なら、まだまだあるな...」  と言ったら、元ビクターの制作部長で、森の歌づくりに携わった朝倉隆が、  「そうですか、聞きたかったな」  と、嬉しそうな顔になった。11月18日の深夜、場所は山形県天童のスナック。元テイチクの千賀泰洋、元日本テ・・・

新歩道橋1001回

 流行歌はやっぱり、フルコーラス歌うべきだし、聞くものだと常々思っている。それがいつのころからか、2コーラスが当たり前になった。テレビ・サイズに慣れたせいだろうが、これでは楽曲は未完のまま。それに疑問も持たずにプロ歌手が大てい2コーラスで、カラオケ族だけが聞くに耐えない蛮声でフルコーラス・・・

新歩道橋1000回

 「次回は1000回ですから...」  編集部の寺澤有加里クンからの電話、心なしか声に笑いの気配がある。オメデトウの気分か。  《そうだよな、えらいことになったもんだ...》  と、当方はつい感慨深くなりかかるが、待て! 待て! と、自分を抑える。実りの秋だからあちこちに、イベントが山盛・・・

新歩道橋999回

 時間ぎりぎりに飛び込んだ新宿文化センター大ホール、客席の1階20列に手前から作曲家岡千秋、作詞家石原信一、編曲家前田俊明が並んでいた。10月23日、未明に大きな台風が関東を駆け抜け、まだ天候が怪しげな夜で、神野美伽のコンサート2017がその催し。  「おっ〝竜の海〟の3人が揃っているな・・・

新歩道橋998回

 読経の途中で僧侶が椅子から立ち上がった。  「喝!」  と、びっくりするくらいの大音声。どうやら臨済宗の引導らしく、だとすればここで、友人の俗名赤間剛勝は、戒名の「金剛院響天勝楽居士」に替わったのか。10月17日午前、大田区東海の臨海斎場で営まれた葬儀告別式のこと。お経は「ナムカラカン・・・

新歩道橋997回

 10月3日火曜日夜、川中美幸はNHKテレビの「歌コン」で「おんなの一生~汗の花」を歌った。1日に母親久子さんが亡くなって、わずか2日後の生放送である。  《つらい選曲だな。彼女、大丈夫か!?》  テレビを見ていて僕は、川中の心中をおもんばかった。作品が作品で、歌の主人公は久子さんそのも・・・

新歩道橋996回

 数え切れないくらい沢山おじぎをした。9月25日夜、帝国ホテルで開かれた日本作曲家協会の創立60周年記念パーティー。どっちを向いても知り合いの顔ばかりで「ごぶさたしておりまして...」から「おっ、元気?」まで、あいさつもいろんなタイプになる。こういうのも久しぶりで、近ごろは浦島太郎みたい・・・