新歩道橋

2016年8月7日更新


新歩道橋955回

 美空ひばり家の嫁加藤有香によれば、  「白い猫に出会うと、その日一日、必ずいい事がある」  という。それじゃ僕は文字通り〝日々是好日〟だ。わが家の「パフ」は、化粧用品のそれが名前の由来で、純白の美猫。7月に芝居を2本もやれたのは、そのご利益かも知れぬ。  有香のダンナ、つまりひばりの息・・・

新歩道橋954回

 この年になって、脳ミソの使用法に思い悩むことになろうとは、夢にも思わなかった。芝居のセリフの入れ場所についてだ。東宝現代劇75人の会の「坂のない町~釣船橋スケッチ」(横澤祐一作、丸山博一演出)は、深川江戸資料館小劇場で、5日間7公演を終えた。千秋楽が7月10日で、盛大な打ち上げをやった・・・

新歩道橋953回

 「今回はすまないねえ。辛抱役で苦労をかけます」  作者の横澤祐一からそう言われた。辛抱役? 初耳である。どういう役ですかと聞いたら、説明セリフが多いんでね...が答え。その割に見せ場が少ないと言うことらしい。7月6日昼が初日の東宝現代劇75人の会公演「坂のない町~釣船橋スケッチ」(深川・・・

新歩道橋952回

 芸映の青木伸樹会長が亡くなった。その一報は元RCA―テイチクの佐藤裕一氏からの電話。深夜に留守電で聞いて、ふっと体中の力が抜けた。スポニチの駆け出し記者時代からずっと目をかけて貰った恩人の一人だ。翌日、事務所からの訃報がFAXで届く。6月12日に心不全で亡くなって享年90才とある。何は・・・

新歩道橋951回

 7月下旬、路地裏ナキムシ楽団の公演に参加する。といっても別に、歌を歌ったりする訳ではない。バンドと役者が共演する新機軸パフォーマンスだが、今回は「オンボロ観覧車」が外題だ。この楽団の7回目の公演で、下町の遊園地が舞台。しかも閉園当日という設定で、そこに集まる人々の悲喜劇が展開する。  ・・・

新歩道橋950回

 横須賀線の逗子から池袋まで、僕はしばしばグリーン車に乗る。  「そんな、ぜいたくな!」  と、役者の先輩は口をとがらせるが、決して身のほど知らずの仕儀ではない。車中の1時間ほど、僕はここで資料をあさり、原稿の下書きメモをし、ウォークマンで歌を聞き、パーティーのあいさつがあるときは、気の・・・

新歩道橋949回

 昼過ぎに連日、谷端川南緑道というのを歩いている。地下鉄有楽町線の要町からのんびり10分ほど。川だったところに作った遊歩道だから、適度に曲がりくねっていて、両側の植えこみの緑が目を楽しませる。躑躅が終わって紫陽花がぼちぼち〝わが世の夏〟待ち。うす紅は昼顔、黄色は美女柳の花で、どちらも小さ・・・

新歩道橋948回

 《えらいことになっちまった...》  頭をかく思いで僕は、5月16日、あわただしく東京を右往左往した。午後、日比谷の東宝演劇部の一室で開かれたのは、所属する東宝現代劇75人の会の総会。そこで僕は7月公演「坂のない町・深川釣船橋スケッチ」(横澤祐一作、丸山博一演出)の台本を受け取り、配役・・・

新歩道橋947回

 いきなり劇画家上村一夫の話から始まった。酔えば必ずギターの弾き語りで彼が歌った「港が見える丘」について。ギターの弾き方があやしげだったこと。すきっ歯から息がもれて、歌もすかすかだったこと。歌詞の「あなた」と「わたし」をなぜか必ず「あんた」「あたい」に言い替えたこと。それが昭和の若者の庶・・・

新歩道橋946回

 ふと、胸を衝かれた歌がある。降りしきる蝉しぐれの中で、住む人も居なくなった生家を売りに来た男が主人公。カチャリと鍵をあけた彼の胸に、押し寄せて来るのは懐しさとやるせなさだ。  堀内孝雄の「空蝉の家」だが、彼のじゅんじゅんと語る語り口が、そんな夏のある日の光景を浮かびあがらせる。主人公の・・・