新歩道橋

2011年8月19日更新


新歩道橋782回

「みんな集まります。行きませんか」観劇の呼びかけFAXが入った。つまみ枝豆、渚あき、今井あずさ、谷絵利香なんて名が並んでいる。6月、名古屋御園座の「恋文・星野哲郎物語」を一緒にやった人たちだ。面白いものでけいこから本番まで、長い期間をともに過ごした面々とは、妙な肌合いの親近感が残る。「よ・・・

新歩道橋781回

 「うむ、年に似ぬ声の艶… 」 なんぞと、僕はしたり顔になる。8月3日午後のサウンドシティ、Bスタジオ。歌っているのは船村徹で、美空ひばりの詞に曲をつけた「花ひばり」という作品だ。演奏を指揮するのは、編曲を担当した船村の息子蔦将包、見守るのは、船村夫人の福田佳子さん、娘の渚子さんらに、ひ・・・

新歩道橋780回

 この夏は富士山がよく見える。眼下の葉山の海の対岸、シルエットで浮かぶ富士は濃紺で、それが海と空の青と天然のグラデーションを作る。あしらわれているのは白い雲のかけらが幾つか…。 《この景色を、もう一度見せたかった…》 ふと、石井好子の笑顔を思い出す。僕が葉山へ転居して4年。岬みたいな地区・・・

新歩道橋779回

  「ちょうどいい歌がある。これに合わせて、さあ、歩行訓練!」 介護士が永六輔氏を叱咤激励する。彼はパーキンソン氏病のリハビリ中なのだが、病院に居合わせた人々は、そんな二人から目をそらすそうな。 「きっと、見てはならないものを見た気がしたんでしょうね」 そう話しながら氏は、ヒッヒッヒ…と・・・

新歩道橋778回

 「もしかして、あれはあいつじゃなかったか? 妙に似ていた…」 地下鉄の中でふと思いついた。駅についてその男に電話を入れる。 「お前さん、美空ひばりのブラジル公演で、司会をやったか?」 相手はけげんそうな声で答えた。 「ええ、やりましたよ。でも何でまた、そんな古い話を…」 僕はすぐに、も・・・

新歩道橋777回

 客電が落ちる。音楽がスタートする。これから始まる芝居の、いわば前奏曲。それが軽やかなのは、ドラマの雰囲気を伝えて、決して深刻劇!?が始まる訳ではないと知らせる。音楽が盛り上がるのはクライマックスへの予感、 《あれっ!?》 と気づくのは、最初から客席に手拍子が盛んなこと。まだ緞帳が上がら・・・

新歩道橋776回

 NHKへ呼ばれた。ラジオの「昭和歌謡ショー」の録音。7月放送の4回分(木曜夜9時30分から)をしゃべった。5、6月に放送した5本くらいの続編、テーマは勝手に「船村徹の時代」「吉田正の時代」「星野哲郎の時代」「吉岡治の時代」とした。戦後・都会と地方に分断された青春、復興・都会調歌謡曲の誕・・・

新歩道橋775回

  「なみだ船」「函館の女」「風雪ながれ旅」…と、北島三郎は極め付けの星野哲郎作品を歌った。6月9日、名古屋御園座で上演した「恋文・星野哲郎物語」の千秋楽。大物が日替わりゲストのトリを取ったのだから、主演の辰巳琢郎、かとうかず子をはじめ、スタッフ、キャストのみんながピリピリ、そわそわした・・・

新歩道橋774回

   「会えるか会えぬかは御仏の思し召し次第、会わねばならぬ者同士なら、御仏が会わせて下さる…」 人と人の縁について、大本山南禅寺の住持、渓流禅師のせりふである。演じたのは長門裕之、今年1月、名古屋御園座でやった川中美幸公演「たか女爛漫・井伊直弼を愛した女」の幕切れ。これが長門の最後の舞・・・

新歩道橋773回

 「星野哲郎さんのイメージは、圧倒的に海。だから今回のステージは、海と船を強調した造りにします」 演出する菅原道則がニコニコと話す。名古屋御園座公演「恋文・星野哲郎物語」(6月2日~9日、13公演)について。商業演劇によくある舞台装置のつくり込みは、あえて避ける。背景は巨大な周防大島の海・・・