新歩道橋

2013年5月25日更新


新歩道橋843回

  「近ごろ、こういう場所ばかりで会うな」 「うん、辛いものがある・・・」 そんなやりとりをまたやった。黒のスーツがほとんどの人の輪に、駆け込んだ僕は仕事の合い間の平服なのも切ない。 「皆さんお揃いですから・・・」 と、役者仲間の田井宏明に案内された部屋には、北島三郎、山田太郎、クラウン・・・

新歩道橋842回

  『国敗れて山河あり』 太平洋戦争が終わった昭和20年過ぎ、命からがら外国から日本へ還った人々は、きっとそう思ったろう。ロシアや中国、韓国などからの復員船は、舞鶴ほかの港で、上陸前の船泊まりをする。 (庵点)かすむ故国よ小島の沖じゃ、夢もわびしくよみがえる・・・ 田端義夫の「かえり船」・・・

新歩道橋841回

  いきなり「りんご追分」である。 《やっぱりなァ・・・》 と、僕は妙に納得する気分になる。4月23日の昼夜2回、横浜にぎわい座で開かれた「恋川純弥特別公演」の第3部「舞踏絵巻」でのことだが、大衆演劇おなじみのショー。どこでどんな一座を見ても、大ていひばりソングが出て来る。 そう言えば、・・・

新歩道橋840回

  長良グループの夜桜演歌まつりは、今年14回目を迎えた。4月11日、すみだトリフォニーホール。例によって所属歌手が総出なのへ、JR錦糸町駅から善男善女が三々五々、ひきも切らなかった。 《長良じゅんさんに見せたかったな・・・》 その群れの中を歩きながら僕は少々感傷的な気分になる。都内23・・・

新歩道橋839回

 「いやいや、なかなかに・・・」 「はははは、どうもどうも・・・」 他人が聞いたら何のことか、見当がつきそうもないあいさつを、エイベックス顧問の稲垣博司氏と交わした。4月8日早朝、相模カンツリー?楽部の入り口。もう35回になるという集英社のコンペに参加してのことだが、当の二人だけ判ってい・・・

新歩道橋838回

  「人情の機微を、花鳥風月の抒情に託して・・・」 昔、詩人のどなたかから聞いた歌づくりの要諦の一つである。しかし、今どきの若い人にこの風流が通じるものか・・・と思うが、時に「ふむ!」と合点が行く作品にでっくわすこともある。最近の例でいえば、大石まどかが歌う「春一夜」で、作詞がさいとう大・・・

新歩道橋837回

  浅草公会堂、客席最前列と舞台の間に、少しばかりの空間がある。3月17日夕、佐伯一郎はそこで歌っていた。舞台が背もたれ、左右へもあまり動かない。歌の合間に周辺の客と他愛のないおしゃべり、なんとも横着な仕事ぶりで、歌は「りんご追分」「越後獅子の歌」「みだれ髪」・・・。 蛮声を張り上げて歌・・・

新歩道橋835回

 一途と言うか、ここを先途というか、久々にまっしぐらの歌を聞いた。2月26日夜、九段のホテル・グランドパレスで開かれた「船村徹同門会ディナーショー」でのこと。何しろ師匠の船村が客席中央最前列に陣取っている。主賓の席はステージに背を向けているのだが、弟子の静太郎に言わせれば、 「先生は背中・・・

新歩道橋834回

 カラオケ・スナックに飛び込む。演歌歌手たちの体当たりキャンペーン。勝負曲を歌い、気に入ったらCDを買ってもらう。チリも積もれば山、切ない努力だが、必死で続けていればいつか、幸運の神様が振り向いてくれるかも知れない。そんな一縷の望みを抱いて、ネオン街を歩く歌手たちの数は多い。しかし、そん・・・

新歩道橋833回

  真砂皓太という役者がいる。松平健座長の側近というか腹心というかの信頼を得る。芸歴30年を超えるから、僕より年下だが〝大〟をつけてもいい先輩だ。以前川中美幸公演で一緒になり、親交が続く。今回は名古屋・御園座の楽屋が同室で、初めて武士をやる僕は、大小両刀の差し方をはじめ、様々な指南を受け・・・