新歩道橋

2013年2月18日更新


新歩道橋832回

 8月1日が阿久悠の祥月命日である。今年が7回忌、 《もう、そんなになるのか・・・》 親交があった人で、少しも居なくなった実感がないまま、年寄りじみた溜め息をつく。伊東の小高い丘のてっぺんで、伊豆の海を見下ろす墓を、また訪ねなければ・・・と思う。母親が亡くなった時に彼が建てたのだが、 「・・・

新歩道橋831回

  「我らは死ぬまで、いや死んでも悪あがきをして、この世をよりよく変えていかねばならぬのだ。百年先、二百年先に生きる子供たちのことを考えたことがあるか!」 そんなセリフが昨今の政治状況への批判にも聞える。一、二月、名古屋御園座で上演中の、松平健主演「暴れん坊将軍・初夢江戸の恵方松」の一景・・・

新歩道橋830回

  「二人座長公演」とは思い切った企画である。それも松平健と川中美幸の初顔合わせ。一体どういうことになるのか? 出演者の末席に連なる僕としては、稽古から動悸を抑え切れぬ暮れ正月を過ごした。一月、二月の名古屋・御園座公演。これが結局、芝居もショーも2本立ての、娯楽の極みを体感する日々になっ・・・

新歩道橋829回

  氷川きよしが4人も居た。12月12日夕の東京国際フォーラム。恒例のクリスマス・コンサートでの話だが、ステージ両サイドにクローズアップの映像。これは歌う氷川をフォローするのだからよくあるケースだ。しかし、本人の表情、ことにひたと見据える眼差しまで、生々しく伝わるあたりが、観客にはたまら・・・

新歩道橋828回

  11月、例年の楽しみは、温泉と芋煮とせいさい漬けとつや姫である。山形県天童へ出かけると用意されているご馳走。芋煮は里芋がメインのしょうゆ味のごった煮。せいさい漬けは高菜に似た野菜の漬け物で、太めの茎の歯応えと葉の鮮やかな緑が得も言われぬ。 「せいさいって、どういう字?」 いつもの雑文・・・

新歩道橋827回

   「森光子」が真っ赤な大見出し、それとなかばダブりながら「大往生」の3文字が、黄色で並ぶ。字の縁どりが青なのは、事態を強調したい表れか。写真は代表作「放浪記」のもので、エプロン姿が皿を持ち、陽気に踊っている。森の死を伝えた11月15日のスポーツニッポン新聞の一面。 《大往生なあ…》 ・・・

新歩道橋826回

   彼女は小声で歌う。自然に僕は聞き耳を立てる。 《どういうことなんだ?これは…》 いぶかる気持ちも抱えながら、僕は次第に彼女の世界に引き込まれていく。「人の気も知らないで」「待ちましょう」「恋心」…と3曲ほど聴いて、前のめりになっている自分に気づく。ひとり言みたいな歌、呟きのステージ・・・

新歩道橋825回

   「あなたの艶冶な歌声と日本語の美しい響きが、世界の人々を魅了しました」 と、表彰状の冒頭に書いた。9月24日、東京ドームホテルでやったスポニチ文化芸術大賞の贈賞式で、グランプリの由紀さおりに渡したもの。例のピンク・マルティーニとのコラボアルバム「1969」の成果と、その後のムーブメ・・・

新歩道橋824回

   「どうでした?」 と、石川さゆりが小首をかしげる。 「うん、面白かったし、楽しかったよ。アルバムも含めてな」 と、僕が応じる。 「歌芝居は? 樋口一葉…」 とさゆり。 「どこまで行っても、さゆりが居るよな」 と僕。その瞬間、彼女の表情がふっと動いて、 「そっかあ…」 の声が低めにな・・・

新歩道橋823回

   《ウソだろ!》 と、どうしてもそう思う。モンゴルのホーミーというのを、初めてナマで聞いての第一印象だ。一人の声帯が同時に、二種類の音楽をやるという程度の予備知識で、それと対面した。10月8日夜、両国の江戸東京博物館ホールで開かれた「モンゴル音楽祭2012」でのこと――。 ビィーンと・・・