新歩道橋

2014年5月8日更新


新歩道橋874回

  宅急便でドサッと、妙に重めの荷物が届いた。差し出し人はスポニチ広告部の某部長。 「はて?」 といぶかりながら封を切ったら、これが仲町浩二という歌手のチラシA4サイズ総天然色豪華版が数十枚だから驚いた。 「あれって、あの川渕君でしょ?スポニチの広告に居ながら歌謡界にちょくちょく顔を出し・・・

新歩道橋873回

  窓のない部屋で、2ヵ月間も暮らした。外界から隔離されたそこは、劇場の楽屋で同居人が2人。2月の明治座は友人の真砂皓太と綿引大介、3月の大阪新歌舞伎座は真砂とベテラン俳優の園田裕久だった。朝9時半から夜の8時半まで、毎日11時間余を一緒に生活する。それ相応の広さの畳の部屋、それぞれの化・・・

新歩道橋872回

  「あまなが来るってさ。連休の21日だ!」 「昼の部の芝居を見て、午後は楽屋にいていいかって言ってる。すべてOKだとメールしといたけど...」 大阪・新歌舞伎座の、僕らの楽屋がいろめき立っている。少し残念だが〝おじいちゃん〟と名指しされた僕、〝おとうさん〟は真砂皓太で〝お兄ちゃん〟が綿・・・

新歩道橋871回

 《たびたびの嵐、地震、大水と、この国の民百姓は疲弊しきっております》 《昨年の大雨、浅間山の噴火の始末もいまだしと申すのに!》 時代劇のセリフだが、これを3月11日の午後に聞くと、大津波、原発事故の東北の惨状、遅々として進まぬ復旧、復興などに思いがつながる。あれから3年、この日は全国の・・・

新歩道橋870回

  「望郷新相馬」「お父う」「望郷やま唄」と、花京院しのぶに作った歌は3曲である。シングルが2枚で、残る1曲は「流れて津軽」のリメイク。その3曲がいっぺんに、カラオケ大会に並ぶのだから豪勢だった。十一月十五日、山形・天童温泉の舞鶴荘で開かれた「佐藤千夜子杯歌謡祭2009」でのこと。タイト・・・

新歩道橋869回

  「さぁラスタチだ。行こうか!」 明治座の楽屋23号室を、三人の男が後にする。尾張藩の実弟・徳川通温(みちまさ)に扮する真砂皓太と、大名、武士、捕方など一人何役もこなす綿引大介、それに小石川療養所の医師の新出玄条役の僕。親しく長い友だちつき合いで、楽屋は和気あいあいだが、打ち揃って舞台・・・

新歩道橋868回

  「あらっ?」 楽屋入り口で振り向いた川中美幸は、満面の笑みでスター歌手の顔になっていた。ということは─、 「どうも、どうも...」 と、小腰かがめた僕は、老いた音楽評判屋の顔になっていたろうか? 「統領、今日、あっちの方は?」 居合わせた業界人が、判っているくせに、軽口を叩く。明治座・・・

新歩道橋867回

  この年齢になって、自分自身が四つの人格に分裂するという、初めての体験をした。流行歌評判屋の僕、二月の明治座でやる赤穂藩の幹部大野九郎兵衛と医師の玄条、それに別公演でやるはずだったレコード・プロデューサー役という四人前。一月二十九日午後、田町のアーチストジャパンのけいこ場での話だ。 粛・・・

新歩道橋866回

 「号外! 号外! 号外!」 大声をあげて僕が、舞台上手そでから飛び出していく。集まって来るおじさんやおばさん、青年に娘たち。舞台下手からはもう一人の号外配り・田井克幸が登場、群衆は号外を争って手にし、あれこれ庶民の屈託をぶち上げる。何とも賑やかなシーンだ。 二月の明治座、松平健・川中美・・・

新歩道橋865回

  元禄十四年、西暦に直せば1701年だが、その年の三月二十五日、播州・赤穂城下は行き惑う人々の群れでごった返していた。藩主浅野内匠頭が切腹、家臣は徹底抗戦と謹慎城明け渡しの二論でいきり立つ。お家断絶、戦がはじまる...と、領民は避難民化した─。 その中を劇場花道から、足早やに登場するの・・・