新歩道橋

2013年9月24日更新


新歩道橋854回

 「ちょっと待ってね」 芝居を途中で止めて、演出の横澤祐一が席を立つ。スタスタと役者の輪の中へ入って、 「ここ、こういうふうに行けないもんかね・・・」 と、その中の一人の役をやってみせる。注文というよりは提案。ツツツーと動いて、スッと振り返ってセリフ・・・って調子で、過不足なく自然に、身・・・

新歩道橋853回

  《この時期の花は、何といってもさるすべりだな》 そんなことを考えながら、炎暑の昼を毎日歩いている。地下鉄有楽町線で池袋の隣り、要町駅そばからうねうねと続く谷端川南緑道。もともと川が流れていたところを、遊歩道にしたらしい、都内によくあるタイプだ。その一部の両側に、さるすべりが10本ほど・・・

新歩道橋852回

  北海道・鹿部に居る。この地名、この欄でも20回以上書いているから、ハハン・・・と思い当たる向きもあろう。作詞家星野哲郎が〝海の詩人〟のおさらいで、毎夏21回も通った先、 「先生の故郷、山口の周防大島よりも、ずっと多く来てくれた」 と、町の人々が自慢するところだ。 その「鹿部ぶらり旅」・・・

新歩道橋850回

  机の上に電話帳みたいに分厚い本が一冊ある。「完全版甲子園の詩・敗れざる君たちへ」で幻戯書房から出版された。1979年から2006年までの28年間、スポーツニッポン新聞に毎夏連載した高校球児たちへの詩、363編が収められている。甲子園の15日間、全試合の一投一打を見据えて阿久悠が書いた・・・

新歩道橋849回

  その昔、彼は親しい人々から〝トラちゃん〟と呼ばれていた。 《タイガーズのファンなのかな。関西出身かも知れない》 僕はそんなふうに聞き流していた。昭和40年代の初めごろから、よく彼を見かけたのは、溜池にあった日本クラウンでの話。 7月17日夜、グランドプリンスホテル高輪で開かれた。中村・・・

新歩道橋848回

  スーツ姿の初老の紳士たちが、田端義夫の霊前に花を手向ける。一般ファンの部、粛然とした列が続いて200人ほどか。もちろん熟女たちも加わってはいるが、近ごろよく見かける浮き浮き集団とは、かなり雰囲気が違った。 《昭和が押しかけてきた。田端の歌とこの人たちの青春は、まさに表裏一体なんだ!》・・・

新歩道橋847回

  またしても星野哲郎である。亡くなってもう3年になるのに、全然「居なくならない」人だ。私淑して弟子を自称、やがて本人からそれを許されたせいか、何を読んでも何を聞いても「星野」という名は抜け出して、目に飛び込むし、耳に響く。 「日本という国は戦争に敗れて以来、なぜか古いものをやたらにぶち・・・

新歩道橋846回

  「銭形平次」は野村胡堂作の人気シリーズだが、その少年時代というのは、原作にはない。氷川きよしが2年前に演じた「青春編」、今年6月の「立志編」(ともに明治座)の〝少年平次〟は、脚本堀越真、演出北村文典の創作である。もちろん野村家には話を通してのことだが、この奇策!? の言い出しっぺは、・・・

新歩道橋845回

  「文化庁から正式ブランドとして認可されたんです。これで〝稲取金目鯛〟はキンメの本家本元になります。西の〝関サバ〟東の〝稲取キンメ〟と、吉岡先生が書いてくれた歌の文句がズバリです!」 顔を見るなり満面の笑顔で、そうまくし立てたのは東伊豆町の梅原裕一観光商工課長と岩崎名臣主査。型や味も最・・・

新歩道橋844回

  親友の木村隆から新著が届いた。「演劇人の本音」(早川書房刊)で、24人の演劇人へのインタビュー集だ。小幡欣治、別役実、山田太一らの劇作家から、仲代達矢、大滝秀治、奈良岡朋子、梅野泰靖、南風洋子、樫山文枝、日色ともゑら俳優たちの名がズラリと並ぶ。「演じるとは何か?」「演劇の本質に迫った・・・